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いつの頃からか、真夜中にその街道を走るとなると、変な期待感を持つようになってしまった。
今日はどんな娘が立っているのだろう・・・
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その道幅は30メートルと広い。道沿いには民家ではなく大型倉庫が続く。深夜になると、路肩には明日の積込を控えた大型トラックが数台眠っているだけの寂しい街道だ。治安的にもちょと問題のありそうな道なので、深夜は僕はスピードを上げて、その約2kmほどの道を通り抜ける。
ある日の深夜、その街道に入りアクセルを踏み込んだところ、大型トラックの陰に派手なドレスで着飾った女性が立っているではないか。
暗くてよく見えなかったが、確かに女性だ。誰を待っているんだろう。こんなうら寂しいところで女性が一人で立っているとは危ないぜ、と余計な心配をしてしまう。
そして200mほど走ると、また別の、やはり着飾った女性がぽつんと路肩に立って誰かが来るのを待っている様子だ。
え??ちょっと頭が混乱する。ご商売の人なの?
ここは倉庫街で、深夜となれば、車も人もめったに通らないところだ。商売するなら、もっと繁華街のクタやスミニャックに行った方がお客をつかみやすいだろうに。それにお客をゲットできたとしても、どこで???この辺りにホテルなんかないぜ。倉庫街が終わると、その先は牛が放牧されているだけだ。
何度もその街道を深夜に通る僕は、彼女らにも車を覚えられてしまったようで、通る度に手招きされるようにまで彼女らに近くなった。
こりゃ絶対に「ずっこけ物語」の好いネタになるな。いろいろと彼女らに訊いてみたい。
どうして、こんな街道で?
どこで仕事するの?車の中?
いくらが相場?
この街道で何人くらい仕事してるの?
そしてある日の夜中の1時、僕はいつもは飛ばす道を、ゆっくりと徐行しながら車を進ませた。今日は思い切ってインタビューにトライしよう。
いつも彼女らが立っているあたりに車を停めると、前方から、この界隈の雰囲気とは全くかけ離れた三人の女性が僕の車に近づいてくる。よしよし、なんだかワクワクするな。しかしよく目を凝らすと、派手なドレスを着た三人とも背が高く、二の腕も太い。ちょっとがっかりだな。
そして彼女らが車のボンネットの前まで近づき、その顔が下からのヘッドライトに照らされた途端、恐怖で僕の全身に鳥肌が立った。
「ひぇー!!君たち女じゃないの!?」
頭の中で、マイケルジャクソンの「スリラー」が突然始まる。
急いでギアをローに入れ、スタートしようとしたところ、いつの間にか、右のガラスには形容しがたい厚化粧の顔が張り付いて、僕を見入っている。その距離20cm。
「・・・・・(汗)」
恐怖で竦んでいると、前の3人はボンネットを手で叩き始め、運転席横にいる奴はドアをガチャガチャ開けようとする。僕は必死で気持ちを奮い立たせた。
「バカヤロー!どけ!轢かれても知らねぇぞ!」
前方の三人を蹴散らせながら、二度と振り返ることなく全速力で振り切った。
あ〜怖かった〜。これじゃインタビューどころじゃないぜ。
後日、バリ人の友人にこの話をしたところ、大笑いされてしまった。彼女(?)らは、15年くらい前はデンパサールのルノンあたりで仕事をしていたそうだが、警察から追われ追われて、こんな寂しいところまで来てしまったらしい。なかなか不景気で、彼女らの仕事も大変らしい、とのこと。
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この「ずっこけ体験」は既に5年前の2002年の出来事。現在の彼女たちの仕事の場所は、またどこか違うところみたいだ。今後また会う機会があったら、もう少し余裕を持って応対できるかもしれない。
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