「鮭児の時知らずタン」  第64話
 それから少し歩いて、お姉さん達は故郷の近くまで来ました。段々増えてくる鮭たちや段々と強くなってくる汽水域独特のニオイがお姉さんを前に、時知らずタンを重くさせていきました。
「お姉さん、少し休んでいいですか?」
 そう言いながら時知らずタンはへたり込みました。急に時知らずタンが座り込んだので、お姉さんはすこし変だなって思いました。
「…ごめん、つかれた?」
「ううん…。でも…、やっぱり疲れたのかな…」
 お姉さんが隣に座ったから、時知らずタンはお姉さんにもたれ掛かりました。
「少し、汽水に酔ったのかも…。ちょっと休ませて下さい」
 お姉さんはそっと時知らずタンの肩を抱いてあげました。時知らずタンは気づかれないように少しだけ、泣きました。

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