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初めてバリ島へ訪れたとき、ホテルの庭の広さと美しさに驚いた。 その庭には椰子を始めとした草木が丁寧に手入れされ、南国独特の花が咲き乱れている。
普段、花になんか興味の無い僕でさえそれらの雰囲気に惹かれて、ついつい散歩したくなってしまう。 庭にたたずんでいるだけでも心が落ち着いてくるようだ。大手のホテルになると庭師だけでも相当な人数がいるに違いない。
そうでないと、このようにいつも芝生が綺麗に刈り取られて、落葉がない状態を保てるはずが無い。 しかし、この美しさに比べ、我が家の庭はホテルのそれの何十いや何百分の一の広さにもかかわらず……
引越しした当初、庭には果物では椰子、マンゴ、パパイヤ(マンゴやパパイヤの木と分かったのは相当経ってから)、が既にあり、数種類の花も既に大家さんが植えて下さっていた。
庭で生った果物は自由に食べていいという。やったぜ!フルーツ好きの僕にはたまらない。それまでの香港生活の9年間、僕たち夫婦はマンションに住んでいた。
僕が香港で独立した時、家内と香港島の一戸建てが集まる高級住宅街の界隈をドライブし、いつかはきっと庭のある家に住もう!と夢を語り合ったものだ。
しかし、それがバリ島で実現するとは、人生はどこでどうなるかわからない。一戸建てを買うとなると香港では軽く億単位だ。 賃貸の場合、香港とは逆で、バリ島では一戸建ての方が、ホテル系マンションより遥かに安いのである。
さて、大家さんは庭の手入れは僕たち家族でするかどうか尋ねてきた。 僕たちは好きなように庭をいじりたかったので、迷わず、好きなようにいじらせてくれと、逆にこちらからお願いした。
しかし、こんなに庭の手入れが大変だったとは………
まずは水撒きだ。丁度、乾季の始まる頃に移り住んだので、水は毎日欠かさず与える必要がある。 まして新しく植えた芝や花などがあるのでなおさらだ。そもそもこういう“手入れ”が苦手な僕は手抜きをして、おざなりに水撒きをしていた。
しかしそれでも20分は水撒きにかかってしまう。すると植物は正直だ。すぐに枯れ始めた。 やばい。自分が買ってきた植木や花ならまだしも、大家さんの好意で頂戴したものばかりだから、枯らすわけには行かない。
それ以来一日一回の水撒きを二回に増やした。
家内は、以前よりやりたかったという家庭菜園にトライした。 早速どこからか種を仕入れてきて、チリやカボチャを植え始める。種を植えることなど、小学校の理科の授業以来したことないのではなかろうか。
カボチャの成長は早い。あっという間に場所が足りなくなり、別の場所(3m四方ほど)へ植え替える。 大きい葉が生茂り、実がなる事を楽しみにしていたところ、急に虫が大発生し荒らされてしまった。
残念だけどカボチャを採る事は夢に終わった。チリの方は何とか実も生り、料理に使うまでになった。 家内は家庭菜園は虫の大発生で懲りて、今では花の栽培の方へ力を注いでいる。
さて、今度は雨季に入ると水撒きの必要がないので喜んでいたら、考えが甘かった。 雨季になると草木の成長のスピードが乾季とまったく違う。それとともに雑草の繁殖もすごい。
芝生に幾重にも重なって見たこと無いような雑草が生茂り、自分たちが植えた芝がやられてしまうようだ。 この雑草抜きは家族3人で毎日徐々にしていても、やっと抜き終わった頃には最初に抜き始めた場所からすでにぴょんぴょん生え始めている。
いたちごっこだ。今さら大家さんたちに庭の手入れをお願いしますとも言えないし…
ある日、家族で2週間ほどバリ島を離れて戻って来るとビックリ! 庭に雑草も無く、芝生がきれいに刈り取られ、まるでホテルの庭のように様変わりしている。
そのきれいさに驚くとともに、大家さんからの無言の“庭はいつもこのように手入れしておくんだよ”という忠告が聞こえてくるようでちょっと恥ずかしかった。
(1999.9.5)
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