注目集める不動産オークション市場の動向 その3

その1その2 では、不動産オークションのメカニズムを中心に解説してきましたが、今回は不動産インターネットオークションには欠かせない、不動産情報の電子化の視点での最新キーワードを説明します。

情報公開化の流れ

 まず最近の不動産情報の公開化の流れを確認します。近年は、不動産市場と金融市場の融合が進んできており、不動産にもその条項公開性が強く求められてきています。とくに2001年9月にJ−REITが誕生してからは、その目論見書の中で所有ビルの資料や空室率が情報公開されています。今では、4兆円超の不動産情報が公開されている状況です。
 また、国土交通省は、「土地総合情報システム」で取引価格情報を、全国指定流通機構連絡協議会は「REINS Market Information」で不動産成約価格を、それぞれインターネット上で提供しています。

GIS(地理情報システム)化

 GIS(地理情報システム)とは、位置や空間に関する情報をもったデータ(空間データ)を総合的に管理・加工して視覚的に表示でき、高度な分析や迅速な判断を可能にする技術です。国土交通省の国土計画局でも取り組みを行っています。
 GISの強みは、位置だけではなく、時間の変化を追える4次元のデータを入力できることにあります。これによって、たとえば首都圏のマンション需要地が中心部を起点そて「の」の字型で動いていくことなどや、デモグラフィック情報(年齢、学歴、収入など)を重ねることで、消費者の住宅に対するニーズというものを浮かび上がらせ、マーケティングの道具として利用することも可能となってきます。
 また、e−PRAGAでは地図上に、地価公示、路線価、用途地域、J−REITの物件情報を載せています。これによって、たとえばREITの所有する物件の価格やその付近の公示価格・路線価などが一目でわかるようになっています。

不動産情報の電子化

 個別不動産が持つ情報が電子化され、EDI化(商取引に関する情報を標準的な書式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み)が進展しています。経理システムや物件の収支予測システムとリンクされることもあり利用者も増加しています。
 たとえばREIT運営法人の中には、インターネットを介したソフトを利用して、不動産の運用を行っている法人もあります。この場合には物件がどこに点在していても、インターネットに接続した端末さえあれば、どこからでもアクセスが可能で保有不動産全体の管理ができることになります。
 この仕組みにより、とくに、@投資家や関係者への情報開示、AAM、PM等の専門マネージャーの連携による管理体制が簡素化される、ことなどが考えられますが、そのためには業界標準のレポーティング基準やルール化が求められるといえます。

情報の標準化

 米国やヨーロッパでは、それぞれ「OSCRE International」という組織で不動産データの標準フォーマットを作成し、国の枠を超えて不動産情報の共有化を図りつつあります。また、不動産の価値を算出する際のキャッシュフローやDCF法(収益資産の価値を評価する方法の1つ)などの適用で、「ARGUS」と呼ばれるソフトウェアが世界標準的なソフトウェアとして登場してきています。
 この仕組みによって、世界中の不動産が横並びに比較検討することが可能になってきているとも言えると思います。今後、日本においても不動産流通市場の透明性と流動性を高めるためにも、不動産情報の標準化を進める必要があります。

不動産のクリアリングハウス

 地理情報システム(GIS)の分野でクリアリングハウスといえば、さまざまなデータをインターネット上で交換する「場」のことを指します。
 現在、インターネットの普及で多くの情報を容易に手に入れることが可能となりましたが、情報量が莫大になったため、情報を管理しユーザーに提供する場が必要になってきました。そこで、アメリカの連邦地理データ委員会(FGDC)は、空間データに関する検索の場としてクリアリングハウスという技術を開発しました。ユーザーは、キーワード文字列検索のほかに座標、日付、時間などの検索方法で必要なデータを取得することができます。つまり、ユーザーが欲しい地理情報を入力して検索した場合に、複数のデータベースから必要とされる情報を検索して表示する仕組みです。これについても、国土交通省の国土計画局で取り組みが行われています。
 このクリアリングハウスを不動産に応用した場合、地理情報に加えて、そこに存在する不動産の情報が広く収集できることとなり、売主・買主における不動産情報の非対称性(情報が一方に偏在することで市場取引に有利な立場の人と不利な立場の人ができてしまうこと。情報の格差。)が縮減できると考えられます。

PIN(Property Information number)
PIP(Property Information package)

 アメリカでは、車の中古車にVIN(Vehicle Identity Number)という番号があり、過去の修理履歴や事故や盗難歴の情報など性能にかかわる履歴を見ることが可能です。PINはVINの不動産版になります。いわゆる個人情報には当たらない部分での不動産の情報提供を行っていくにあたり、不動産個別に番号を付けていくという試みです。
 PIPは不動産の情報パッケージとして、物件の瑕疵やリスクやキャッシュフローに関する情報をデューデリジェンス(不動産の適正評価手続き)して、不動産鑑定書や建築の設計図面、土壌汚染の調査、などの情報を共有化する試みです。
 PINとPIPの2つの情報の組合わせにより、不動産情報が整理されて簡単に検索することが可能となり、不動産情報も時間を経るにつけ充実していくと考えられます。不動産流通業は、まさに物件に関する情報産業であり、その電子化の流れは今後の日本の不動産流通市場をより活性化していくことでしょう。


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