ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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塀に車が!

第90話 賃金 BackNext

年この時期、すなわちイスラムの「断食明け大祭」が過ぎた頃、インドネシアの各州各県で「最低賃金」が発表される。雇用側は従業員に対して、最低でもこの賃金を保障しなければならないという月給だ。この最低賃金は地域によってバラつきがあるが、平均すれば日本円換算で¥10,000/月 ぐらいだろうか。

今年もその数字が発表されるや、地域によっては、その数字に対する不満が噴出し、デモが繰り広げられている。

***

バリ島の、とある木工場でのこと。
その日の仕事を終えた若い職人たちが、自分のバイクを車庫から出して洗車をし始めた。バイクはすべて日本ブランドの人気の車種だ。どれも14万円くらいの彼らからすると相当高額なものだ。彼らの給料で簡単に買えるものなのだろうか。

僕はその疑問をその工場の社長にぶつけてみた。もちろんバイクは職人達が自分で購入したもので、最低額の頭金を支払った後、最長の60ヶ月(5年間)ローンを組んでいるとの事。

25人ほどいる職人は、全て東ジャワからの出稼ぎ職人で、食べるもの(一日三食)と寝る場所(工場裏の寮)は保障されている。月給は技量の差によって、¥6,000から¥15,000と幅があるが、寝食は工場が提供しているので、上述の『最低賃金』はあてはまらない。

その工場では、バリ人は販売スタッフや経理にいる程度で、職人は全て東ジャワ出身者で固められている。大きな理由は次のようだ。


・ジャワ人は住み込みなので、通勤となるバリ人に比べ経費が安くすむ。

・バリ人はヒンドゥー教で、祭事が多いためどうしても休みが多くなる。ジャワ人は年に一回のイスラムの断食のお祭りのときに3週間ほどの休みを取って帰省するだけだ。

・社長が東ジャワ出身で、その近隣の村から職人を募ったのが最初。

・ジャワ人はバリ島では身寄りもなく、その工場だけが頼りなので、離職することも少ない。

・職人たちも親戚縁者どうしというものが多く、結束も固い。


そういうことか。
そういえばバリ島には工場を備えたショップが多いが、あるところはフローレス諸島からの職人ばかりのところもあるし、またカリマンタン島からばかりというところもある。通常、社長の出身地と職人の出身地が同じ場合が多い。そして扱う商品は、その出身地の特産品であることもある。
バリ島は、言ってみればインドネシア物産のショールームだ。島全体が幕張メッセと言えるかもしれない。毎日が展示会だ。

***

さて、職人の給与に話を戻すと、前述の工場の場合、若い職人で月給¥6,000。具体的にローンを支払いながらどうやって金銭をやり繰りして暮らしているのだろうか。

バイクのローンの支払方法は頭金を除くと、約¥3,000/月 x 60ヶ月だ。ということは自由になる月のお小遣いは¥3,000だけだ。

一日平均¥100しか使えない。ガソリンだって日本に比べ安いといってもリッター約¥60くらいするのだから、いくら寝食の心配が無いとは言え、ほとんど趣味などに使えない。タバコ(安いもので一箱80円)だって簡単に買えやしない。

若いんだから、デートもしたいし、カラオケに行って歌いたいだろう、携帯だって持ちたいだろう。しかしそれでも若い職人達は、幼少の頃から自分のバイクを持つのが大きな夢だったようで、他の事を我慢してでも相当無理をしてバイクに注ぎ込んでしまう。

だから少しでも自由なカネが欲しい彼らは、残業手当目当てに喜んで残業に参加しようとするが、残業が続くと、今度は、昼間の働きに影響が出るので、社長もその辺は調整するようだ。

逆に若くない比較的給与の高い熟練職人はバイクなど持たない。彼らは既に結婚して妻子を田舎に残して出稼ぎにきている人が多く、給与の大半は田舎に送金してしまうからだ。

***

しかし毎日暮らしていれば、病気、怪我など、突発的におカネが必要になるときもあるだろう。そういうときはどうするのだろうか。

職人らが待った無しでおカネが必要になった時は、工場のボス(社長)が立て替えるのが一般的だ。といっても闇雲に誰彼のなく際限なく貸し出せるわけではなく、金額は、職人により、またその時の諸事情などによって、ある妥協点に落ち着く。
またそのおカネが返済義務のある「貸し出し」なのか、そうではない「貸与」になるのかは、微妙なケースもある。

従業員を抱えるボスは皆、こういった給与以外の「予期せぬ支出」が結構多いと言う。給与だけ聞けば、なるほど人件費も安く済むので工賃も安いのだろう、と外野の僕は思うのだが、雇用主側からすれば、こういった目に見えない経費のコントロールが給与決定以上に重要だそうだ。
これは別に従業員に限らず、各家庭で雇っているお手伝いさんやドライバーにも当てはまることだ。

****

今日も、木工場へ出向き、職人さんたちに無理なお願い(あまり歓迎されない仕事)をしに行った。そういったときには、僕は必ず「タバコ」を土産として持参するんだ。今まで土産として、ジュースやアイスなども持っていたことがあるのだが、経験上、職人さんには一番タバコが歓迎されるようだ。こういった嗜好品は彼らにとっては贅沢品なのだろうか。

しかし、タバコは体に良くないよな。
「世界を見る目が変わる50の事実」(Jessica Williams 著)によると、世界のタバコ消費量の80数パーセントは発展途上国での消費だそうだ。先進国と言われている国では、「タバコ=害」という認識が既に行渡っているため売り上げは頭打ちだ。そのため販売側は消費ターゲットを、タバコによる害の認識が甘い途上国に向けて既に長い。アメリカではとっくに禁止されているタバコ広告もバリ島では全く問題ない。マルボロなどのカッコ良い宣伝が若者の消費意欲を刺激している。

今度は職人さんたちにタバコ以外の別のお土産を用意したいな。
何がいいのかな?

(おしまい)


(2007.11.26)

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