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ラムサール条約

第7回締約国会議 文書18.1

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COP7's logo 「人と湿地:命のつながり」
特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
(ラムサール条約)
(イラン、ラムサール、1971年)
第7回締約国会議
1999年5月10-18日 コスタリカ サンホセ

Ramsar logo

ラムサール条約 第7回締約国会議 文書18.1

第3分科会:
湿地のワイズユースと保全における全てのレベルでの関係者
研究論文1

湿地管理における先住民と地域社会を取り巻く参加プロセス

参照:決議 VII.8 地域社会及び先住民の参加

参照:ケーススタディ

経緯

1.ラムサール登録湿地やその他の湿地管理のための意思決定におけるコミュニティーの関与と参加は、ラムサール条約の歴史を通して中心的要素として認識されてきている。しかし、締約国にはこの項目に関するごくわずかな手引きがあるのみである。1987年レジーナ(カナダ)で開催された第3回締約国会議では、人々に対する湿地の恩恵は、初めて湿地保護原理として特に強調された。この会議において「ワイズユース」という用語は「生態系の自然特性を維持しながら人間の利益のために湿地を持続的に利用することを両立させること」と定義されていた。そして特に勧告3.3は、湿地管理における多大な地域社会の関与の仕方について指摘している。

2.1990年の締約国によるモントルー会議において、このことは勧告4.10「賢明な利用概念の実施のためのガイドライン」の付属書で更に増幅して述べてある。勧告には、

『施設、履行、そして必要であれば、地域住民に関係する管理計画の定期的な改定とそれらの人々の要求を考慮するための規定』

が含まれている。

3.意思決定の意識の高まり、公共の利益、湿地の価値、湿地政策の実施における適切な人材のトレーニング、それとワイズユースの伝統的な技術を検討することに重点を置いた。言い換えれば、地域住民は情報の源として、意思決定のための知恵の提供者として、そして資源を賢く管理するスタッフとして見なされてきた。この会議後、ワイズユースプロジェクトが湿地のワイズユースの事例を準備するために設立された。

4.ワイズユースプロジェクトは、1993年に行われた締約国の釧路会議で報告され、そして決議5.6の付属書「賢明な利用概念の実施のための追加手引き」の中で、締約国は、

『地域社会は湿地利用と関連する意思決定過程にかかわれることと、この意思決定過程において人々の意味ある参加を確実にするために計画された行動の十分な知識を地域社会に与えることを保証する手続きをとらなければならない。』

5.また、統合的管理計画策定の章でも、以下のように示唆している:

『管理権限は、管理過程の実施とともに課されるべきである・・・強力な協力と政府と非政府機関、それと同等に地域住民らの参加が達成される事が必要である。』

6.1990年のモントルー会議で湿地のワイズユースの実施のためのガイドラインの増補版の採択に加えて、ワイズユース作業部会は以下のように提言した:

『地域レベル、国レベル・・・地域社会は湿地利用と関連する意思決定過程にかかわれることと、この意思決定過程において人々の意味ある参加を確実にするために計画された行動の十分な知識を地域社会に与えることを保証する手続きをとらなければならない。ワーキンググループ又は顧問委員会代表利用者、NGO、地域権限が存在すべきである。

湿地のための一般的なワイズユース法は以下のようであるべきである・・・当該政府、地主と土地利用者間の管理合意のシステムの制度、このことが生態系の維持が必要な時は、積極的な管理を利用者によって調整させる。

保全と特別な湿地(例えば、ラムサール登録湿地、生態学的に繊細なエリア、高度な生物多様性を持つ土地、固有種や湿地自然保護区を含む)の保全とワイズユースのための法律は、以下のようである

7.総体的に、作業部会は以下のように認識した:

