
ラムサール条約 第10回締約国会議
決議Ⅹ.13「国際的に重要な湿地のリストに掲げられた湿地の状況」
- 日本語訳:
- 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録.
- 条約事務局原文:
-
- ワード:
- PDF:
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原(창원),2008年10月28日−11月4日
決議Ⅹ.13
国際的に重要な湿地のリストに掲げられた湿地の状況
1.「各締約国は、その領域内の適切な湿地を指定するものとし、指定された湿地は、国際的に重要な湿地のリストに掲げられる
」とする条約第2条1項、また、国内的ならびに国際的に首尾一貫した包括的な条約湿地のネットワークを特定することを通じて、「ラムサール条約湿地リストに関するビジョン」が達成されることを締約国が確立した決議Ⅷ.11(2002年)想起し、
2.締約国会議の通常会合で締約国が検討及び勧告できるよう、条約湿地の現状について報告する条約事務局の仕事に関する条約第8条2項と、湿地の保全、管理、賢明な利用に関して、締約国に対して、一般的又は個別の勧告を行う締約国会議の能力に関する条約第6条2項⒟を同じく想起し、
3.第9回締約国会議の報告書(COP9 DOC. 6)以来、2008年11月4日の時点で、計4225万4951ヘクタールの面積に及ぶ 317ヶ所の条約湿地を指定した61の締約国:アルバニア、アルゼンチン、オーストラリア、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ベナン、ボスニア・ヘルツェコビナ、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ共和国、チャド、コロンビア、コモロ、コンゴ、コートジボアール、チェコ共和国、エクアドル、エルサルバドル、エストニア、フィジー、フランス、ガボン、ガンビア、ドイツ、グアテマラ、ギニア、ハンガリー、インド、インドネシア、イラク、イタリア、ジャマイカ、日本、大韓民国、キルギス共和国、リベリア、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、マダガスカル、マレーシア、モーリシャス、メキシコ、ネパール、ナイジェリア、ペルー、ポルトガル、ルーマニア、サントメ・プリンシペ、セルビア、スロバキア共和国、スロベニア、南アフリカ、スペイン、スーダン、トーゴ、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦、ウガンダ、英国、アメリカ合衆国、イエメン、ザンビアを祝福し、また、条約事務局が湿地リストへの追加の最終作業に入っている、116の新たな条約湿地を指定、またはその準備中(於2008年11月4日)の36の締約国:バハマ、バングラデシュ、ベナン、ブラジル、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、中国、コモロ、コンゴ、エルサルバドル、赤道ギニア、フランス、ガボン、ドイツ、ギニアビサウ、イタリア、日本、大韓民国、マラウイ、モーリタニア、メキシコ、モルドバ、モザンビーク、ネパール、ニカラグア、ナイジェリア、ペルー、サントメ・プリンシペ、セイシェル、スリランカ、スーダン、タイ、ウガンダ、英国、ウズベキスタンを同じく祝福し、
4.しかし、これがCOP9以降湿地リストに登録された湿地の数で約25%、総面積で25%以上の増加を表しているにもかかわらず、条約湿地のネットワークを地球規模で見た場合にその包括性も代表性もまだまだ不足していること、また2008年11月4日時点における条約湿地1822ヶ所は、決議Ⅶ.11(1999年)で2005年までに2000ヶ所に、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン(2005年)」で2010年までに2500にと締約国が設定した目標を下回ることに留意し、
