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デンパサールの郵便局から一通の知らせが届く。
「荷物が届いているので引き取りに来るように」・・・なんだろう?
いつも親兄弟に日本から送ってもらう際には、バリ島へではなく香港へ送ってもらうようにしている。 主に娘の教材、衣類や日本の乾物類、そしてお楽しみの日本のTV番組の録画などなど。
インドネシアの郵便局は大きい荷物だと中身を検査し、関税を要求することも多く、ビデオなども黙って勝手に「検査」という名目で抜かれてしまうこともあるらしい。
要求すればもちろん返してくれるようだが、送ってもらった明細を予め送り主から知らせてもらっていないと、何が抜き取られたかわからなくなってしまう。
そういう話を聞いていたため、極力日本からの荷物は香港へ送ってもらい、そこから手運びで入れるようにしていた。
郵便局へ向かう途中、そういえば日本でお世話になっている読書好きの方から、もう読まない本を送って下さると言われていたことを思い出した。 本は重いので香港からのハンドキャリーも大変だし、すぐに読みたかったので、送って下さることに恐縮しつつもずうずうしくバリ島へ郵送を依頼したのだった。
さて、郵便局へ到着し、荷物引き取りの場所へ行く。そこに居るスタッフは郵便局の一般職員が着ている制服ではなく、政府の職員が着るようなベージュの上下の制服を着用している。
年齢もやや高そうで、ちょっと偉い感じがする。バリ人の動作がゆっくりしている事は有名だが(車の運転以外)ここの職員は特にのんびりしているようだ。皆、新聞を読んだり、雑談したり…・僕は用件を告げると中へ通された。
「日本からあなたへ本(30冊ほど)が届いています。これは販売目的で輸入したものですか?」
「いえ、違います。知人が読み終わった本を送ってくれただけです。ですから、個人的なものです(ですから関税はかけないでね!)」
「(おもむろに分厚い関税一覧表を取り出し)個人的なものでもここでは関税がかかります。ここに記されているように10%の税金がかかります。」
「しかし、これは新書ではなく古本となりますが、どのように関税を計算するのでしょうか?」
どのように計算したか知らないが彼が提示した金額は正規価格の10%よりも低かった。しかしそれでも僕にとっては大きい額だ。
「もう少し、安くなりませんか?(こんなところでも値切ることが当たり前になっている自分が怖い)」
「(笑いながら)ちょっと上司に相談してみないと…・」
「じゃぁ、これで勘弁してください。」と、すかさず提示価格よりかなり低い金額を財布から取り出し、机の上に置いた。 彼は素早くそれを机の引き出しに保管した。
バリ島在住の日本人の友人に話すと、本でなんかは関税は普通は取られないと言う。そうかもしれないな、今回のは授業料だ。 この国ともこれからずっと付き合っていく中で、なにかとお役所にお世話になる事もあるだろう。良好な関係を保っておきたい。
郵便局職員の人は、決して高圧的ではなく、何年住んでる? バリで何してる?と関税とはまったく関係ない話をしながらフレンドリーだ。 お役所の人でも笑顔があるので、なぜかホッとしてしまう。
先日、ディスカウントストアの「マクロ」でレジを通過した際、よそ行きの麻のパンツを何かに引っかけて引き裂いてしまった。 下着のパンツまで見えるありさまだ。レジに並んでいる客や、そこのスタッフも大受けしてくれ、思わぬところで笑いを振りまいてしまった。
皆で笑ってくれるところがバリ人の良いところで、お陰で僕も「まいったな」とか言って頭を掻きながらその場を取り繕うことができた。 これが今の日本だったらどうだろう。きっと皆、笑っては失礼と思い、気の毒と思いつつも無関心を装うのではないだろうか。
特に都会では。無関心は怖い…・こんな時は笑ってもらうことによって居場所ができるものだ。
バリ人は子供から大人まで、一般の人からお役人までよく笑う。またその笑いも非常に単純で子供っぽいことが多いようで、すこぶる僕には居心地が良い。
空港の待合室に僕一人で時間をつぶしていた時のこと。高い場所を清掃するために若いバリ人のお兄さんが梯子に登っていた。 すると彼は突然、梯子にぶらさがり猿の真似を始めた。同僚に大受けし、傍にいた僕も突然のパフォーマンスに笑ってしまった。
いいなぁこういうのって。なんだか彼らに余裕を感じてしまう。
そんなことを思いつつ、香港行のガルーダに乗り込んだ。
(1999.12.24)
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