ラムサール条約　第６回締約国会議
勧告６.３：地域住民及び先住民の関与

第６回締約国会議
ブリズベン，オーストラリア
1996年３月19−27日

勧告６.３：ラムサール湿地管理への地域住民及び先住民の関与に関する勧告

［この勧告の目的のため、「管理」とは保全と賢明な利用を包含するものとする。］

1. 地域住民の参加と要求を考慮に入れた、ラムサール登録湿地の管理計画の策定を求める『賢明な利用の概念実施のためのガイドライン』（勧告４．１０付属書）を想起し、

2. さらに地域社会が、湿地の利用に関する意思決定の過程に関わるようにし、意思決定の過程へ意義深い参加が確実に行われるために、計画される事業に対しての充分な知識を地域社会に提供することを保証する手続きを、締約国が確立するよう提案している『賢明な利用の概念実施のための追加手引き』（決議５．６付属書）を重ねて想起し、

3. 地域住民及び先住民が、地域内の湿地の賢明な管理を確保することに特別の関心を持っており、特に先住民が湿地の管理に関して独特の知識と経験と要望を持っていることを認識し、

4. 湿地の賢明な利用が地域住民及び先住民の生活の質の向上に寄与し、さらにこれらの人々の湿地管理への関与に加え、湿地の保全及び賢明でかつ持続可能な利用の結果としての恩恵を得るべきであることを確信し、

5. 適切な協議の機構の欠如、あるいは関連する問題についての理解の欠如から、地域住民及び先住民が意思決定の過程から除外される場合があることに留意し、

6. 多くの地域住民及び先住民が、地域にある湿地と長い間にわたって繋がりを持ってきたこと、伝統的な管理の実践によって現代の管理技術の開発を援助することができることを意識し、

7. 今回の締約国会議で開催された、地域社会に根ざした湿地管理に関する分科会で、湿地資源の賢明な利用における地域の人々の積極的かつ十分な情報に基づいた参加に関し、アメリカ合衆国の「カドー湖基金」、セネガル及びコスタリカのＩＵＣＮ地域事務所、日本の「釧路国際ウェットランドセンター」、ＷＷＦインド（ケオラデオ国立公園）及びＷＷＦパキスタン（ウクハリ湿地）、ブラジルのマミラウアにある生態学研究ステーションの取り組み等が、期待できるＮＧＯの事例として発表されたことに留意し、

8. そして、これらの事例あるいはその他の成功している事例に関する情報の普及が、締約国にとって有益で、地域レベルでのＮＧＯとの協力関係を奨励することによって戦略計画の行動計画２．７の実践を促進するものであることに留意し、

締約国会議は、

9. ラムサール登録湿地や他の湿地そして集水域での湿地管理の際、地域住民と先住民が適切な機構を通じて、積極的かつ十分な情報に基づいた参加ができるように、各締約国が特段の努力を払うことを求める。

10. 締約国を通じ、地球的規模で地域住民及び先住民の湿地管理への関与の重要性を発展させ、そのための特別な資金援助を求める努力を強化するよう、条約事務局に命ずる。

11. 湿地管理に関する地域住民と先住民の知識と技術の価値を認識し、湿地政策と計画の策定そしてその実施に、当初の段階から彼らの参加を促進する特別な努力を払うよう、さらに締約国に求める。

12. 国内ラムサール委員会の中に、さらに可能かつ適切な場合には今後の締約国会議の代表団の中に、地域住民及び先住民の代表を加えるよう検討することを、締約国に要請する。

13. ＷＷＦ、「釧路国際ウェットランドセンター」、「カドー湖基金」、ＩＵＣＮ、各締約国、及び地方や地域に根ざした適切な経験を持つ他のＮＧＯとの協議の下に、次期締約国会議で検討するため、地域住民と先住民を湿地管理に関与させるための基準とガイドラインとともに、保全及び賢明な利用への貢献についての評価を示すよう条約事務局に指示する。

14. 地域住民及び先住民が、積極的かつ十分な情報に基づいて湿地管理に参加している事例やその他の関連情報を、適切な手段を講じて普及させるようさらに条約事務局に命ずる。

15. さらに地域住民と先住民の要求や価値観、伝統的なものとそうでないものを含めた知識や実践を反映させるため、国の湿地政策とプログラム、ラムサール登録湿地と他の重要な湿地の管理計画に、地域住民と先住民との協議を確保するため、既存のあらゆる事例を参考にしながら、適切な国家的、地域的機構を作るよう締約国に重ねて要請する。