Swan  琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう第8回締約国会議

ラムサール条約

決議.18:侵入種と湿地

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「湿地:水、生命及び文化」
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第8回締約国会議
バレンシア,スペイン,2002年11月18-26日


決議.18

侵入種と湿地

1.侵略的になった外来種が世界各地で湿地の生態学的特徴と湿地生物種に大きな脅威を与え続けており、このような外来種の侵入が社会的、経済的に大きな損害と損失を招きうることを認識し

2.地球の気候変動の影響のひとつとして、外来種の新たな地域への侵入が起こると予測されていること、また、かつて害のない種とみなされていたものも侵略的になりうることを同じく認識し

3.侵入種の問題への対策を講じることに言及した「賢明な利用の概念実施のための追加手引き」に関する決議5.6、ならびに締約国に対して、次のような目的のために、すなわち管轄内における侵入種を特定、根絶、防除すること、環境上危険な新しい外来種の管轄内への、または管轄内での移入及び移動または取引を防ぐため法令と計画を見直し、必要ならば採択すること、外来種と侵入種を特定する能力を育成すること、それらの種に対する認識を高めること、最良の実践例に関するものを含め、情報や経験を共有することの各目的のために措置を講じるよう強く要請した決議.14を想起し

4.締約国が国際的に重要な湿地を指定するために作成したラムサール条約湿地情報票には、条約湿地における侵入外来種の存在、脅威、管理策に関する情報がほとんど記載されておらず、しかも多くの場合、その情報が古いことを憂慮し、また締約国が、各ラムサール条約湿地について少なくとも6年ごとに情報票を最新化して提出することを決議したこと(決議.13)を想起し

5.「ラムサール条約湿地及びその他の湿地に係る管理計画策定のための新ガイドライン」(決議.14)及び、「生物多様性条約(CBD)において採択された『環境影響評価の法制度・プロセス及び戦略的環境影響評価に生物多様性関連事項を組む込むためのガイドライン』及びそのラムサール条約との関係」(決議.9)など、今回の締約国会議で採択された手引きが、侵入外来種の認識、予防、根絶及び防除に重要な関連性を持っていることに留意し

6.決議.14において締約国は、科学技術検討委員会(STRP)に対し、CBDの科学技術助言補助機関(SBSTTA)、世界侵入種計画(GISP)及び国際的な条約の下で設置された他の計画と協力して、湿地と湿地生物種を脅かす可能性のある外来種を特定し、行動の優先順位を定め、管理するための湿地用ガイドラインを作成するよう指示したことを想起し

7.第6回SBSTTA会合(2001年3月)において、CBD第8条(h)と同条約第5回締約国会議(COP5)の侵入種に関する決定/8に基づく手引きについて、広範にわたる検討が行われたときに、STRPが助言や情報を提供したことを認識し

8.2002−2006年第3次CBD・ラムサール条約共同作業計画には、水生侵入種(aquatic invasive species)に関する情報と手引きをより利用しやすくすることを目的とした、世界侵入種計画(GISP)、国際自然保護連合(IUCN)、世界保全モニタリングセンター(UNEP−WCMC)との共同行動や、内陸水における侵入外来種の評価といったさらなる作業の展開も含まれていることを同じく認識し

9.CBDGISP、IUCNは、戦略を策定し、法律を見直し、侵入外来種のさまざまな側面に取り組むためのケーススタディを含むツールキットを用意してきたこと、そしてこれらもまた、締約国が湿地の侵入種の問題に取り組むうえで貴重な手引きと助けになることを認識し

10.GISPが、国及び地域の規模で利用できる評価、援助、ツールを重視し、水生侵入種を中心とした詳しい情報の提供も盛り込んださらなる作業計画を、ラムサール条約事務局、CBD、IUCNその他の関連組織と協力して策定していることに留意し

11.アフリカの湿地侵入種に関する広報普及啓発プロジェクトを開始して、優良実践例と経験に関する情報と助言を湿地管理者に広く伝えるにあたり、ラムサール条約事務局がIUCNや世界遺産センターなどと協力して行った作業を歓迎し

締約国会議は、

12.締約国に対して、他の条約の下で採択された関連ガイドラインや基本原則を初めとして、さまざまな機関やプロセスで策定されたツールや手引きを適宜利用し、侵入種が湿地生態系内で引き起こす問題に徹底的かつ総合的な方法で対処するよう強く要請する