5.123ヶ国(本決議の付属書1参照)における1057ヶ所の条約湿地(全条約湿地のうちの58%)においては、ラムサール条約湿地情報票(RIS)、あるいは適切な地図が提供されていない、又は6年以上にわたり最新のRISと地図が条約事務局に提供されていないため、これらの湿地の現状に関する情報が入手できないことを憂慮し、
6.最新のラムサール条約湿地情報票(RIS)で条約事務局に報告されている条約湿地の範囲と面積の変化は、正確な範囲を定めたことよる面積の拡大又は再計算に関するもののみであることに留意し、
7.「各締約国は、その領域内にある条約湿地及びリストに含まれる湿地の生態学的特徴が技術の発達、汚染その他の人為的干渉の結果、既に変化している、変化しつつある又は変化するおそれがある場合には、これらの変化に関する情報をできる限り早期に入手できる措置をとる。これらの変化に関する情報は、遅滞なく条約事務局に通報する
」と規定している条約第3条2項を意識し、
8.多くの締約国が条約第3条2項に従うための仕組みを持ち合わせていないことへの懸念を表明し、また「ラムサール条約湿地リストに含まれる領域内の湿地の生態学的特徴が既に変化している、変化しつつある又は変化するおそれがある場合、国家当局及び先住民を含む地域社会やNGO による報告を含む形で、できる限り早期に情報入手するための仕組みを完備すること、そして条約第3条2項を完全に履行するために、それらの変化を遅滞なくラムサール条約事務局に報告すること
」を締約国に強く要請した決議Ⅷ.8(2002年)を想起し、
9.2008年11月4日の時点で「モントルーレコード」に記載されている56ヶ所の条約湿地のうち、COP9以降にレコードから除外されたのは3ヶ所しかないことに憂慮し、しかし、締約国5ヶ国(アルジェリア、ドイツ、イタリア、モーリタニア、セネガル)によるモントルーレコードからのさらなる6ヶ所の除外の要請を、現在、科学技術検討委員会が検討中であることを意識し、また、科学技術検討委員会が、モントルーレコードからの湿地の除外に関する最近の協議の経験に照らし、レコードの手続きを加速し効率的なものにするため、手続きの見直しと改定の必要性を表明していることを同じく意識し、さらに、締約国からモントルーレコードへの条約湿地の追加記載が、COP9以降さらに2ヶ所(クロエリハクチョウ(Cygnus melanocoryphus)の大量死によるチリのカルロス・アンバンテル・サンクチュアリ(リオ十字湿地)と、計画中の全天候型の道路建設が原因となる潜在的生態学的変化によるニカラグアのバイア・デ・ブルーフィールド湿地帯)あったことに留意し、
10.18の締約国政府から、条約第3条2項に沿った報告書の提出が、以下の22ヶ所の条約湿地についてあったことを認識し、
- アルゼンチンから、条約湿地サンボロンボン湾における魚の乱獲の問題を改善するためにこれまで取ってきた措置、また、オタマンディ自然保護地域の近くの道路建設により起こる可能性のある悪影響のモニタリングに関する報告。
- オーストラリアから、条約湿地クーロン・アレキアンドリア・アルバート湖の現状及びその湿地の深刻な水不足の影響に対応するために実施された措置と調査に関する2008年10月の最新の通知に関する報告。
- チェコ共和国とオーストリアから、チェコの3ヶ所の条約湿地(ロウアー・ディイエ川氾濫原、リトベルスク・ポモラビ、プーデゥリ)と、オーストリアの条約湿地ドナウ−マーチ−ターヤ−オーエンとウンター・ローバウの生態学的特徴を著しく変化させる可能性のある計画中のドナウ−オーデル−エルベ運河建設及び計画中の輸インフラに関する報告。
- ベラルーシから、条約湿地オスベイスキを脅かす生態学的状態の悪化と水位の低下に関する報告。
- 中国から、計画が現在保留になっている、条約湿地ダライ湖の水路を採鉱の目的で変更することによる潜在的脅威に関する報告。
