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「湿地と水:命を育み,暮らしを支える」
"Wetlands and water: supporting life, sustaining livelihoods"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第9回締約国会議
ウガンダ共和国カンパラ,2005年11月8−15日
1.決議Ⅷ.25において締約国は2003−2008年におけるラムサール条約履行の基礎となる「2003−2008年戦略計画」を採択したことを想起し、
2.ラムサール条約「2003−2008年戦略計画」は、締約国会議の採択に先立ち、締約国、条約の国際団体パートナー(IOP)及び政府間組織、NGOを含む、その他の組織との幅広い協議を通じて常設委員会によって作成されたことを意識し、
3.「1997−2002年戦略計画」を締約国及び他の機関が実施したことにより、条約に首尾一貫した形でいっそうの効果がもたらされたことを認識し、しかし湿地の保全と賢明な利用を地球全体で統一のとれたやり方で実現するには、課題が山積しさらに増えていること、及び2003−2005年間の「条約の作業計画」(決議Ⅷ.26)として合意された2003−2005年の地球規模の目標のほとんどが、第9回締約国会議(COP9)までに達成されていないことを意識し、
4.湿地の保全と賢明な利用という条約の目標を達成するために締約国が条約を促進し履行するにあたっては、総括的であるが簡潔でまた使いやすい文書が役に立つことを意識し、かつ諸資源とスタッフの時間の見地から、常設委員会が条約の履行効果をモニタリングできるような明確な文書が必要であることを認識し、
5.各締約国は、「戦略計画」の実施の度合い、実施に当たっての資源配分、及び守るべき時間的な枠組みを随意に選択出来るということも再び認識し、
締約国会議は、
6.本決議に添付された「2006−2008年における『ラムサール条約2003−2008年戦略計画』実施の枠組み」を、決議Ⅷ.25で採択された条約「2003−2008年戦略計画」の実施に関して常設委員会がより良い進展をもたらすための作業ツールとして用いること、当該文書がその3年後に再検討、編集、変更を受けるものと確認した上で承諾する。
7.条約事務局に対して、この枠組みの本文をCOP9で採択された決議を取り入れて修正するよう指示し、また、条約事務局に対して、この枠組みに将来の科学技術的課題および優先順位に関する決議Ⅸ.2付属書を添付して、「2003−2008年戦略計画」を今後3年間に実施するための「2006−2008年作業計画」となし、その作業計画を、常設委員会からの承認を得た後に遅滞なく、締約国及び他の関係団体へ回覧するように同じく指示する。
8.「2006−2008年における『ラムサール条約2003−2008年戦略計画』実施の枠組み」は、2006−2008年の3年間において条約履行を促進し、モニタリングし、計測する新しいアプローチの成否を、条約事務局と常設委員会が検証する際の基礎を提供するものであることを確認し、また常設委員会に対して、COP10で検討出来るように「2009−2014年戦略計画」作成のための全体的かつ包括的な手続きを策定し実施するよう指示する。
9.常設委員会に対して、決議Ⅸ.1付属書Dと決議決議Ⅸ.5における報告事項を考慮に入れ、「2006−2008年における『ラムサール条約2003−2008年戦略計画』実施の枠組み」を基にしてCOP10用の国別報告書の様式を簡略化するように、また、その作成に当たっては以下の要領で、新しい様式が締約国の報告書作成全般の負担が確実に軽減されるように要請する。
ⅰ)今回や以前の締約国会議で採択された決議で必要とされるあるいは要請される内容の重複をを減らすこと、
ⅱ)報告要件を少なくとも総量で増加させないため、新たな報告要件に対しては必ず既存の要件を減少させること、
ⅲ)追加情報の収集を求めることよりもむしろ、他の関連条約や協定の報告要件やそれらを目的として収集された情報の活用方法を考慮すること、
ⅳ)特に2010年生物多様性目標など、ラムサール条約に基づく報告から他の条約に基づく同等の報告過程への寄与も考慮すること。
10.全ての締約国、常設委員会、科学技術検討委員会(STRP)、条約事務局、及び条約のIOPに対して、条約の履行効果を評価する“成果重視”の生態学的指標(決議Ⅸ.1付属書D)の適用を含め条約を促進し、履行し、その実績をモニタリングするという新しい挑戦を始めるために、「2003−2008年戦略計画」及びその附属事項を使用することを強く要請する。
