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今いつの頃からか、スーパーなどでの買い物する際、お金の受け渡しを左手でおこなうと、娘からきつく注意されるようになった。
お金に限らず、物を相手に渡す際には、絶対に左手は使ってはいけないという。相手がムスリムだろうとヒンドゥー教徒、またクリスチャンだろうと、インドネシアでは左手を差し出すことは大変に失礼な行為になるらしい。
左手で握手するわけでもないし、そんなに目くじら立てるほどのことか?右手でくしゃくしゃな札を渡されるより、左手でしっかりと伸ばされた札を渡される方が僕にとってはよっぽど嬉しいが。
それに相手だって僕がインドネシア人でないことなど、直に見抜くから、たとえ左手を使ったとしても許してくれるだろう。
もし僕が日本にいて、箸を使えない外国人がフォークで日本蕎麦を食べているところを見たとしても、それを無礼な行為とは思わないな。しょうがないよ、習慣が違うんだから。
ところが、フォークで蕎麦を食べるという行為は一人で完結する「作法」の問題だが、受け渡しと言う行為は相手がある「礼儀」の問題だと娘は指摘する。
あまりに何度も娘に注意されるものだから、僕は注意深く、他の人たちを観察するようになってしまった。果たして本当に皆、お金の受け渡しに左手は使わないのだろうか。
観察結果、僕の考えは非常にあまいことが判った。お金の場合は100%右手しか使わない。スーパー、銀行、ガソリンスタンド、新聞売りの少年、はたまた物乞いの少年まで、皆、見事に右手だけだ。
僕は知らなかったとは言え、今まで大変に失礼なことをし続けていたのかな。
バリ人女性と結婚している日本人友人のMさんにこのことを尋ねたところ、彼も娘と同意見だという。
「たとえ相手が外国人と分かっていたとしても、左手で渡されたら内心、ムっとしているでしょうね。」
そうなのか・・・
それ以降、僕は非常に気を遣うようになった。
あるときなど、レジでおばちゃんの手にお金が渡る瞬間(双方が同時にお金を握る瞬間)僕は左手を使っていることに気づき、あわててもう一度ひったくって右手に持ち直し、再度手渡す。おばちゃんは二秒ほど固まった後、ケラケラ笑い始め、「別に気にすることないのよ」 と親切に言ってくれた。
***
僕はバリ島に長く住んでいるとはいえ、知らないことばかりだ。こういった経験からいつも思い知らされる。
しかし娘は、自宅に居るときには、両親から教わる「日本の常識」で生活し、一歩外に出れば、周りから教わる「インドネシアの常識」の中で生活している。後者の方が時間的には長い。まるで二カ国を毎日行き来しているようで大変じゃないかと思うのだが、彼女にとってはそれが別に苦ではなく「普通」なんだ。
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