- コロンビアから、条約湿地マグダレナ川河口デルタ系・サンタマルタ大湿地の生態学的状態の問題への対応に関する経過報告。
- デンマーク(グリーンランド)から、グリーンランドにおけるクロガンの換羽の場所として最も重要な地域である、条約湿地ヘーデン(ジェームソン・ランド)に影響を及ぼす可能性のある計画中の滑走路、道路、湾岸建設の予備的情報を含む報告。
- ホンジュラスから、ゴルフリゾート建設により生態学的変化の可能性のあるジャネット・カワス国立公園に関して、条約事務局が「担当政府機関」と解決策を話し合うために赴いた後での報告。
- イラクから、ハーウィツェ湿原が、人為的及び自然の影響により水理学的、生態学的な負荷を受け、切迫した危険な状態にあることに対する懸念についての報告。
- ケニアから、条約湿地ナイバシャ湖に対する脅威、条約湿地バリンボ湖の沈泥、タナデルタの転用、そのデルタで計画中の砂糖プロジェクトに関する報告。
- レバノンから、条約湿地パームアイランド自然保護区で、2006年の戦時中に発電所から流れ出た油の影響を除去し、湿地への生態学的影響のレベルを評価することを目的としたプロジェクトが実施されることに関する報告。
- メキシコから、条約湿地クワトロシエナガス動植物相保護地域に影響を及ぼす可能性のある農業、工業用水の過剰な取水に関する報告。
- ネパールから、激しい洪水と、決壊した人工堤防により川の流れが大きく変化し、条約湿地コシタプの生態学的特徴が損なわれていることに関する報告。
- ペルーから、条約湿地パラカス国立保護地域で実施されている、生態学的変化を防ぐ活動に関する報告。
- スロベニアから、飲料水の新しい供給設備建設による条約湿地シュコツイアン洞窟群の生態学的特徴の変化を防ぐための環境影響評価に関する報告。
- マケドニア旧ユーゴスラビア共和国から、条約湿地プレスパ湖の富栄養化と自然資源の過剰搾取に関する報告。
- アラブ首長国連邦から、運河建設と条約湿地ラスアルホルの劣化地域の大がかりな再生計画に関する報告。
11.これらのラムサール条約湿地の生態学的特徴再生のために取られた措置に留意し、湿地再生の優良事例を認識し広めることで、劣化した湿地の再生を締約国に奨励することにつながる、国際湿地再生賞を設けることを奨励し、
12.また、締約国26ヶ国がさらなる47ヶ所のラムサール条約湿地(本決議付属書2のリストに掲載)における生態学的特徴の変化に関し、ラムサール条約第3条2項に沿ってラムサール条約事務局に遅滞なく報告することをせず、COP10の国別報告書で情報を提供したことに同じく留意し、
13.しかし、概して条約第3条2項に従ってラムサール条約湿地の生態学的特徴の変化又は変化するおそれのある事例を報告している締約国はわずかしかないことを意識し、そして、20ヶ国以上の70ヶ所を超える湿地に関して条約第8条2項⒟に従って本会議に「事務局長報告」で報告されたように、ラムサール条約事務局が生態学的特徴の人為的変化又は変化のおそれのある報告として最初に受けたものはどれも第三者機関からであったことに憂慮し、
14.これらの湿地のいくつかは、国境を越えた湿地と河川水系の一部であり、これらの生態学的特徴の変化は、近隣諸国の領域にある条約湿地を含む湿地に影響しかねないことを留意し、「締約国は、特に二つ以上の締約国の領域に湿地がわたっている場合又は二つ以上の締約国に水系が及んでいる場合には、この条約に基づく義務の履行につき、相互に協議する
」と定める条約第5条を想起し、
15.決議Ⅸ.15において締約国が表明した、ドナウデルタなどに見られる国境をまたぐいくつかの条約湿地の管理においては、生態学的特徴の変化をもたらしている、又はもたらすおそれのある開発に関して、実りある国際協力が達成されていないことへの憂慮を想起し、
