ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第68話 いざ!黄金の島、日本へB BackNext

本側から、マデを招聘することが決定したとの連絡が入るとすぐに、準備に取り掛かった。 マデは、イベント開催に必要な絵を描き始めた。モチーフや号数はM女史から依頼に従って、合計で20枚くらい出発までに描き上げる必要がある。 僕は、日本での宣伝用チラシに載せる為の、彼の製作風景の写真や、プロフィールを用意する。と同時に 日本の入国に際し、どういった書類が必要なのかを領事館に行って尋ね、皆で手分けして書類を揃えるようにした。この日本への入国ビザを得るのが、インドネシア人にとって、これほど手間のかかることだとは、初めて知ることになる。 弟の「なんちゃって男」は、まずはマデのパスポートの手配だ。観光会社に従事するだけあって、この辺のことは詳しく、通常よりもだいぶ早く作製してもらったようだ。頼りになるじゃねぇかよ。 また彼の役割である、マデへの日本語教育も、順調に始まったようだ。
僕も、マデと話すときには、相手が分からなかろうが、常に日本語で話しかけることを心がけた。 弟の「なんちゃって男」の指導がよかったのか、一ヶ月もすると、簡単な会話ができるようになった。 僕がインドネシア語を覚えていった速度より数段と速い。必要に迫られているだけにマデも必死なようすだ。 出発まで残すところ二週間となったところで、日本で使う予定の画材道具一式、今まで描き上げた絵をまとめて日本へ速達便で送った。 日本出張を間近に控え、皆それぞれがいい感じで緊張し盛り上がってきている。

は仕事以外に必要な日用品の用意だ。 日本の気候を考えた上で、普段着、下着、パジャマ、洗面セット・・・・ マデには、極力、日本の生活での出費を抑えさせたかったので、下着類は自分で洗うことを勧め、洗剤までも持参することを勧めた。何せ日本は生活用品が高いということを、例えとして、日本でのジュース一缶が、バリ島でのナシゴレン(炒飯)三皿に匹敵する価格だと、口を酸っぱくして繰り返した。 僕が作った出張リストに無いもので、彼が用意したものが一つある。それはカメラだ。 この出張のために購入したそうだ。出張から帰ったら、きっと子供たちにも、自分が初めて訪問した日本という国を写真で説明するのだろう。そんな姿が今から想像できる。

もう出発が迫ってきたある日、マデが不安そうな顔をして質問してきた。

「ワタシ エレベーター ワカラナイ」

この質問にはちょっと笑ってしまったが、彼にとっては笑い事ではない。どうやら経験したことの無い、日本出張を間近に控え、一人ぼっちの日本での生活を想像すればするほど、不安感が増大して神経質になっているようだ。まだM女史とも会ったことも無く、知り合いが誰もいない日本へ一人で行くのだから無理も無い。その不安感の表れが、エレベーターというもので象徴されたのではないだろうか。

「マデさん、心配しないで。エレベーターに限らず、地下鉄、その他、食事まで、全てM女史、もしくは彼女のスタッフが必ずアテンドする。困ったことがあったらどんなことでも、まずM女史に相談したらいい。皆、マデさんが来ることを楽しみに待っているんだ。」

彼は日本出張に対して、期待感と不安感に針が大きく振れる日々を過ごしながら、出発当日を迎えた。

ライトは夜10時発、翌朝早朝に成田に到着する。僕は午後3時にマデの自宅に向かった。 そこには、既に親戚一同、子供から老人まで30人くらいが集合し、マデの出発を祝う宴会が催されている。マデもこれだけの人たちを支えている一家の大黒柱なんだ。そう思うと、こちらも責任重大だ。 マデが僕を呼んで、荷物のチェックをして欲しいという。絶対に忘れてはならないものだけを、まずチェックした。パスポート、エアチケット、実演販売のときのバリのコスチューム、成田で会う予定のM女史の顔写真及び彼女の携帯ナンバー、などなど。 着替えその他は奥さんに任せ、僕は敢えてチェックしなかったが、彼は僕の忠告を真面目に聞き入れ、 洗濯洗剤も用意していた。 明日の朝は、もう異国の地だ。マデは不安が吹っ切れたのか、それともそれを隠しているのか、非常に希望に満ちた爽やかな顔つきになっている。


「ハーイ、遅クナッテ ゴメンネ。出発ハ マダ? 僕ガ ウンテン シテアゲル。 ガハハハハ」


いつものように、「なんちゃって男」の登場だ。


「ヒロさん 兄ハ 日本ハ 初メテデショ、日本ノ女、マダ 知ラナイネ。僕ハ タクサン 試シタケド。 ナンチャッテ!ギャハハハハ」


何でいつもこの男は、こう場違いなんだろうか。


「ヒロさん バリ人ノ女、試シタコト アル? 紹介シヨウカ? デモ、僕の奥サンハ ダメネ!  ナンチャッテ!ギャハハハハハハ」


この男だけは、絵が上手でも日本に連れて行けない。

車3台に乗れるだけ分乗して、見送りのため空港へ向かった。3台といっても、そのうち、2台は軽トラックだ。狭い荷台に皆、肩寄せ合って乗っている。 僕はマデ夫妻と「なんちゃって男」と一緒に乗用車に乗せてもらった。奥さんはいつになく静かで、ちょっと淋しそうだ。マデもぼんやりと窓の外を眺めている。何を考えているのだろうか? 「なんちゃって男」は一人テンションが高く、誰も聞いていないのに、場違いな話題で一人で喋って一人でウケている。
空港へは出発4時間前に着いてしまった。ちょっと早すぎる。チェックインカウンターが開くのは出発二時間前だ。しかし、マデの親戚に空港職員がいるらしく、カウンターが開く前に特別にチェックインを取り計らってもらった。またここでもインドネシアの融通性(いい加減さとも言う)の良さに感謝だ。 マデと別れの握手を交わす。奥さんは既に涙目になっている。

この日本での経験が彼の人生に、どういった影響を及ぼすのかは僕はわからない。 ただ、僕が異国の地で暮らすようになって、日本の良さを再発見したように、マデもまた、生まれ育ったバリの良さを再発見し、同時に日本の素晴らしさも見出すことであろう。

(2005.9.22)

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