ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第65話 コマンの憂鬱 BackNext

る日、注文しておいた商品がupしたとの連絡が工場からあり、早速検品に出向いた。 工場の倉庫には、いつも僕の相手をしてくれるコマンが、何だか元気なさそうに出迎えてくれた。
彼女はまだ20代中ごろのバリニーズだ。最近、初出産も無事に終え、仕事に復帰してきたんだ。 責任感もあり、ユーモアのセンスにも優れ、僕はいつも安心して仕事を任せている。
いつもなら笑顔で、お互いの近況などを話すのだが、そのときは、全く無口で、品物の数量確認を黙って始めた。どうしたんだろう。 俺は前回、何か彼女を怒らすようなことを言ったかな?とまず自分を振り返っても心当たりがない。 沈黙に絶えられなくなった僕は、昼食はもう食べたの? と当たり障りのない質問でその場の空気を破った。

「・・・もう3日間、何も食べてないの・・・」

消え入りそうな声で答えが返ってくる。どうなっちゃってんだ? 放心状態の彼女の顔をよく見ると、いつもの顔と違う。目が腫れぼったく蒼く、唇まで切れている。

「毎日、ハズバンドに殴られている・・もう離婚したい・・・」

ちょっちょっと待ってくれ、俺はこういうのは苦手だ。 バリの男っていうのは、優しいんじゃないのかよ。ガイドブックにはそう書いてあるぞ。

マンが結婚前、偶然、婚約者と歩いているときに僕は出会い、そのとき彼女は恥ずかしそうに、 またとても幸せそうに彼を紹介してくれたんだ。そんな記憶があるだけに、この言葉にはいささかショックを受けた。
理由はどうあれ、毎日、暴力を振るわれるのは尋常ではない。大家族を擁する嫁ぎ先で、彼女をサポート してくれる人はいないようだ。まずは実家のご両親、または兄弟に相談することから解決方法を探っていくべきと、外野の僕は思うのだが、こういった問題は、外からでは計り知れない夫婦間、家族間の問題をかかえている。
ただ、本人が離婚を希望しているのだから、さっさと離婚してしまえばいいと、全く責任の無い僕が、文字通り無責任な発言をすると。

「だけどやっぱり離婚はできない。息子(赤ん坊)とは離れられない・・・」

バリニーズどうしで結婚した場合、女性がまず親族から期待されるのは、男の子を出産することだ。 現在の日本で増えているような、子供を作らないカップルは、バリの常識ではまず考えられない。というか許されない。 家族の血を絶やさず、一族が末永く繁栄することを願うが故に、「男の子を産む」ことは女性の必須条件とされる。一昔前の日本と同じだな。

そういった背景があるだけに、女性が家を飛び出るのは勝手だが、大切な長男も一緒に出て行くことは言語道断だ。 日本のように家庭内暴力の相談所もなければ、離婚のために調停所を利用するようなことはない。 だからどうしても、バリの「しきたり」に従って、周囲が結論を下すことになる。いきおい、そうした結論は男女差、身分の差、などによって左右される。

リ島在住の友人(日本人独身女性)が、次のような興味深いことを言っいていたことを思い出した。

「私が、もし転生できたとして、”裕福なバリニーズ家庭の女の子” としてか、”貧乏な日本人家庭の女の子”として生まれることを選べと言われたら、私は貧乏でもいいから日本を選ぶな」

彼女は常日頃、バリニーズと生活を共にしているせいか、女性の自由度が日本のそれに比べ、限られていると感じているようだ。 確かにバリ島の村の「しきたり」に従って生活するには、時間的な制約も多く、「自由度」は小さくなるかもしれない。しかし、逆に村人として、助けや恩恵もそれだけ多く被ることもできる。 どういった人生を幸せと感じるかは、人それぞれの人生観によって様々だ。

マンとは、あれから一年後くらいに偶然、マタハリ百貨店で会った。 ハズバンドも子供も一緒で、皆、笑顔だ。 既に以前勤めていた工場を退社し、今は家族で小さい卸の会社を経営しているとのこと。 そうか、よかったね! 彼らの笑顔を見たら何だかこっちも元気が湧いてきた。

俺もがんばんぞー!!

(2005.9.16)

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