16.また、締約国による条約第3条2項の報告が欠如していたため、決議Ⅷ.8の要請に応じて条約の科学技術検討委員会(STRP)がCOP10に向けて条約湿地の生態学的特徴の状態と傾向を報告書の形にまとめることができなかったことに同じく憂慮を表明し、しかし、STRPはCOP10で締約国が問題点を体系的な方法で報告できるように、「湿地の生態学的特徴の変化を検知、報告、対応するプロセスの枠組み:科学技術的手引き」(決議Ⅹ.16)の実施ツールを用意できたことに留意し、
17.条約湿地にもたらされる悪影響は増えるおそれがあり、多くの条約湿地は土地利用や他の影響のせいで、その生態学的特徴が変化を受けたか、受けつつある又はそのような変化を受けるおそれがあることを認識し、
締約国会議は、
18.締約国が決議Ⅷ.8で採択した約束、すなわち条約第3条2項の変化の報告に関する条項を完全に履行すること、また同第3条2項の報告対象となる湿地の問題に実施可能な限り速やかに対処し解決する適切な仕組みの全てを活用して、それらの条約湿地の生態学的特徴を維持または再生すること、そしてそれらの問題が解決された時点でその報告を速やかに提出することは、条約湿地のプラスの影響とその生態学的特徴の変化の両方が、条約湿地のネットワークの現状と傾向を明確にするための締約国会議への報告に十分に反映されることを再確認する。
19.締約国に対して、条約第3条2項に従って条約湿地の生態学的特徴の変化や変化のおそれを報告できるようにするため、条約湿地その他の湿地の管理計画策定の一部として、決議Ⅵ.1(1996年)付属書付属書にまとめられているような適切なモニタリング体制を採用し適用すること、かつそれらのモニタリング体制に条約の「湿地リスク評価の枠組み」(決議Ⅶ.10)を組み込むことを引き続き奨励する。
20.条約第3条2項に完全に準拠し、本決議の上記段落10に記載されているように、人為による生態学的特徴の変化がすでに起きている、起きつつある又は起きるおそれがある22ヵ所の条約湿地を条約事務局に報告した18の締約国に謝意を表する。
21.また、本決議の付属書2に記載されているように、人為による生態学的特徴の変化がすでに起きている、起きつつある又は起きるおそれのある、さらなる41ヶ所の条約湿地に関する情報を国別報告書で本会議に提出した21の締約国に同じく謝意を表する。
22.締約国に対して、条約第3条2項を満たす報告を提出する際はモントルーレコードに記載することが当該湿地に役立つかどうかを検討するように、またそれが適切な場合は記載を申請するように引き続き奨励する。
23.モントルーレコード記載湿地がある締約国に対して、締約国会議の各会議向けの国別報告書で問題点を完全に報告することをはじめ、同レコードに記載されている条約湿地の問題点への対策に関する最新の進捗状況を条約事務局に定期的に提出するよう要請する。
24.条約事務局に対して、モントルーレコードの質問票の形式を変える仕事に携わっているSTRPと連携して、湿地がレコードに記載されることにつながった問題の解決について、締約国による進捗報告が提出される望ましい頻度を考慮し、各COPの前にはレコードが更新されているよう要請する。
25.生態学的特徴の変化あるいは変化のおそれについて条約事務局長に報告を行った条約湿地を持つ締約国に対して、これら生態学的特徴の変化あるいは変化のおそれに対処するためにとった措置について、できる限り早い機会に条約事務局長に通知するよう要請する。
26.個々の湿地の生態学的特徴と境界の問題に関して、報告及び声明を条約事務局又は本会議に提出した締約国を以下の通り祝福する。
a)オーストラリア政府を、環境目標に合致させるため、マレー川に沿った6ヶ所の条約湿地(リバーランド、ニューサウスウェルズ州中央マレー州立森林、バーマー森林、ガンバウワー森林、ハッター・カルキネ湖、クーロン・アレキサンダー・アルバート湖)に、増加した環境のための水流(量)を回復し到達させる措置に関する情報を提供したことに対して。
b)韓国政府を、報告されている渡り性水鳥の個体数の減少を含め、セマングムの大規模な潮間帯の埋め立てによる影響についての情報を提供したことに対して。