『湿地管理は固有の状況に適応し、地元文化に配慮し伝統的利用に敬意を表すべきである。管理は・・・地元の状況に合わせて適用されるべきである。』

8.作業部会の結論は1993年、釧路で行われた締約国会議の決議5.6として採択された。

9.湿地管理における地域社会のかかわりというアイディアの発展は、上記リポートと決定書の言い回しにより明らかで、ラムサール条約マニュアル(ラムサール事務局 1997)に於いて容易に理解する事が出来る。まず最初は、利益の認識と世界中の湿地での地域社会の伝統的利用の認識があった。これは地域住民と相談する事の必要性を認識する事に加えることによって、意思決定と資源管理が彼らの利益を会計に入れることができるという事が発展した。

10.これらの重要な慣例を基に、ブリスベン会議(1996)の勧告6.3は、締約国に、『湿地管理において、適切な機構を通し、ラムサール登録湿地とその他の湿地、それらの集水域、そしてそれらが直接関わりのある所において、地域住民と先住民の活発な詳しい情報に基づく参加を促す為の明確な努力をする』ことを要求した。

11.締約国は条約事務局が、国際自然保護連合、世界自然保護基金、米国カドー湖研究所と釧路国際ウエットランドセンターとともに、これらの尽力をしている締約国を援助するためのガイドラインを発展させることを命じた。

勧告6.3への応答としてのプロジェクト

12.ラムサールの勧告6.3への応答からなる中で、ある一つのプロジェクトが、前述の組織の代表者からなる舵取り委員会とその過程において活発に取り組んできている米国NGOラムサール委員会を加えて綿密な調整の中、IUCN社会政策グループ(SPG)と設立された。そのプロジェクトは三つのワークショップの第一番目として、情報収集と知識の共有の過程の一部分として、1997年5月に始まった。アメリカのバージニア州アレクサンドリアでのこの最初のワークショップは、北アメリカと新熱帯区地方からのケーススタディを熟考した。この同じワークショップで舵取り委員会は、ラムサール事務局とそれの各関係者のネットワークを通して、締約国と更なるケーススタディの提案をとりまとめている湿地管理に関わるNGOにお知らせを配った。受け取った60の提案の中から、プロジェクト舵取り委員会は7つのラムサール地域をカバーしている21のケーススタディを選び出した。さらにこれは生態系管理についてこれまでのIUCNプロジェクトからの2つのケーススタディが付け加えられた(添付リスト参照)。これらのケーススタディは湿地生態系タイプの均衡のある多様性、保全上の問題点、地元関与の形を表している。1997年9月、ケーススタディの執筆者達にはケーススタディの中における扱うための項目に関する詳しいガイドラインが送られた。SPGは最初の草案に対して意見を提供して、執筆者はその年の終りまでに最終的な案を提出した。

13.ラムサール条約管理部門当局によるこのプロジェクトのための支援要請にしたがえば、財政支援はオーストラリア政府、スイス政府、そしてイギリス政府によりもたらされる予定であった。

14.ケーススタディ資料から、SPGは、湿地管理における地域と先住民の関与に関するガイドランと基準の最初の草案を作るための勧告のポリシーとケーススタディのまとめを統合した。この草案は、1998年2月、全てのケーススタディの執筆者たちと舵取り委員会と湿地管理専門家に回覧された。そして、さらに二つの技術ワークショップがケーススタディについて話し合うために、また草案のガイドラインを再検討するために組織された。第2回目のワークショップは1998年3月2日〜4日にかけて、日本の北海道、釧路国際ウエットランドセンターにおいて開催され、アジアとオセアニアからケーススタディの執筆者も参加した。第3回目の技術ワークショップは1998年4月16日〜17日にかけて、米国バージニア州アーリントンでアメリカ湿地会議と合同で開かれ、アフリカ、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、カリブ海からのケーススタディの執筆者が参加した。これらのワークショップにおける技術討論は、外部の評論家達からの意見に加えて次のガイドラインの草案と合体され、最終草案が作られた。これらは6月に舵取り委員会のメンバーにより再検討され、さらにより広く再検討するために先住民の団体、天然資源管理従事者、湿地専門家達に送られた。現在の最終草案と付属書ガイドラインは100以上の団体や世界中の多数の個人の意見を反映している。それらは第7回締約国会議にかけるために、ラムサール条約常任委員会の第21回会議により承認された。

1998年10月26日 ラムサール条約事務局


勧告6.3に対応するプロジェクトのためのケーススタディサイト

略号:†=IUCN生態系管理ケーススタディ.