13.締約国に対して、これらの問題に取り組むための適切なツールと手引きの開発に今後も全面的に参加、貢献するよう奨励する

14.ラムサール条約事務局に対して、侵入種の問題を扱っている他の機関やプロセス、特に湿地生態系と直接に関連のあるものと引きつづきできるだけ密接に協力するよう指示する

15.締約国に対して、地球の気候変動の影響によって生態系に起こりうる変化を考慮しつつ、ラムサール条約の「湿地リスク評価の枠組み」(決議.10)に示された手引きを用いて、湿地の生態学的特徴を脅かす可能性のある外来種について、リスク評価を行うよう強く要請する

16.締約国に対して、領域内の条約湿地その他の湿地における侵入外来種の存在、それがこれらの湿地の生態学的特徴に与える脅威(各湿地内に現在は存在しない侵入外来種が侵入するリスクも含める)、その予防、根絶及び防除のために実施されている行動または計画されている行動を特定するように、また、条約湿地についてはこの情報を、ラムサール条約第3条2項に沿って、ラムサール条約湿地データベースに収載すべく、直ちに条約事務局に報告するように強く要請する

17.ラムサール条約事務局に対して、2002−2006年CBD・ラムサール条約共同作業計画の実施を支援するため、締約国から提供された情報をCBDその他にも利用できるようにするよう要請する

18.多くの水生侵入種は、内陸水の種でも沿岸や海洋の種でも、湿地生態系全体、河川流域、沿岸域及び海洋域に、急速にまた繰り返し広まるので、1か所で根絶したとしても、それがそれ以上の侵入防止に有効であるとは必ずしも言えないことを認識し、複数の国にまたがる湿地、河川系、沿岸域及び海洋域を有するすべての締約国に対して、「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第9巻)を用いて、侵入種の予防、複数の国にまたがる湿地での早期警戒、根絶及び防除の面で全面的に協力するよう強く要請する

19.締約国に対して、侵入外来種に対する国の戦略や対応策を策定して実施する際には、外来種の陸域での侵入が、地下水位の低下、水流パターンの変更などを引き起こして、湿地の生態学的特徴を脅かしそれに影響を及ぼしうることを認識するよう、そしてそのような侵入を防ぐための適切な措置を確実に講じるよう強く要請する

20.締約国に対して、河川の流域と流域の間で水を移動させるときには、事前に、侵入種によって生じうる環境影響を慎重に調査するよう強く要請する

21.すべての締約国に対して、侵入外来種の脅威に対して国の政策や戦略、管理策を策定して実施する際には、CBD、砂漠化対処条約(CCD)、ユネスコの人と生物圏(MAB)プログラム、国際海事機関(IMO)その他の各国における担当窓口と緊密に協力すること、及び「湿地の保全と賢明な利用を促進するための法制度の見直しに関するガイドライン」(ラムサールハンドブック第3巻)と「国家湿地政策の策定と実施のためのガイドライン」(ラムサールハンドブック第2巻)を用いて、侵入外来種の予防、根絶及び防除が各国の法律や各国の湿地や生物多様性に関する政策、戦略及び行動計画に確実かつ全面的に組み込まれるようにするよう同じく強く要請する

22.ラムサール条約事務局に対して、内陸水(島嶼も含む)に及ぼす侵入種の影響の評価に関する検討において、ラムサール条約が生物多様性条約に対して貢献する方法と手段をCBD及びGISPの事務局とともに模索し、その検討結果を締約国と湿地管理者に利用できるようにするよう要請する

23.ラムサール条約事務局に対して、IUCN、世界遺産センター、ユネスコのMABと協力して、アフリカの湿地侵入種に関する広報普及啓発プロジェクトの策定と実施を湿地管理者のためにさらに進めること、そこで得られる情報と啓発の成果を広く普及させること、また他のラムサール地域でも同様のプロジェクトを策定するよう検討することを奨励し、締約国と援助機関に対してこのようなプロジェクトへの資源提供を検討するよう奨励する

24.GISP、IUCNその他に対して、湿地に影響を及ぼす侵入種及び潜在的な侵入種の特定、分布、管理についてインターネットによる情報提供源の開発を進めること、またこれを広く締約国や湿地管理者に利用できるようにし、それにより侵入種の早期検出、根絶及び防除の面で締約国や湿地管理者を支援することを同じく奨励する


ラムサール条約第8回締約国会議の記録 [和訳:『ラムサール条約第8回締約国会議の記録』(環境省 2004)より了解を得て再録,2005年,琵琶湖ラムサール研究会.]
[レイアウト:条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページに従う.]

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