琵琶湖水鳥・湿地センター > ラムサール条約 > ラムサール条約を活用しよう | 第8回締約国会議 |
「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日
1.気候変動が湿地の生態学的特徴とその持続可能な利用に大きく影響しうることを認識するとともに、気候変動に適応するうえでも、その影響を緩和するうえでも、湿地が重要な役割を果たす可能性のあることを意識し;
2.長期的な干ばつがすでに世界の多くの地域で湿地の生態学的特徴に深刻な影響を及ぼしていること、また気候変動は他の土地利用や土地管理活動とともにこのような問題を悪化させると予測されていることを憂慮し;
3.世界の多くの地域で起きている排水や火災による近年の泥炭地の劣化、それにともなって生ずる温室効果ガス排出への影響、そしてこの劣化が生物の多様性や地域の人々に及ぼす影響を重ねて憂慮し;
4.気候変動の結果、多くの地域で豪雨が予測されることを認識するとともに、それが湿地の生態学的特徴と経済的利益をもたらす生態系の能力に深刻なまでに悪影響を及ぼすこと、そのなかでも特に、サンゴ礁と藻場という、ラムサール条約湿地リストにこれまであまり登録されていない湿地タイプに悪影響を及ぼすことを多くの締約国が憂慮していることに留意し;
5.また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、その第3次評価報告書において、礁、環礁、マングローブなどの湿地や草原にある湿地、熱帯林、北方林、北極生態系(永久凍土層を含む)及び高山生態系は、適応能力が限られているために特に気候変動の影響を受けやすい自然の系で、取り返しのつかない大きなダメージを受ける可能性がありうると結論づけたことにも留意し;
6.気候変動の影響、特に海面上昇の影響に対する小島嶼開発途上国の生態学的、社会的、経済的脆弱性を認識し;
7.条約の「2000−2002年作業計画」が行動5.1.6において、STRPに対して、第8回締約国会議(COP8)での議論に向け、気候変動が湿地におよぼす影響と、気候変動及び海面上昇の影響を緩和するうえで湿地の果たす役割について包括的に検討を準備するよう求めたことを想起し;
8.国連気候変動枠組条約(UNFCCC)とその補助機関の作業と、この条約と補助機関が教育、研修、普及啓発を気候変動の問題に対処する際の不可欠なツールであると理解していることを認識するとともに、決議Ⅷ.31により策定される本条約の広報教育普及啓発プログラムが、気候変動と湿地の問題への対処に果たしうる貢献に留意し;
9.2001年のマラケシュ宣言、マラケシュ合意、2002年の気候変動及び持続可能な開発に関するデリー閣僚宣言にそれぞれ反映させたことなど、気候変動に取り組む各国の努力を歓迎し、IPCCの作業を認識し、森林性湿地を含むIPCCの「土地利用、土地利用の変化、林業(LULUCF)」に関する報告書を歓迎し、IPCCの第3次評価報告書が分析する結果に深い憂慮の念を表し;
10.多国間環境協定やその補助機関の間で、気候変動に関する共通の関心事項についての協力が進められていることを確認し、生物多様性条約とラムサール条約の間の2002−2006年共同作業計画には気候変動、湿地、生物多様性に関する共同行動が含まれていることを意識し、UNFCCCのCOP8の決定で、同条約、生物多様性条約及び砂漠化対処条約による合同連絡グループが情報を共有し、かつ適宜ラムサール条約事務局を同グループの会合に参加するよう招聘する必要を指摘したことを歓迎し;
11.気候変動と湿地に関して包括的なCOP8情報文書を作成したSTRPに感謝し、また、オーストラリアの監督科学者環境研究所、IPCCの評価に関わったオーストラリア国立大学の科学者と国際自然保護連合の今回の作業への貢献に感謝しつつ、「第8回締約国会議文書11(COP8 DOC.11)に対する中間重要サマリー:気候変動と湿地」(COP8 DOC.40)を用意し今回の締約国会議においてすでに配布し;
12.STRPの報告書では、湿地に対する気候変動の影響、湿地の適応、湿地が気候変動の影響を緩和する方法、特に泥炭地が炭素隔離に果たす役割に関して、現在の知識や情報には重大な空白部分があることを認識していることを意識し;