サイトの名前

国名

湿地のタイプ

ラムサール登録湿地

保護地区

社会経済と人口統計状況

地域社会関与のタイプ

保全上の問題点

著者/連絡先

アフリカ

Waza Logone

カメルーン

氾濫原

×

自耕自足農業、貧困、自然増加と移住

管理委員会

自然資源のための公園地域への浸食、放牧、氾濫原規模縮小、生態系の破壊

Roger Kouokom, IUCN's Waza Logone Project

Rio Grande de Buba

ギニアービザウ共和国

河口域

×

×

貧しい地域社会、自耕自足漁業・農業

共同管理資金と、漁業権の規則

森林破壊、乱獲

Philippe Tous, Assistant Technique, Rio Grande de Buba, IUCN-Guinea Bissau

Diawling National Park

モーリタニア

三角州、河口域、マングローブ

Black Moors の貧しい地域社会、ウォロフ族、漁業、ござ作り

水管理における管理委員会の関与、監視

湿地は事実上 Diama ダムにより破壊されており,再建進行中

Olivier Hamerlynck, IUCN-Mauritania

Djoudj National Park

セネガル

三角州

湿地は主な利水工事で囲まれている;自耕自足牧畜と農業

水と資源管理における参加;管理委員会

生態系破壊;違法な資源収集といたましい生態系の悪化

Amadou Matar Diouf, IUCN-Senegal

Tanga

タンザニア

砂洲とマングローブ

×

×

貧しい自耕自足漁業地域社会

パイロットビレッジ、帰属意識が必要、共同で役立つ管理合意

ダイナマイトを使った漁業、漁業の過剰な開発、塩生産のためのマングローブ林伐採

Chris Horrill, IUCN-Tanga project

アジア

黄河三角州

中国

三角州、干潟

×

人口過密、農業、石油掘穿

農業は保存の基本方針の一部である;共同保有農場相談

渡り鳥の中継地、石油汚染、村民による資源の過剰な摘出

Yan Chenggao, Dept. of Wildlife Conservation, Ministry of Forestry, & Yuan Jun, Wetlands International

Keoladeo National Park

インド

湿地、沼沢、半乾燥森林

地元では公園を狩り、まき集め等で使用

実行の過程における地域社会の参加

とても高密度の生物多様性;世界遺産登録地、公園と地元間の戦い

Biksham Gujja, Wetlands Programme, WWF-International

Kampung Kuantan

マレーシア

マングローブ

×

×

旅行業協同組合における村民関与

旅行者のための船乗りと展示センター

エコツーリズムに伴なう管理問題と環境汚染

Jamil bin Hamzah, Dir. of Programme, Wetlands International-Asia Pacific

谷津干潟

日本

干潟

より高い収入、都会に密集して位置している

教育、調査

東京湾における最後の干潟;産業汚染物と都会の垂れ流し

Akihito Hasegawa, Yatsu Tidalflat Nature Observation Center & Sadayosi Tobai, WWF-Japan

東欧

Morava River floodplains

スロヴァキア

湿地、三日月湖、湿性草地など

農業、新しく発展した主導;地元は土地と密接は関係を持っている

NGOの協力、国家行政、管理計画の準備における農民

農業の減少(採草と家畜)は生物多様性における減少をもたらす

Jan Seffer, Daphne Foundation, Slovakia

Dubna wetland

ロシア

沼沢地、泥炭と森林

×

モスクワに隣接、田舎の農業地域

プロジェクト運営教育/コミュニケーション活動;新たな段階の始まり

主なツルの営巣地、違法な狩猟、排水、それとモスクワへの水揚げ可能

Smirnova Lena, Home-land of the Crane Programme, Biodiversity Conservation Centre

