ESTATE★椰子の木の下で 〜バリ島ずっこけ物語〜
  ひょんなことから、突然バリ島へ移住してしまった日本人家族の日々の喜び、驚き、感動を綴ったエッセイです。
バリ島生活泣き笑い。これから行き着く先は・・・!?
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第97話 私を雇って〜 BackNext

れもいなく、一人で飛行機に搭乗する場合には、隣にどんな人が来るのか気になるところだ。長時間となり合わせになるのだから、できればストレス無く気持ちよく乗っていたい。

その日、香港からバリ島に向かうガルーダに乗ったときは、ほぼ満席で、自由に移動できる空席も見当たらなかったので、僕はボーディングパスに印字されているどおりに座席に向かった。
僕の隣の席には、インド人と思われる彫の深い女優並みに美しい女性が座っていた。
腰を落ち着けると、僕の方を見て何やら話しかけたそうだ。

まいったな。こういうときには男性から話しかけるのがエチケットというものだ。
しかし、何て話しかけようか。

ガム食べる? (これじゃぁ小学生の軟派だ)

僕はインドカレーが好きです。
ガンジーは偉大ですね。
サイババに会いに行きたい。

んーどうしようか悩んでいると、まだこちらを見ている。
ありきたりに、

「バリ島にはバカンスで?」

さぁここから会話が発展するぞ。

すると、

「もしできたらあそこにいる私のハズバンドと席を替わってくれませんか?」

え? すると5列前ほどで、ハズバンドと思われる、これまた映画俳優並みのインド人イケメン男性が立ってこちらをうかがっている。

「シュアー」

ええかっこしいの僕は、喜んで席を交換する。

しい座席の隣は、バリ島へのツアー客と思われる太っちょの香港人のおっちゃんで、広東語で思いっきりフライトアテンダントに文句を言っているんだ。

「何で俺たちの仲間がこんなにバラバラの座席に散っちゃっているんだ。一緒に座らせろよ。」(たぶんこういった意味だろうと推測された)

おっちゃん、それは無理だ。あなたがもっと早めにチェックインしなかったからだろ。言われた方のインドネシア人のアテンダントも、広東語だからまったくシカトだ。(笑)

僕もこんなおっちゃんの横は勘弁して欲しかったので、おっちゃんにその友人と席を替わってあげることを提案した。やっとのことで落ち着いた席の隣は、若いインドネシア人女性だ。隣・前後に座る数人の女性ばかりの仲間で盛り上がっている。まだ離陸前なのにちょっとした宴会状態だ。

***

港のメイドは9割方フィリピン人だが、インドネシア人の需要も年々高まっている。英語も達者でメイドとしての訓練を予め受けてくるフィリピン人に比べ、英語もたどたどしいインドネシア人メイドは能力的に低く見られがちだ。そのためか給与もフィリピン人に比べ低い場合が多い。
ただ、英語が苦手な分、働き始めてからの広東語の上達が非常に早いので、それが逆に英語を苦手とする香港人家庭にはプラスに働く。

僕の隣は明らかにメイド軍団だ。故郷に一時帰国かな?本を読もうと開いたところで、突然彼女が話しかけて来た。

(流暢な広東語で)#$%^&&*?@(*&!@$%^&」

僕は香港人じゃないよ。日本人だよ。

すると彼女は僕の方へ体を90度ひねって、熱く訴える。

「えっそうなの! 私を雇って〜!ねぇお願い!」

彼女は僕のことをバリ島に遊びに行く香港在住者だと勘違いしたようだ。

既にメイドとして一年香港人の家庭で住み込みで働いているが、そこの家庭とうまくいっていない。だから今回の一時帰省で田舎から香港に戻ったら、新しい住み込み先を探したいとのこと。
香港の日本人家庭で働くことは、メイドたちの間では理想とされているようで、友人のメイドたちも皆、親切に扱われているそうだ。

「残念だね。僕は香港じゃなくて、バリに住んでいるんだよ。」

彼女はバリ島でもいいから雇って欲しいという。よっぽど今の雇い主が嫌なんだな。

「香港とバリ島のメイドの給与は5倍くらいの開き(いやもっとかな)があるのは知っているでしょ。我慢して香港で働いた方がお金になるよ。」

彼女もそれを知っているからこそ、未知の国へ勇気を持ってメイドとして働きにでたんだ。しかしホント偉いよ。あなたまだ二十歳前でしょ。香港の住み込みメイドといったら、24時間態勢で、休日は日曜日だけだ。

メイドほど、働く先によって、幸・不幸の差が大きい職種はないのではないだろうか。待遇の悪いところになると、掃除洗濯だけでなく、それに老人介護が加わったり、さらに寝る場所がキッチンという話も聞く。そして、苦労して得た給与のほとんどは自国への送金なため、遊ぶお金など無い。

同乗した彼女らはどんな雇い主の下で働いているのだろうか、と想像してしまう。彼女らは、もうすぐ故郷に帰れるということで、皆かなりハイになっている。そういう状態だったからか、飛行機に隣り合わせた見知らぬ人間にも難なく自分を売り込んだりする。見方によっては軽い言動といえるかもしれない。
しかし、チャンスとあれば、それにダメもとで食いついて行く姿勢は、逆に見習わなければならないと思うほどだ。

***

ンドネシアは消費が年々上昇し、特に車を始めとした高級商品の伸びが著しい。しかしその反面、地域によって貧富の差が増々拡大している。経済的に厳しい州の出身の彼女らは、このように海外で働けることは幸運とさえ言われている。
しかし幸運なのは彼女ではなく、田舎で彼女の給料を期待する家族だろう。

「女工哀史 あゝ野麦峠」の悲惨さとはかけ離れているが、結婚前の若い女性が、家族のために一人親元を離れて一家のために働きに出る、という構図は同じだ。

デンパサールで彼女らは国内線に乗り替え、故郷の島に向かう。僕は普通に別れの挨拶を交わす。本当にもう二度と会わない「別れ」だ。そして皆、それぞれが自分の路を探し、そして歩んで行く。

僕も一緒だ。


(おしまい)
(2011.5.23)

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