13.今回の締約国会議で採択された他の手引き、特に「統合的沿岸域管理に湿地の問題を組み込むための原則及びガイドライン」(決議Ⅷ.4)、「泥炭地に関する地球的行動のためのガイドライン」(決議Ⅷ.17)、「多国間環境協定及びその他の組織とのパートナーシップと協働」(決議Ⅷ.5)及び戦略計画実施目標3(決議Ⅷ.25)が、気候変動と湿地の問題への取組に関連していることに留意し;
締約国会議は、
14.締約国に対して、気候変動と異常気象に対する湿地の回復力を高めるように湿地を管理することを、また脆弱な国々においては、特に湿地と集水域の保護と再生を促進することで、洪水と旱魃のリスクを低減するように湿地を管理することを求める;
15.関係国の全てに対して、炭素の膨大な貯蔵所であり、または炭素を隔離する能力をもち、影響緩和因子と考えられている泥炭地その他のタイプの湿地について、その劣化を最小限にくいとめ、再生を促進し、またそれらに対する管理方法を向上させるとともに、気候変動から生じるこれらの生態系の変化に対応する社会の適応力を高めるために行動を起こすよう求める;
16.締約国に対して、湿地の保全と賢明な利用に関する国の政策に気候変動の問題を組み込む際には、COP8会議文書 COP8 DOC.11 及び COP8 DOC.40 という背景文書に収められた気候変動と湿地に関する情報を検討し、適宜それを利用するよう奨励する;
17.締約国に対して、UNFCCC、また必要に応じてその京都議定書(植生回復や森林管理、植林や再植林などを含む)を実施する場合には、決議Ⅶ.10、Ⅶ.16、Ⅷ.9のほか、UNFCCC第4条1項と京都議定書第2条1項を適宜考慮し、適切な場合には戦略的な、またはその他の形式の環境影響評価書とリスク評価を用いて、条約などを実施することにより湿地の生態学的特徴が深刻な被害を受けないように、あらゆる努力を払うよう強く要請する;
18.締約国その他の機関に対して、可能であれば、炭素の蓄積・隔離や海面上昇の影響の緩和に湿地が果たす役割について研究し、その結果を本条約に提供するよう奨励する;
19.締約国に対して、気候変動と湿地の関連性の問題に取り組むために、制度的能力と国レベルの関係諸機関の間の協力関係を構築、強化する必要性に特に注意を払うよう、また取組の進捗を、その成果と直面した難題の特定を含めて、COP9で報告するよう促す;
20.IPCCとUNFCCCに対して、今後の作業として地域別の湿地データに関する問題に焦点を当てた作業も行うよう、また気候変動に対する湿地の脆弱性に関する知識を高めるとともに、湿地への影響を予測する能力を向上させるよう促すとともに、STRPに対して、この作業に加わり、IPCC及び他の関連機関の作業を適宜利用して、国際的な議論の現状をCOP9で報告するよう要請する;
21.持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)の採択した「実施計画」において、気候変動が湿地に与えうる悪影響を評価する技法や手法を改善してより広範に適用する必要性と、特にこうした影響を受けやすい諸国を適宜支援する必要性が認識されていることを歓迎し;
22.「WSSD実施計画」において、京都議定書をすでに批准した諸国が、まだ批准していない諸国に対して時宜にかなった批准を強く要請したことに留意し;
23.事務局長に対して、湿地と気候変動の関係に関する技術文書を、COP9の前に開かれるSTRP第2回会合での検討に間に合うように作成するよう、IPCCに対して速やかに要請するよう要請する。またSTRPに対して、IPCCの技術文書をもとに、湿地と気候変動に関する主要な問題を情報文書にまとめ、同委員会の定める検討プロセスを経て、COP9で検討できるようにするよう重ねて要請する。IPCCが湿地と気候変動の関係に関する技術文書を作成できない場合、締約国会議は、STRPに対して、IPCCの第3次評価報告書及びその他の権威ある最新情報をもとに、湿地と気候変動に関する主要な問題を情報文書にまとめるよう要請する。この情報文書は、常設委員会がSTRPの助言に基づいて指示する厳格なピアレビュープロセスを経て、COP9での検討に備えるものとする。
[和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]
[ PDF 24KB ] [ Top ] [ Back ] [ Prev ] [ Index ] [ Next ]