西欧

Le Cesine

イタリア

砂丘の後ろの汽水湖

より高い収入

野党は教育と所得創出にいたるまでの支援に取り掛かる

海岸沿いの旅行業の開発

Neida Finistauri, consultant to WWF-Italy and MedWet initiative

Pevensey Levels

英国

湿性草地、潮間帯湿地跡地

×

×

密集地、農業

湿地管理のための地元顧問評議会を樹立

クモ類(Fen Raft spider)生息地;脅威:上流水汲み上げ、農業

David Gasca-Tucker and Mike Acreman, Institute of Hydrology

Solway, Firth of Forth, Moray Firth

英国スコットランド

海岸河口

都会の地域、農業

フォーラムが異なる利害関係者を一緒にした

建設・都会の満杯・護岸・ダムなどが,魚・アザラシ・いるか・干潟生息種への脅威

Stephen Atkins, Scottish Natural Heritage

新熱帯区(ラテンアメリカと西インド諸島)

Baía do Castelo

ブラジル

氾濫原、季節的な湖と恒久的な湖

×

×

小規模畜牛業、自耕自足漁業と旅行業

湖と川システムの調査における地元関与

保全の状態は基本的に良好;自然魚

Debora Calheiros, EMBRAPA-CPAP, Corumba, Brazil

El Balsar

ペルー

人工湿地

×

先住民漁業地域社会

地域社会が主導している;漁業者組合が管理する

ボート作りのための葦(scirpus californicus)の開墾;都市化の取り扱いと旅行業

Victor Pulido, Dept. of Biology, University Inca Garcilaso de la Vega

北米

Grand Codroy Estuary

カナダ

河口

農業(干草野原と穀物)

地元地主との良い賛同幹事;教育的行動

いくつかの鳥の種にとって危機的生息地;クマ、ムース、ビーバー、キツネなども支える

Mike Cahill, Chief of Conservation and Habitat, Dept. of Forest Reserves Newfoundland

Caddo Lake

米国

糸杉湿地、湖と集水域

田舎、小さな町、未開発、農業関連産業、林業、石油とガス、スポーツフィッシング

NGOネットワークが科学的で教育的モニタリングを提供

地元に適した環境的質と管理基準の必要;農業、石油とガスによる毒物負荷

Dwight Shellman, Caddo Lake Institute

海岸湿地

メキシコ

三角州、潟湖、マングローブ

×

×

1000人がこの地域に住んでいる、漁業、狩猟など

地元関与と教育における多大な尽力

湿地は生態学上の経済と社会的重要性を持っている;農業廃水からの恐怖

Carlos Valdez & Elena Chavarria, Pronatura, Guaymas, Sonora

Sian Ka'an

メキシコ

河口湿地、サンゴ礁、森林

×

漁業者、イセエビの漁、ココナッツ、家畜

資源利用の権利は地域社会にある;土地区画行動

木の過剰伐採、放牧のための土地開墾、過剰漁業

Arturo Lopez Ornat, State Government of Quintana Roo

オセアニア

Tonda Wildlife Management Area

パプアニューギニア

淡水氾濫原とマングローブ

先住民、慣習上の所有権

WWFは先住民の所有者達が管理戦略を発展させるために援助している

地区はパプアニューギニアとインドネシアの間で分かれている;国境を挟む管理の複雑さを明らかにする

Paul Chatterton, consultant to WWF-Australia

Lake Tegano

ソロモン諸島

サンゴ環礁上の汽水湖

×

×

先住民、慣習上の所有権、漁業、狩猟

生態学的持続可能な管理を確立するために先住民所有者達とともに仕事をしている

世界遺産として検討中

Elspeth Wingham, consultant, & Ben Devi, Ministry of Commerce and Tourism

Djelk wetlands

オーストラリア

広大な淡水氾濫原

先住民

アボリジナルの自由保有権;彼らは占有権を持っている

マリファナ蔓延の制御、旅行業、採鉱など

Max Finlayson, Environmental Research Institute of the Supervising Scientist

湿地管理における地元住民と先住民の人々の関わり合いについてのケーススタディ(和訳)


[和訳:薮並郁子,北海道教育大学釧路校,2002年11月]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う]

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