ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第16話 南国の雨 BackNext

ドッカーン!!という落雷の大音響とともに飛び起きる。夜中の二時。夕方から降り続いている雨は一向に止む気配がなく、ますます激しさを増していく。 すごいな南国の雨は。天井裏へポタン、ポタンと水が漏れている音の間隔が段々と狭まっていく。ヤバイな、このままだと雨漏れするな、と思うやいなやベットの上にしずくが滴り落ちる。まずは電気を点けよう。あれ?停電だ。 以前キャンプ用に購入した頭に取り付ける懐中電灯を取り出し、バケツを探す。これだったら両手が使えて便利だ。しかし雨漏れはベットの上だけでなく家中で始まりつつあった。取り敢えずバケツやタッパ類をできる限り用意し滴る下へ置いていく。 そしてコンピューター関連の機器は箪笥にしまったり、ビニールカバーをかけたりと大忙しだ。大家さんが心配して夜中なのに豪雨の中、来てくれた。雷が僕の家に落ちたかと思ったらしい。娘の事も心配してくれている。しかし、大丈夫。 娘は近所に落雷があっても眠りから覚めない。それから程なくし、雨足は弱まり、ベットの上のバケツをうまく避けながら再び眠りに入った。

の朝、大家さんが落雷の場所を教えてくれた。隣の家の地上10mほどの貯水槽に落ち、貯水槽の瓦の屋根が粉砕されていた。僕たちの寝室からほんの10m先だ。 その粉砕された破片が我が家の屋根を直撃し、屋根を壊していた。そこから雨が入ったようである。
バリ島の雨はしとしとと降り続く事はあまりなく、短時間に一気に降り注ぐ。南国特有のスコールだ。大粒の雨が地面を叩きはじめると埃が舞い上がり、雨と混じって何とも言えないいい匂いがする。この匂いが僕は大好きだ。 バリ島で何十年かぶりにこの匂いを感じて、小学生の頃の運動場を思い出す。

リ島の空は不思議だ。雨季になると一つの空なのに違った天気が同居する。頭の真上は晴天だが北の方は豪雨で南は曇り、そして西は夕焼がきれいだったりする。
バリ人の交通手段はバイクが主だ。彼らは豪雨が近づいてくるのを察すると予めポンチョを被り雨に備えるか、大きな木の陰などの雨宿りするところを見つけては、そこで居合わせた人と雑談しながら雨が過ぎ去るのを待つ。 このように自然現象には逆らわず、ただ待つという姿勢が何ともバリ島らしくて好きだ。僕は何故だか雨の中、雨の音を聴きながら運転するのが以前から好きだが、バリ島での運転は緊張を要する。路面の凹凸が見えなくなりワイパーを早くしても良く見えない。 さらに車が古いせいかブレーキドラム内に水がすぐに入り、ブレーキの効き目が非常に悪くなる。加えてボンネットとフロントガラスの間から雨漏りが激しく、膝下はびしょ濡れだ。よって外出する時はいつも短パンだ。 意外と知られていない事だが、バリ島には台風は来ない。フィリピン近海で生まれた台風は全て北上する。よって、暴風雨を伴う豪雨は極めてバリ島では希である。だから伝統的なバリ島の建築では一階の3方が壁がなくても大丈夫なのだろうか。

港は亜熱帯気候で、夏のシーズンは台風は日常茶飯事だ。台風が近づくとそのレベルをTVで常に表示し、最も強い勢力を示すシグナル8になると、すべての商業施設は政府の指導によりクローズし、従業員を帰宅させなければならない決まりがある。 こんな時に観光に来た人はたまらない。レストランもクローズで、食を楽しみに香港に来た人にとっては本当に気の毒だ。僕は香港駐在員だった頃のある日、このシグナル8が昼間発令し、やったぁ帰れる!と喜んだ時、同僚の香港人女性はこれで売り上げが落ち込む事を危惧していた。 彼女に同情してしまった。こんな日本人と働かなければならないとは。
今は5月、バリ島はすっかり乾期に入って日差しが強い、を通り越して痛く感じるこの頃である。 これからの乾期は僕の仕事が一つ増える。庭の水撒きだ。家内は香港でマンション暮らしだったせいか、バリ島で南国の花や植物を庭で栽培できる事がとても嬉しいらしい。いつも庭をいじっては娘と一緒に花が咲くのを心待ちにしている。

(1999.5.12)



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