1.2002年11月18−25日に、スペインで開催されたラムサール条約の第8回締約国会議(COP8)は、2003−2008年に条約を適用するための『戦略計画』を採択した。この『戦略計画』は、賢明な利用原則の完全な適用を達成し湿地資源を保護するために、条約が湿地の保全とその持続可能な利用に一層広範なアプローチを採るべきことを認めた。この計画を発展させ、簡素化して、2005年11月にウガンダのカンパラで開催されたCOP9は、第二期の3年間において、『戦略計画』とともに本「枠組み」を用いることに合意した。COP9は、一連の戦略を通して5つの最終目標[訳注]を達成すべきことに合意した。最終目標のそれぞれには、その効力を測定するために主要成果領域(KRA: key result areas)及び主要実績尺度(KPM: key performance measures)を備えている。この「枠組み」は、また、科学技術検討委員会(STRP)が開発中の条約の履行効果を評価する“成果重視”の生態学的指標と互いに関連しあう。
2.本「枠組み」は、『2003−2008年戦略計画』(決議Ⅷ.25)の解釈を助け、また以下に寄与する。
3.「全世界における持続可能な開発の達成に寄与するため、地方、地域及び国内行動と国際協力を通じて、すべての湿地を保全し、賢明に利用すること。」条約は、持続可能な発展をあらゆる所で達成することを通じて人々の健康と福利に貢献するため、湿地の保全と湿地の持続可能な利用とを統合することが必要不可欠であることを強調する。
最終目標1.湿地の賢明な利用:自国の領域内の湿地の賢明な利用を確保するために、必要な際は生物多様性条約(CBD)が定義するエコシステムアプローチを特に適用しつつ、(決議Ⅸ.1付属文書Aにおいて修正を加えた湿地の賢明な利用に関する手引きを含む)必要かつ適切な手段及び措置を、全ての締約国が策定し、採択し、利用するよう奨励し支援すること。
条約の第3条1項,第4条3項,第4条4項と,第4条5項を実行する。
最終目標2.国際的に重要な湿地:「持続可能な開発委員会第13回会合(CSD13)」の決定事項実施への寄与と2010年生物多様性目標の実施としての条約湿地のモニタリング及び管理を含め、「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」を、全ての締約国が適切に実施するように奨励および支援すること。
条約の第2条1項,第2条2項,第2条5項,第2条6項,第3条1項,第3条2項,第4条1項と,第4条2項を実行する。
最終目標3.国際協力:「ラムサール条約の下での国際協力のためのガイドライン」の活発な適用を通じた国際協力を促進し、特に湿地の保全と賢明な利用のために追加の財政援助および技術援助を動員すること。
条約の第5条を実行する。
最終目標4.実施能力:条約がその使命を達成するために必要な実施機構、資金および能力を確保する。
条約の第6条,第7条と,第8条を実行する。
最終目標5.加盟:条約の加盟を世界の全ての国に広める。
条約の第2条4項と第9条を実行する。
注記:
この節の主要戦略はそれぞれつながりのある最終目標のひとつと同じ番号がつけられている。このつながりに加えて、戦略と「主要成果領域」のいくつかは、必然的に最後には1つ以上の最終目標を満たすことになる。「主要実績尺度」は、条約事務局が常設委員会と協働して測定する。項目『予算への影響』は、わかっている場合に特定の費用と、必要とされる条約事務局職員の時間目標(stt: staff time targets)を示す(合計値は 19 stt を想定)。各戦略は、『戦略計画』の該当する実施目標を参照する。1つの戦略が1つ以上の「実施目標」を含む場合は、戦略の明確さを確保するために、目標の文言を多少変更した箇所がある。
戦略1.1(実施目標1.1)
条約の履行、特に賢明な利用原則の適用について情報を提供し、また支援するため、湿地資源の規模及び状態を適切な地理上の規模で、記述し、評価し、モニタリングする。(締約国。STRPの助言、条約の国際団体パートナー(IOP)の支援で)
戦略1.2(実施目標2.1+2.2)
賢明な利用原則が効果をもって確実に適用されるよう、すべての締約国が、影響評価や価値評価を含む、国家レベルあるいは超国家レベルの政策、法律、制度や実践を策定し、見直し、必要に応じて修正して、実施する。また、出来うるならば、湿地の賢明な利用を確実なものにするため各締約国が講じうる適切な政策手段を特定する。(締約国,条約事務局)
戦略1.3(実施目標3.1−3.3)
十分に代表されていない生態系タイプに焦点を合わせつつ、湿地の賢明な利用を達成するための方法論を開発し普及させることにより、水の供給、沿岸保護、洪水防止、気候変動の影響緩和、食料安全保障、貧困削減、文化遺産及び科学研究における湿地の重要性に対する認識を高める。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略1.4(実施目標3.4)
