Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.2:世界ダム委員会

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.2

世界ダム委員会(WCD)の報告およびそのラムサール条約との関係

1.決議.18により、湿地の生態学的特徴を維持するために河川とその水資源を流域規模で管理することの重要性とともに、多くの湿地が水の供給と管理の面で重要な財とサービスを提供していることを締約国が認識したこと、そして「湿地の生態学的機能を維持するための水資源の配分と管理に関するガイドライン」(決議.1)を今回の締約国会議が採択したことを想起し

2.さらに決議.18では、科学技術検討委員会(STRP)に対して世界ダム委員会(WCD)の検討結果とその結果の将来にわたっての意味合いについて第8回締約国会議に報告するよう求めたことも想起し

3.世界銀行と国際自然保護連合の主催した世界ダム委員会の作業が2000年に終了し、同委員会の最終報告(「ダムと開発:意思決定の新たな枠組み」)が出版されたことに留意し、またこの件に関する情報文書がSTRPによって作成されたことにもさらに留意しCOP8 DOC.10);

4.大型ダムはこれまで大きく開発に貢献してきており、今も地方及び国のレベルでエネルギー資源と水資源の需要を満たすための選択肢であること、また大型ダムは、湿地の価値と機能をある程度は提供する人工水域を創出し、ダムの影響を受けた湿地の価値と機能を部分的に補う可能性をもつことを認識し

5.また、世界各地の大型ダムが水質と水量に影響を与え、湿地の水文特性に作用していること、また地球規模で絶滅のおそれがあるか否かにかかわらず、種の相当な部分を占めているのが淡水系の魚類や両生類その他の生物種であり、それら淡水系の生物種がダムの直接および間接の影響をきわめて受けやすいこと、そして水路を変更することが湿地の財とサービスの利用者である都市住民と農村住民の間に衝突を生み出す可能性があることも認識し

6.水資源の賢明な利用には、関係団体や影響を受ける利害関係者層の間で広範な協議を行うことはもとより、河川周辺、沿岸および海洋の複雑な生態系に対する社会的、環境的影響を幅広く評価すること、また相互交流と紛争解決のための協議の場を設置することが必要であることに留意し、かつ「湿地の管理への地域社会および先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」(決議.8)を締約国が採択したことを想起し

7.また、今日の多様な世界にあって「一つの型で全部に応用がきくような」アプローチは非現実的であり、したがって世界ダム委員会のガイドラインは「意思決定を助ける助言ツール」であって、地方や国の状況に合わせて調整が必要であると同委員会が認識したことにさらに留意し

8.世界ダム委員会が得た結果とそのラムサール条約との関係に関する情報文書(COP8 DOC.10)を今回の締約国会議のために作成した労苦について、STRP、国際自然保護連合、世界ダム委員会事務局、生物多様性条約(CBD)事務局に感謝し

締約国会議は、

9.世界ダム委員会は、非政府のプロセスであって、政府に対して拘束力をもたないことを確認する

10.締約国のうち、傷つきやすい河川生態系及び湿地生態系に及ぼすダムの影響の管理や評価を迫られている国に対して、大型ダムに関する意思決定において湿地およびその価値と機能が確実かつ十分に考慮されるようにするために、地方および各国の水資源の配分および意思決定のプロセスに情報を提供し指導する目的でラムサール条約が採択した関連手引きとあわせて、世界ダム委員会が提供した情報も含め、適切である場合には、入手できるあらゆる情報を利用することを奨励する

11.締約国に対して、決議.18の「河川流域管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン」と「CBD・ラムサール条約河川流域イニシアティブ」を活用しつつ、ダム施設の開発と運用の選択肢、その代替手段、及びその改良を国レベル及び河川流域レベルで評価するプロセスに全面的に関わるよう要請する

12.締約国に対して、適切である場合には、ダムの計画段階および運用段階について、決議.8「湿地管理への地域社会および先住民の参加を確立し強化するためのガイドライン」を実施するよう強く要請するとともに、締約国に対して、この参加原則を流域レベルの水資源管理に関わる広範な問題へと拡大して適用するよう重ねて強く要請する。またその際には、決議.18の「河川流域管理に湿地の保全と賢明な利用を組み込むためのガイドライン」と決議.14の「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」を活用するものとする;

13.また、締約国に対して、大型ダムが湿地に与える社会経済的影響および生態学的な影響を緩和するため、適切である場合には、環境フロー評価を体系的に実施し、また環境フロー評価とその実施に関する適切な専門機関の設置を奨励するよう、またそうすることを通して「湿地の生態学的機能を維持するための水資源の配分と管理に関するガイドライン」(決議.1)を適用するよう重ねて強く要請する

14.締約国に対して、可能かつ適切である場合には、ダムを通過する在来魚種などのための移動経路の維持に必要な手段を講じるよう奨励する

15.締約国に対して、ダムに関する意思決定、計画策定および管理の向上に関する対話を促進するため、国連環境計画の「ダムと開発プロジェクト」に参加するよう求める

16.国際自然保護連合その他の適切な技術機関に対して、環境フロー評価法をダムに関連する影響を管理する際の助けとして締約国が確実に利用できるようにするため、現在行っている環境フロー評価法に関する研究を、STRPに要請されている水の配分と管理に関する追加研究に提供するよう要請するとともに、STRPに対して、環境フロー評価法についてCOP9で報告するよう要請する

17.STRPに対して、常設委員会が20032005年におけるSTRPの優先事項とみなすならば、決議.1と.2を検討し、必要であれば、第9回締約国会議(COP9)で討議できるように詳しい手引きを作成するよう要請する

18.STRPに対して、常設委員会が優先事項と認めるならば、水生生物などの水に依存する生物による利用も含め、貯水池などの人工湿地の果たす生態学的な役割を見直し、こうした湿地をすでに特定してラムサール条約湿地リストに載せるように指定した締約国の経験を考慮しながら、こうした湿地の特定と指定に関する手引きを締約国のために準備するよう同じく要請する

19.締約国に対して、ラムサール条約第3条2に従い、ダムがラムサール条約湿地の生態学的特徴を既に変化させており、変化させつつあり、または変化させるおそれがある場合にはそのダムについて条約事務局に通報し、COP9に提出する国別報告書で領土内の湿地に及ぼすダムの影響について報告するよう強く要請する

原注:

1.本決議の総意による採択に対して、トルコは同意を留保した。留保表明の文書は第8回締約国会議(COP8)報告段落83に収載されている。


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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