c)イタリア政府を、モントルーレコード手順の適用を成功させ、その結果条約湿地モレンタルジュス沼を同レコードから除外でき、条約湿地カリアリ沼もレコードから除外されることを目指す声明と情報を提供したことに対して。
d)ポーランド政府に対して、モントルーレコード手順の適用を成功させ、その結果条約湿地イェジォーロ・シェードミウ・ヴィスプとスロンスク保護区をレコードから除外することができたことに対して。
e)セネガル政府に対して、条約湿地ジュッジ鳥類国立公園をモントルーレコードから除外することを目指すとした声明と情報の提供に対して。
f)アルジェリア政府に対して、条約湿地ウレド・サイド・オアシスとラク・トンガをモントルーレコードから除外することを目指すとした声明と情報の提供に対して。
g)ドイツ政府に対して、条約湿地オストフライシスシェ干潟とドラート湾をモントルーレコードから除外することを目指すとした声明と情報の提供に対して。
h)モーリタニア政府に対して、条約湿地ディアウリング国立公園をモントルーレコードから除外することを目指すとした声明と情報の提供に対して。
27.条約第6条2項⒟及び第8条2項⒠に従い、条約湿地リストの変更、又は本締約国会議への「条約事務局長報告」に記載された、特定の条約湿地とその他の湿地における生態学的特徴の変化に関して、以下のことを勧告する。
ⅰ)決議Ⅸ.15、段落27のⅱ)の勧告に従い、ドイツ政府は、条約湿地であるミューレンベルガー湖に関して、条約第4条2項のもとにとられた代償措置及びその効果に関する総合報告書を、決議Ⅷ.20に従って提出すること。
ⅱ)ウクライナ政府は、決議Ⅸ.15、段落27のⅳ)の勧告に従い、決議Ⅸ.15の採択後に実施された作業に関する情報を含む、ドナウデルタのビストレ航路の深い浚渫に関する完全及び最新の情報を遅滞なく提供すること、また欧州評議会による他の国際機関の参加を伴った現地評価視察の枠組みで実施された2008年7月のラムサール諮問調査団より提案された、ルーマニアとモルドバとの国境を越えた協同作業の進捗について報告すること。
ⅲ)ギリシア政府は、決議Ⅸ.15、段落27のⅺ)の勧告と以前のCOPの会議の勧告に従い、モントルーレコードに記載されている7ヶ所の条約湿地を同レコードから除外することを目指して、それらの条約湿地の生態学的特徴を再生するためにとられている措置の全般、及び1999年に同レコードから除外された3ヶ所の条約湿地において生態学的特徴を維持するためにとられている措置に関して、条約事務局長に通知すること。
ⅳ)インド政府は、条約湿地コレル湖の境界線の制限に関するあらゆる提案についての新たな情報を通知すること、またそれら制限のいずれかでもが考慮される前に、決議Ⅸ.6に定められている手順を完全に実施すること、さらに、この結果を条約事務局に報告すること。
ⅴ)ケニア政府は、条約湿地ナイバシャ湖とバリンゴ湖における生態学的特徴の現在の問題に関連して、モントルーレコード手順を使用することについて重ねて考慮し、砂糖製造のためのタナデルタの大掛かりな土地転用計画におけるどのような変更についても、情報を条約事務局長に通知すること。
ⅵ)タンザニア政府は、条約湿地ネートロン湖流域に対するラムサール諮問調査団の助言と勧告に関する最新の情報、特にソーダ灰の処理施設の開発計画に関する情報を条約事務局長に提供すること。
ⅶ)ニカラグア政府は、条約湿地ブルーフィールズ湾湿地水系に対するラムサール諮問調査団の勧告に関連して、同湿地における全天候型の道路計画に関する最新の情報を条約事務局に提供すること。
ⅷ)アラブ首長国連合(UAE)政府は、条約湿地ラスアルコーにおける運河建設計画と生態学的特徴の回復に関して進展があれば、それを条約事務局長に知らせること。
ⅸ)韓国政府は、特にセマングム埋立地の国際的に重要な渡り性水鳥個体群の減少に関連する、生態学的影響のモニタリングの最新情報を条約事務局長に提供することを継続し、「湿地保護地域」と、「生態系景観保全地域」のなかの湿地に、生態学的特徴の著しい変化があれば条約事務局に通知すること。
