ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第50話 バイク買おうかな。B BackNext

イク購入一週間後、ナンバープレートとバイク登録証(5年間有効)をゲットした。これでやっと公道で運転できる。僕は早速バイクの性能をチェックするべく、購入時に粗品としてもらったSUZUKIロゴ入りヘルメットをかぶり、バリ島で唯一スピードの出せるバイパス道に向かった。
時速80kmくらいで走っても、振動も思ったほど感じなく、非常に安定している。
(しかし100km近くになると、道の品質の悪さも手伝ってちょっと怖いが)
急加速、急ブレーキ、エンジンブレーキ、コーナーリングなど一通りチェックを済ませ、自分の”足”として馴染んだのを確認し、自宅へ戻った。

て、次はカミさんにバイクの運転方法を教えなければならない。カミさんも初めての練習とのことで気合が入っているは分かるのだか、その格好はないだろう。笑ってしまった。
気温が30度を超えているにもかかわらず、インディゴデニムの虎柄のGジャンにデニムのパンツを穿いている。非常に暑苦しそうだ。さらに、不釣合いなほど大きなヘルメットのせいで、シルエットがまるで宇宙服のようだ。

「だって、もし転んだら痛いじゃない。」

いつの間にか、近所の奥さんやお手伝いさんが集まってきて、ニコニコしながら僕たちのことを眺めている。

まぁいいか、始めよう。
「ここがアクセルで回せばスピードが出る。そしてこことここがブレーキだ。
最初はギアは考えなくていいから、まずはローで動かしてみな。」

と僕はまず自分で運転してみせて、カミさんに替わった。おっかなびっくりにバイクにまたがったはいいが、ちょっと足元がおぼつか無い。やっと足が地に着いている感じだ。

緊張の面持ちの中、いきなりアクセルを急に回した。あっ危ない!!

「キャー!!」

という叫び声と共に数メーター先で、ずってーん!!

「もう私いやだ!バイクなんか運転できない。足もちゃんと着かないから怖いよ!」

そんなこと今さら言ったって、しょうがないだろ。自転車のようにサドルの調節なんかできないんだから。
カミさんよりもずっと背の低い近所の悪ガキどもも、普段、平気で無免許で運転しているのに。しかしカミさんは両足がしっかりと地面に着かないと心配だそうだ。
怖がっているのに無理に運転させ、事故にでも遭ったらそれこそ大変だ。それ以上、僕は「Shogun」の運転は勧めなかった。

そもそもこのバイクは、カミさんの為に買ったものだが、そういう理由で本人が運転を怖がっているので、それからは僕の足として活躍することになった。

かしこれほど便利な乗り物だとは、乗り始めるまでは分からなかった。
駐車場の心配はいらないし、渋滞も関係無し、小道でもスイスイ。お蔭で一日の作業効率が格段とupした。もう止められない。
ただ、問題は事故だ。
バリ人の友人の中で、未だかつて(軽傷も含め)事故に遭った事の無い人を探す方が難しいくらいだ。それほど事故が多い。
事故現場に遭遇する度に、当事者が軽傷であることを祈るとともに、「明日は我が身か」とばかりに身を引き締める。
このバイクの「利便性」と「危険性」を秤にかけると、僕にとっては「利便性」が勝ってしまうんだ。
いつの間にか、朝、バイクにまたがった時に、「今日も無事故でありますように」という祈りが、自然に口をついて出るようになった。


イクの魅力として、もう一つ挙げれるのは、「爽快感」だろう。デンパサールを離れれば、車の数は激減する。
そういった中で、風を切って走るのがこんなにも快感だとは、新しい発見だった。バリ島には高層ビルが無い(法律で建造物の高さが規制されている)。そのため、空が非常に広く、というか大きく感じるんだ。
小高いところを走りながら遠く水平線を眺めると、幾重にも雲が遠くまで低く重なっている。僕はそういった雲が大好きで、走りながらそれを見る度に、遠い世界(時に日本、時に香港)に思いを馳せてしまう。

しかし夜の運転は、ちょっとばかり趣が異なる。
満天の星空の下でバイクを走らせるのは、さぞかし気持ちが良いことだろうと最初は思ってた。あまいぜ。
我が家に帰るには、数キロの田んぼ道を通ることになるのだが、昼間は道の両方に棚田が広がる美しい景色を楽しむ事ができ、夜は道路灯もなく真っ暗で、灯りは僕のバイクだけになる。
すると、そのバイクの灯りに目がけて無数の虫の大群が押寄せて来るんだ。僕のヘルメットは風防ガラスがないので、虫がダイレクトにぴしぴしと顔に当たる。
この感覚は、丁度、雪が降る中でのスキーに似ている。しかし、当たるものが雪ではなく、虫となるとちょっと・・・・

僕はバイクを走らせながら歌を口ずさんでいることが多いのだが、こんなに虫が多いと口も開けられない。しょうがないのでハミングで歌うことになる(誰も歌ってくれとは言っていないが)。
そして、息つぎの時に思いっきり鼻孔から吸い込んだら、掃除機の吸引口と化した僕の鼻穴に一匹の虫が飛び込んだ。
「やべぇ!」
と思った時は既に遅し。
(ごっくん)
生きたままお腹におさまってしまった。とほほ。

それ以来、息つぎの時には、真横に顔を振って息をするようになった。
(それじゃぁクロールじゃねぇか!泳ぐなよ)


も、買ってもらった真っ赤なフルフェイスのヘルメットにキティちゃんのステッカーなどを貼ったりして楽しんでいる。
多くの子供がそうのように、娘もバイクの後ろに乗るのが好きだ。ある夕暮れ時、娘と一緒にバイクに乗っていると、鮮やかな夕日に出会った。こういった夕日に出会うとなんだか得した気分になる。バイクを停め、ヘルメットを脱いで、しばしその沈む行く夕日の像を追っていた。
僕が幼少の頃、父は僕をバイクの後ろに乗せて、よく田んぼ道を走っていろんなところに連れて行ってくれた。それから30年経って、国は違えど今度は僕が父と同じことをしている。そう言えば、父のバイクもSUZUKIだった。僕はバイクの後ろに乗って感じる、父の背中が好きだった。ショートホープの香りが混ざったその匂いに、大人への憧れを感じていた。

ちょっと難しい質問かもしれないと思いつつ、娘に訊いてみた。

「パパの背中ってどんな感じがする?」
「・・・・・く、くさい・・・・」

どうやら質問は簡単すぎたようだ。

夕日が沈むに従い、空の色もピンクからオレンジ、パープル、と刻々と変化していく。あぁ今日も空が大きい・・

(2003.9.10)

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