|


バリ島では、凶悪犯罪の発生率は、他のアジア諸国と比べ、比較的少ない方ではないだろうか。
しかし軽犯罪の「ひったくり」「置き引き」「空き巣」などの被害件数は年々上昇傾向にあるようだ。
僕はそういった被害に香港在住当時から無縁だったが、先日、車に置いてあったバッグを盗まれた。銀行に所用で入った隙(5分くらいの間)に、その銀行前の路上に停めてあった車の助手席側の鍵を壊され、バッグを盗まれた。その中には携帯電話(買ってまだ3日)、デジカメ、仕事の資料・・・・とほほ。
仕事資料を盗られたのは、ちと痛かった。
僕の友人(日本人女性)も同様な手口でマクロ(というディスカウントストア)の駐車場で被害に遭ってしまった。警備員がいる駐車場でも安心はできない。
日本では「ピッキング」と呼ばれる、外国人による組織的な空き巣が増えているという。同様にバリ島でも、バリ人の家や長期滞在外国人の家への空き巣が増えているそうだ。
日本で空き巣に狙われるものといったら、現金、貴金属、通帳(印鑑)などだが、ここバリ島では、現金以外は、転売のきき易い「物」が狙われる。バイク、TV、ステレオコンポ、コンピューターなどなど。
僕の周りを見まわしても、空き巣の被害に遭った友人が結構いる。
物を取られるだけならいいのだが、怖いのは深夜の忍び込みだ。友人(インドネシア人)も、深夜、家に入りこんだ泥棒と格闘し、大怪我を負ってしまった。(結局その泥棒も捕まらずじまいだ)
そして先日、僕の隣の家にも、深夜に二人組の賊が入った。
最初に気がついたのは僕のカミさんだ。深夜、さかんに我が家の二匹の犬が吠え立てるので、カミさんは何かあったと思い庭に出た(僕はその時なにも気づかず熟睡中)。その時、二人組の男が走って逃げるのを目撃したんだ。隣の家の被害は大したことはなかったようだが、夜中に人が忍び込むなど気持ちが悪い。
そんなことがあって、我が家も戸締りを厳重にするため、二階の窓に鉄格子を付けたり、ドアを頑丈なものに付け替えたりと、自衛手段をとった。
***
こういったことが僕の住む村で立て続けに二件発生したこともあり、村では当番制で、深夜警備することになった。「ミッドナイトパトロール」だ。
一班10人、二週間に一度、当番がまわってくる。時間は深夜11時から翌朝4時まで。
これは結構きついな。しかし、村で決まったことだ。僕も参加せねばならない。
僕の班の面々は、大学で教鞭をとっている人、ODA関連の職員、日本にサツマイモを輸出している人、そして警察官などなど。ユニークなインドネシア人が揃っている。
深夜11時に村の集会所に集まり、まず、皆で村をゆっくりと一周する。10分くらいで一周し終わったら、今度は集会所で井戸端会議だ。おしゃべりで時間をつぶし、また一時間ほどたったら村を一周。4時まではまだまだ遠いと思っていたら、2時くらいに班のリーダー格の人が、「もう今日は眠たいからこれでお終いにしよう」だって。
えっもう終わっていいの?と思ったが、皆も眠たそうでパトロールどころではなさそうだ。結局それ以来、僕らの班に限らずパトロールは深夜2時に終わる様になった。早朝4時まででは、朝早くから仕事のある人はつらい。
***
しかし、僕の班も回を重ねるにつれ、皆、このパトロールに飽きてきた様子で、一人減り、二人減り、ある時などはついに僕一人だけになった。
その時は僕も帰ってしまおうかと思ったが、夜風が気持ちよく、星も綺麗だったので、一人でゆっくりと村をパトロールした。
村の数カ所には、竹でできた小さな「小屋」があり、普段、村人の休息場所として使われている。パトロールの途中、そこに寝転がって空を見上げると満天の星空だ。
静寂のなか、星たちを見つめていると、いつのまにか、過ぎ去ったバリ島生活の4年間の様々なシーンが浮かんでくる。住む家も決まってないまま家族3人で香港を飛び出したこと、娘の学校を探したこと・・・・
後ろを振り返らず、ただ前だけを見つめて歩いてきたことが、ついこの間の出来事のようでもあり、またずっと昔の事だったようにも思える。
僕は一体どこに向かっているのだろうか。どこに向かおうとしているのだろうか。そんなことを考えていたら、「現実」と「夢」との領域があやふやになっていき、いつのまにか、星空の下で静かに寝入ってしまった。
(2002.7.9)
|

Back|Next
|
格安国際電話

インドネシアまで20円/分
ジャカルタなら11円/分
|