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次の日、早々インドネシア人友人に同行してもらい再度そのスーパーへ訪れた。 一応、その友人にも見てもらい、購入する価値があるかどうか判断してもらいたかったからだ。
彼は車を見て、ボンネットを手の平で叩きながら「いいんじゃない、バグース、バグース!」。まだエンジンもかけてないのにバグースはないだろう。 しかし、僕はその時、早く購入したいという気持ちが先走っていたので、彼のバグースの一言で決断してしまった。
書類手続きを済ませ、数日後やっと自分のものとなり、電球の交換等、細かい所を修理する為、整備工場へ持っていった。この整備工場を知った事が後々役に立つ事となる。
さて、ウブドの家具屋さんにもう一度行きたいと思っていた僕は、早速、購入したジープで向かった。購入三日目の事である。快適にドライブし、帰路につくあたりから、エンジン部分と座席の下あたりから変な音が聞こえるようになった。
暫くするとその音は非常にうるさくなり、通行人も立ち止まって車をしげしげと眺めている。こりゃだいぶヤバイな、早く整備工場へ持っていかなければ。通行人の目を無視しつつ急いでいると、ついに大音響とともに全く動かなくなってしまった。整備工場まであと5kmを残して。
こういう時は携帯電話が活躍する。しかし僕の語学力は活躍しない。近所の屋台でミゴレン(ヤキソバ)を食べていたタクシーの運転手さんにお願いし、整備工場へ携帯で事情を説明してもらった。整備工場の電話番号を持ってて良かった。待つ事小一時間。
レッカー車の到着だ。レッカー車に同乗し、整備工場へ向かう。いったいいくら修理費がかかるのだろうか。僕の落胆とは裏腹に夕焼が燃えるように美しい。こんなに眩しく感じる夕日は見たことがない。なぜか頭の中では「ルパン三世」のエンディングテーマがこだましていた。---あしーもとにー♪、からみーつくー-----------♪

翌日インターネットで日本の整備工場を検索してみた。するとたくさん整備工場の案内が出てくる。そのうちの一つに電話して相談に乗ってもらった。 「わざわざインドネシアからかね。まぁ見てないから何ともいえないが、その感じだとシリンダー、ピストンは全部換えるようになるな。そうなったら修理代も高くつくからいっそのことエンジン乗せ換えた方がはえぇんじゃねえかな。」
『そっそんなぁ…。』
この親切な整備士の方のアドヴァイスがあったお陰で、バリ島の整備工場からシリンダー、ピストンを全部取り替える事を告げられたときは慌てずに済んだ。
修理費は高くついたが、日本や香港での修理費と比較すれば格段に安いだろう。古い車が多く走っているバリ島では修理する技術は優れているのではなかろうか。この修理工場のマネージャーのバリ人は仕事熱心な誠意のある人で、極力お金をかけずに修理する事を心がけているのが伝わってくる。
さらに車がなくて困っている僕を見て、修理中は無償で代替の車を貸してくれるという。それに対してはご好意に甘える事はしなかった。 僕に車を売ったあのスーパーのお兄ちゃんはトラブルを知っていたのだろうか。しかし何故か彼にに対しては不思議と腹が立たない。そもそも自分で納得して購入したのだから文句は言えない。毎日いろんな人と出会い、感激と落胆、信頼と懐疑の連続だ、ここバリ島では。
これをきっかけに修理工場のマネージャーと車を通じお付き合いするようになる。彼の誠実さは今も変らない。
その後、エンジンは絶好調。バリ島の悪路をものともせず、活躍してくれている。細かいトラブルは相変わらずあるものの、僕にとっては充分の乗り物だ。 面白いトラブルとしては、クラクションが鳴り止まなくなった事だ。近所の犬がみんな出てきて、車に向かって吠え続けていた。また、エンジンが止まらなくなった事も。エンジンがかからない事は聞いた事があるが、キーを抜いても止まらない。その時はしょうがないからローで急激にクラッチをつなぎ、強制的にエンストをおこして止めた。
まぁ19年前の車で25万kmも走っているのだからいろんなトラブルが起こるのはしょうがない。 一年経った今も元気に走り続けている。
(1999.3.17)
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