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携帯電話の機能の中で、このSMS(Short Message Service)は大変に便利だ。
電話をかけるのと違い、相手を邪魔する必要がない。なおかつメールと同様に伝言の証拠が残るので「そんなこと言った、言わない」といったトラブルもなくなる。そして、料金も通話に比べ格段に安い。ある携帯通話会社が、一日100通までのSMSを無料にしたところ、瞬く間にシェアがトップになった。
ただ、当たり前だが、インドネシアでは、SMSの文字入力は全てアルファベッドだ。しかし送信相手の使う言語により、言語を使い分けなければならない。
まず、インドネシア人とSMS交信する場合は、インドネシア語を用いるわけだが、スペルは下記の例のように、簡略化して送るのが普通だ。
「明日は何時にミーティングですか?」 |
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普通: |
Jam berapa ada meeting besok? |
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簡略化: |
jm brp ad meeting bsk? |
「昨日オーダーした商品は大体いつ頃できあがりますか?」 |
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普通: |
Kira-kira barang yang saya pesan kemarin, kapan jadinya? |
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簡略化: |
Kira2 brg yg sy psn kmarn kpn jdny? |
簡略化の基本は母音を省くことだ。
このくらいのレベルであれば、僕も何とかついていけるが、ちょっと高度になると、もうお手上げだ。そうなると娘に訳してもらうか、いなければ相手に電話して内容を確認してしまうんだ。これじゃぁSMSの意味がない。
次にバリ島在住の西洋人と交わす場合は、基本は英語だが、こちらも簡略化される。
「for you」は 「4U」
「see you」は「C U」
「today」は「2day」
「and」は「n」 などなど。
こういった簡約文字に慣れてなかった頃は、まるで暗号を解読するような気分だった。また簡略の仕方も人によって様々なんだ。「Thank you」を「Thx」とする人もいれば「Tq」で済ます人もいる。
僕にとって、入力するのに一番時間がかかる送信相手は、日本人なんだ。まず単語の簡略化が難しく(出来たとしても相手に理解されない可能性大)、敬語表現などが文章をどうしても長くする。また日本人の場合は、いきなり用件を切り出す前に、「gobusatashitemasu」とかワンクッションを入れてしまう。どうしてもストレートに用件に入れないんだ。
例えば、上述の「明日は何時にミーティングですか?」というのを僕が日本人に向けてSMSする場合は、
「osewaninarimasu asu ha nanji kara meeting de shouka? yorosiku onegaisimasu」
といった具合に、えらく長い文章になってしまう。そういう日本語表現を嫌ってかどうか知らないが、僕の日本人友人の中には、SMSの場合は、相手の日本人であろうと英語でしか入力しない人がいる。
***
先日の深夜三時、僕はめずらしく仕事で遅くまでコンピューターに向かっていた。すると、携帯からSMSの着信音。
また、どうせ寝室にいるカミさんだろな・・・。いつも僕が遅くまで起きていると、「hayaku nenasai !!」とか「itumade hon yonderuno !!」といったSMSが入ってくるんだ。
ところがその時のSMSは僕の知らない人からで、インドネシア語で記されていた。
「あなたがもう家に着いたことは知っている。私の携帯番号が変わったから、この電話番号に今、電話頂戴ね」
はぁ??これは宛先間違いで送ってきたものだな。書き方からして女性と思われる。彼氏に対して送っているのだろうか。この人に対して、宛先間違いということを返信SMSで教えてあげようと思ったのだが、もう深夜三時だ。仮にジャカルタからだとしても深夜二時だ。普通の人間は寝ている時間帯だ。ということはこの女性は「普通の人間」ではないのか?
返信をすまいかどうか迷っていると、またSMS着信音が鳴った。
同じ人からだ。
「どうして電話くれないの!待ってるから!」
あれ、怒っちゃているよ。深夜三時だ、相手の素性もよく分からないから、もう無視しまおう。
そうこうしていると、二分おきくらいにSMSをさらに三通受信した。何の返信もしない僕(?)に対して、怒りが激しくなっている。気になって仕事どころではない。最後に受信した文の意味がよくわからなかったので、僕は仕事をそっちのけで、辞書を引張り出し、その翻訳にかかった。
「あなたがそんなに冷たい人だとは思わなかった・・・・」
そんなことこの僕に言われても・・・・
そして、シャワーを浴びて寝室に向かう時に、いきなり電話がかかってきて、そして直ぐに切れた。ワン切りか。履歴を見ると、やはりSMSと同じ番号だ。僕はだんだんと怖くなってきて、電話の電源を切って寝た。
***
翌日の昼、電話が鳴り、発信者の番号を見ると、昨夜の彼女からだ。もう昼間だから僕にも余裕がある。
「ハロー」
と僕の声を聴いた当人が、期待していた声と違ったので狼狽している様子だ。何も言葉が出てこない。
「昨夜、僕に沢山のSMSを送ってくれたのは、あな・・・・」
(ブチ!)
いきなり切られた。
深夜の間違い電話には気をつけて。
(おしまい)
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