ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第92話 ついに僕の番が・・・ BackNext

つかは自分も事故を起こすのではないかと思いつつ、ついついその便利さに依存し、どこへ行くにもバイクとは縁が切れなかった。

2008年のこと、事故多発道路で有名なガタスブロト通りを時速50kmくらい走っていると、改装したばかりのピザハットが目に入った。
それに1−2秒、目を奪われ、目線を前に戻したところ、目の前に、横から飛び出てきた「おばちゃんスクーター」が!

「あ"ーーーーーっ」

衝突を避けるため、前後輪とも思いっきりブレーキをかけ、ハンドルを無意識にきってしまった。あたりまえのように僕の体は前に放り投げ出され、頭と右肩からアスファルトに突っ込んでいった。

それまでも小さな転倒は何度か経験していたが、それらの怪我の程度は知れたもので、打撲で数日痛む程度だった。
しかし、今回のはちょっと違う。苦しくて息ができない・・・。
この通りは、フェリーでジャワ島へ向かう大型トラックががんがん走る幹線道路だ。まぁ東京で言えば「環状七号」といったところか。
道の真ん中で悠長に痛がっている場合ではない。
右肩を押さえ、立ち上がってバイクを起き上がらせようとすると、右肩に激痛が!
肩が外れたか?骨折したか?

こへ道路脇の銀行で働く警備員が、僕を見かねて、バイクをまずは路肩に運んでくれた。
病院に行くか?と問われたが、自宅まで歩いても15分程度だったので、まずは徒歩で帰ろうとしたところ、先の警備員が彼のバイクで送ってくれるという。
いつもながら彼らの親切心には感謝だ。特に、弱いもの、老人、けが人などに対しては皆、思いやりに溢れている。
しかし彼は「銀行の警備」という仕事を放っておいていいのか?などと痛みの中で変な心配をしてしまう。

言葉に甘え、僕のバイクはそこに放置したまま、彼のバイクで一旦自宅に送ってもらった。
カミさんは僕の姿を見て、驚いたものの、普通に歩き、頭も腰も怪我していないのを知り、少し安心したようだ。ヘルメットは大切だ。
ただ、右肩の鎖骨の先が変な方向に向いているんだ。どうなちゃったんだ?

****

りあえず、カイロプラクティックのK先生に電話をかけ、相談に乗ってもらう。

「まずはレントゲンを撮ってから来て下さい」

了解。

近所の病院に向かい、すぐにレントゲン撮影をし、一応そこのバリ人ドクターにレントゲン結果を視てもらった。

「今すぐに、全身麻酔して、この骨の位置を元に戻しましょう」

ちょちょちょちょっと待ってくれ。今この現在、命に別状があるわけではないので勘弁してくれ。
「ほな、考えときます。」と大阪商人風に拒み、レントゲン結果を持って、その足でタクシーに乗ってK先生を訪ねる。

「あーだいぶ骨の位置がずれちゃってますね。それから肩甲骨にもひびが入っていますね。」

と、先生がレントゲンフィルムを指すところには、髪の毛が一本乗ったようにひびが入っている。
ちょっと触れただけで僕がぎゃーぎゃー言うものだから、先生も手をだせない。

「少し、時間をおいて、痛みが和らいだら来て下さい。」

了解。

****

事上、それまで僕は毎日バイクか車で外出していた。
右腕が動かないので、バイク運転は無理。
車と言えば、あのおんぼろオフロード車だ。パワステ無し、かつタイヤが太い、さらにマニュアル車、ときているので左手だけで運転するのが難儀だ。
朝、娘を学校に送る際には、助手席に座る娘がギア担当だ。僕が「セカンド!」「トップ!」などという度に、娘はおもしろがって運転に参加することを楽しんでいた。

「もう二度とバイクはダメ!

というカミさんからのお達しにより、スズキGSXを売りに出すことに。僕が懇意にしているバリ人に声をかけたところ、その日に飛んで来てくれて、是非欲しいという。
そして今度は、彼が今持っている車(1500cc セダン)を僕にどうか、と提案する。二日間ここに車を置いて行くからコンディションを確認してから購入するかどうか決めてくれ、とのこと。
有り難い提案だ。
二日試すどころか、その場でその車を左手だけで10秒運転し、即、購入決定。
パワステは楽だなぁ。僕のあのおんぼろオフロード車に比べたらエンジン音など無いに等しい。エアコンも効くし、なんと言っても揺れが少ないのがいい。

あの事故から2年半が経過した今、結局手術もせず、右肩の骨の位置はずれたまま固まってしまった。ただ、普通に生活する分には問題ない。
事故以来ご無沙汰しているテニスは、もう右手では厳しいかもしれない。テニスの王子様のようにサウスポーにならなければ。
また一から練習だ。

****

今振り返ると、つくづくこの程度の怪我で済んで幸運だったと思う。
あのままバイクを乗り続けていたら、いずれもっと大きな事故に巻き込まれていたかも知れない。

今日も皆の無事故を祈って。

(おしまい)

(2011.4.13)

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