ⅹ)中国政府は、採鉱目的のために条約湿地ダライ湖から取水する計画が現在保留されているが、何か変化があった場合は条約事務局長に通知すること。
ⅹⅰ)イラク政府は、条約湿地ハーウィツェ湿原への自然及び人為的影響により予想される生態学的特徴の変化に関してモントルーレコード手順の適用を考慮すること。
ⅹⅱ)ネパール政府は、条約湿地コシタップの洪水による最近の生態学的特徴の変化に関して、モントルーレコード手順の適用を考え、同湿地の将来の管理に関する適切な行動の助言をラムサール諮問調査団に要請することを考慮すること。
ⅹⅲ)マレーシア政府は、条約湿地プラウククプ、スンガイプライ、タンジュンプライの最近及び計画中の沿岸工業開発による、生態学的特徴の変化に関する報告を条約事務局長に提供すること。
ⅹⅳ)オーストラリア政府は、条約湿地クーロン・アレクサンドリア・アルバート湖の深刻な水不足の影響に対処するために現在起こしている行動の最新報告を、条約事務局長に継続して行うこと、さらに、同湿地をモントルーレコードに登録することの妥当性を考慮すること。
ⅹⅴ)締約国政府は、条約湿地の生態学的特徴の変化や変化のおそれについて第三者機関により提供された報告に関し、要求を受けたら、条約事務局に早急に情報を通知すること。
28.STRPに対して、第三者機関によって作成された条約湿地の生態学的特徴の変化あるいは変化のおそれに関する報告書を、条約事務局と締約国が考慮する際の適切な手順について助言するよう要請する。
29.締約国に対して、新しい湿地の登録、既存の湿地の拡張、ならびに既存の湿地の情報更新には、ラムサール条約湿地情報票(RIS)の最新版を用いるよう要請する。
30.締約国に対して、領域内の全てのラムサール条約湿地に関するラムサール条約湿地情報票(RIS)を最新のものにしたことに謝意を表する。
31.領域内にラムサール条約登録湿地を有し、まだ公式な記載と適切な地図のいずれか一方又は両方を提出していない締約国に対し、最優先事項として、ラムサール条約湿地情報票と地図のいずれか一方又は両方を条約公式使用言語のうちの一つで提出することを強く要請し、また、条約事務局に対し、本決議の付属文書1に記載されている締約国に連絡をとり、これらの資料を提出するよう要請することを指示する。
32.以下に示す68ヶ国の締約国から、COP10国別報告書の中で、あるいは本会議の間に、条約湿地の拡張計画ならびに将来的に新たな条約湿地の指定もしくは拡張が表明されたことを歓迎する。アルジェリア(25ヶ所)、アルゼンチン(2ヶ所)、アゼルバイジャン(4ヶ所)、ベラルーシ(2ヶ所)、ベルギー、ボリビア(3ヶ所)、ボツワナ(2ヶ所)、ブルガリア、カンボジア(3ヶ所)、チリ(4ヶ所)、中国(2030年までに44ヶ所)、コロンビア(1ヶ所)、コモロ(1ヶ所)、コンゴ(2ヶ所)、コスタリカ(1ヶ所)、コートジボアール(6ヶ所)、クロアチア(1ヶ所)、キプロス、ドミニカ共和国(2ヶ所)、エクアドル(3ヶ所)、エルサルバドル(15ヶ所)、エストニア(12ヶ所)、フランス(12ヶ所)、ドイツ、グアテマラ(6ヶ所)、ホンジュラス、アイスランド(少なくとも2ヶ所)、インド(6ヶ所)、インドネシア(3ヶ所)、イラン・イスラム共和国(5ヶ所)、イスラエル(2ヶ所)、イタリア(5ヶ所)、日本(10ヶ所)、ヨルダン(1ヶ所)、カザフスタン(19ヶ所)、ケニア(3ヶ所)、マリ(2ヶ所)、モーリタニア(4ヶ所)、モーリシャス(1ヶ所)、マーシャル諸島(2ヶ所)、モルドバ(1ヶ所)、モンゴル(26ヶ所)、モンテネグロ、ネパール(5ヶ所)、ニュージーランド(12ヶ所)、ニジェール(5ヶ所)、パキスタン(8ヶ所)、ポーランド(少なくとも2ヶ所)、大韓民国(5ヶ所)、ルーマニア、スロベニア、南アフリカ(2ヶ所)、スペイン(少なくとも5ヶ所)、スリランカ(2ヶ所)、スーダン(2ヶ所)、スリナム(2ヶ所)、スウェーデン、スイス、タジキスタン(3ヶ所)、タンザニア(1ヶ所)、トルコ(8ヶ所)、ウガンダ(2ヶ所)、ウクライナ、アラブ首長国連邦(3ヶ所)、英国、ウズベキスタン(1ヶ所)、ベネズエラ(14ヶ所)、ベトナム(3ヶ所)。
