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バリ島は一年中夏、夏、夏だ。日本のように季節の節目が無いので、カレンダーを見て、もうこんなに経ってしまったのかと驚く。 バリの人たちにとっては、いろんな行事やお祭りが定期的にあるので、そこで時の流れを感じる事ができる。しかし我々のような外国人にとっては着る服とかによって季節の流れを感じるものだが、バリ島では着る物が一年中同じだ。
楽と言えば楽だが、お洒落を楽しみたい女性は少し物足りないかもしれない。コートやブーツ、ストールなどは身に付けたくても付けられない。ドライクリーニングなどが必要な衣類など、そもそも売っていなく、皆、水洗いできる物ばかりだ。
よって多くのバリ島在留日本人も徐々にお洒落に無頓着になってくる。
先日、いつもお世話になっている現地の人と結婚した日本人女性と会った時、化粧をしていたので別人のようだと驚いた。それまで何回も顔を合わせていたのだが、化粧顔は初めてだった。
「どうしたの?今日は化粧なんかして」
「なに言ってんの、私だって化粧ぐらいするのよ。いつもはあんな格好してるけど(バティックのタンクトップに短パン、サンダル)日本にいた頃は、お洒落にうるさかったのよ、こう見えても」
「バリ島にいるとみんなお洒落とか対外的な事は気にしなくなるね。そのかわり創作活動とか内面的な事柄に目を向けるようになるからおもしろいよ。」
高級スーパーマーケットにたまに行くと、お洒落をしているインドネシアン華僑の女性を目にする事が多い。身に付けているバッグもブランド物であったりする。日本人と同じ東洋系の肌の色、顔つきだが、化粧の仕方が違うのですぐに見分けがついてしまう。
お洒落に関しては僕も人のことは言えたもんではない。香港にいた頃は近所に外出する際、少なくともジェルで頭を固めて、服は着て行った。しかし、バリ島での生活に慣れてくると、近所までの買い物は上半身裸で行ったりしてしまうし(ちなみに売る方も裸だ)、ヘアースタイルも全く気にせず、おそまつ君みたいな髪型で出かけてしまう(さすがに裸足では外出しないが)。
移住して少し経った頃、家内がパーマをかけたくなり、バリ人の友人に尋ね、デンパサールの美容院を紹介してもらった。そこは現地のレベルからすると金額的には中の上といったところで、15椅子ほどある規模としては大きな所だ。
ここの華僑の女性主人は気さくな人柄で、多くの固定客をつかんでいる。その為、土日はすごい混雑だ。美容の技術は日本と比べればはるかに落ちるようだが、しかし値段的な部分と(カット、パーマで約1500円)、ここの女性主人の人柄が良いので家内は気に入っているようだ。
ほどなくして僕もそこの固定客となった。
香港では上海バーバーという、中国人の経営する床屋が僕のお気に入りだった。カットは丁寧すぎて、新入社員のような髪型にされてしまうが、そこの顔剃りが痛気持ちよく、値段も1500円くらいで安かったので毎月通っていた。
さて、そのデンパサールの美容院へいつものようにカットをお願いに行くと、朝早すぎたせいかまだ髪をカットする人が来ていない。待たせてもらおうとソファに座ると、「マッサージは如何?」とスタッフが聞いてくる。なに?マッサージ?見渡してもマッサージするようなベッドも置いていないが…。
マッサージと言っても全身ではなく、いろんな部所によって細かく分かれており、それぞれ料金も違うらしい。僕は頭のマッサージ(クリームバス)と上半身のマッサージを受ける事にした。こういう時はいつも綺麗なお姉さんに施術してもらう事を願い、有り得ない過剰サービスを期待してしまったりする。
しかし夢はすぐに破れた。現れたのは二の腕が僕より太いボディビュルターのような女性だ。
普通の美容用の椅子に座らされ、まず、頭のマッサージからスタートだ。僕はストロングが好きかと聞かれたので、とりあえずミディアムで、と答えたのだが、体格の良いバリ人のお姉さんはすごい力で頭を揉みほぐす。最初は痛かったが、そのうちそれが快感に変わってくる。
次に上半身裸になれという。ここで?別に恥ずかしくはないが、僕の椅子の横のソファーには5人程の従業員が暇をもてあまし、じーっとさっきから僕がマッサージされるのを見ている。なんか実験台になっているようで居心地が悪い。この背中、腕、胸のマッサージはオイルを使ってするのだが、かつて経験した押す、揉むマッサージとは違い、揉みながら流れるように両手が移動する。
3,4本の手で施術されているような感覚に陥る。頭も気持ち良かったが、この上半身のマッサージは初めての経験ですっかり気に入ってしまった。
最後は熱いタオルで拭いてもらい、頭に付いたクリームを流してお終いだ。たっぷり45分施術してもらい、体がふにゃふにゃになったまま今度はカット、シャンプーをし、料金は全部で750円程。
それ以来、カットに行く度にマッサージも依頼するようになってしまった。
バリ島のSPAは、今やそれを目的で来る人がいるほど有名だ。 バリ島でマッサージの気持ち良さを知ってしまった僕は、いつかは素晴らしい環境の贅沢なSPAを試そうと心に誓うのであった。
(1999.5.27)
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