33.条約事務局に対して、生物学的特徴の変化や変化のおそれに対応する締約国の行動を援助し奨励するような選択肢を考慮するよう指示する。
決議Ⅹ.13
付属書1
優先事項として、ひとつ以上のラムサール条約湿地情報票、もしくはその更新が必要な締約国の一覧
(2008年11月4日現在)
|
|
|
決議Ⅹ.13
付属書2
COP10国別報告書で報告された、人為的なマイナス変化が起こった、起こりつつある、起こるおそれのある(第3条2項)ラムサール条約湿地の一覧
原注)この付属書には、この分析時(2008年10月1日)までに受け取った国別報告書に報告された事例のみを記載している。本付属書に記載されている湿地に関する詳細は当該締約国のCOP10国別報告書を参照のこと。
国名 | 湿地 |
---|---|
アルジェリア | トンゴ湖、ウレド・サイド・オアシス |
アルメニア | セバン湖 |
オーストラリア | クーロン・アレクサンドリア・アルバート湖、グワイダー湿地 |
オーストリア | ドナウ−マーチ−ターヤ−オーエン、ウンテレン・イン湖 |
ベラルーシ | イェリナ、オスベイスキ、スポロビスキ、ズバネツ |
ボスニア・ヘルツェゴビナ | ハトボブラト |
ブルガリア | ベレネ諸島、スレバルナ湖、デゥランクラク湖 |
コモロ | カータラ、ンティグイ山 |
クロアチア | コパツキ湿地国立公園 |
デンマーク(グリーンランド) | ヘデン(ジェームソン・ランド) |
アイスランド | グランフィヨルズル、ミーヴァトン−ラクスアウ地域(部分的)、シヨルサーヴァー |
インド | コレル湖(プラスの変化) |
イラク | ハーウィツェ湿原 |
ケニア | バリンゴ湖、ナイバシャ湖 |
リベリア | メスラド川、ピソ湖 |
モーリタニア | バンダルガン国立公園、ディアウリング国立公園 |
レバノン | パーム諸島自然保護区 |
モンテネグロ | シュコダル湖 |
ナイジェリア | ヌグル湖 |
ノルウェー | フローン、オーケシュルビカ、イレヌ・ペステレキレン、クレフィヨルド、オラ |
ルーマニア | ドナウデルタ |
スペイン | アルブフェラ・デ・バーレーンシア、ドニャーナ、ラス・タブラス・デ・ダイミエル、オリバペーゴ沼、アルブフェラ・デ・マヨルカ、チングディ |
スウェーデン | ウメ川デルタ |
タンザニア | ナトロン湖 |
ウクライナ | キリイスケ河口 |
ザンビア | カフエ湿原 |
- [英語原文:
- ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.13 "The status of sites in the Ramsar List of Wetlands of International Importance", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_13_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_13_e.pdf.]
- [和訳:
-
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi13.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.]
- [レイアウト:
- 条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
- [フォロー:
- COP11決議案4(英語原文:Word 115 ㎅・PDF 115 ㎅) .]