統合的水資源管理(IWRM)の実施の観点から、特に領土管理、地下水管理、集水域・河川流域管理、沿岸及び海域計画策定、気候変動対策などに関するすべての締約国の計画策定に、また国、地域、都道府県および地方レベルでの意思決定過程に、湿地の保全と賢明な利用の政策を組み入れる。(締約国、STRP,IOP)
戦略1.5(実施目標4.1)
再生と回復をすることが有益であり、環境、社会及び経済面で長期的な利益を生じるような優先順位の高い湿地を特定し、その再生に必要となる措置を講じる。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略1.6(実施目標5.1)
湿地系への外来種の侵入を防止、抑制または根絶するための手引きを作成し、標準的な手順と行動を促進する。(締約国、STRP,その他の機関、IOP)
戦略2.1(実施目標10.1)
「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」(ラムサール賢明な利用ハンドブック第7巻)を適用する。(締約国、STRP)
戦略2.2(実施目標10.2)
「条約湿地情報サービス」の保守を行い、絶えず最新の情報によって更新する。また、「条約湿地データベース」を、国際的に重要な湿地リストにさらに湿地を指定する際の指針ツールとして活用する。(締約国、STRP,条約事務局、IOP。適切ならばその他の機関・組織)
戦略2.3(実施目標11.1)
すべての条約湿地の生態学的特徴を維持する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略2.4(実施目標11.2)
条約湿地の状況をモニタリングし、条約第3条2項に規定されているとおり、条約湿地に影響を与える変化について遅滞なく条約事務局に通知し、また問題対処の手段として、モントルーレコード並びにラムサール諮問調査団(RAM: Ramsar Advisory Mission)を適用する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略2.5(実施目標12.1+12.2)
国境をまたぐ湿地に依存する生物種のモニタリングと管理のための協力を含め、国境をまたぐ湿地と集水域の目録及び統合的管理を促進する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略2.6(実施目標12.3)
条約のもとにある現行の地域協定を支持し、さらなる協定を促進する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略3.1(実施目標13.1)
他の組織との協調:国際的、地域的な多国間環境協定(MEA)やその他の機関とパートナーとして協働する。(締約国、条約事務局)
戦略3.2(実施目標14.1)
専門知識と情報の共有:専門知識と情報の共有を促進する。(締約国、条約事務局)
戦略4.1(実施目標6.1)
地域住民、先住民、及び文化的価値:地域住民や先住民、特に女性や青少年が、文化的価値のダイナミックスに関する理解も含め、充分な情報の提供を受けた上で、湿地の保全と賢明な利用に積極的に参加することを奨励する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略4.2(実施目標7.1)
民間部門が湿地の保全と賢明な利用に参画するよう働きかける。(締約国、条約事務局)
戦略4.3(実施目標8.1)
賢明な利用原則を適用するための奨励措置を促進する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略4.4(実施目標9.1)
一般市民の参加と広報、教育、普及啓発(CEPA)を通じ、湿地の保全と賢明な利用を促進するための広報・教育・普及啓発プログラム(決議Ⅷ.31)を支持し、このプログラムのあらゆるレベルでの実施を支援する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略4.5(実施目標15.1+15.2)
国内外の投資によるものを含み、湿地に影響を与えるすべての開発計画において、環境保護措置と影響評価が不可分の要素として確実に盛り込まれるようにする一方で、湿地の保全と賢明な利用を支援するための国際協力を促進する。(締約国、条約事務局、IOP)
戦略4.6(実施目標16.1)
締約国会議からの要請に応えるため、条約の管理、各種の機構、またプログラムに必要な資金を提供する。(締約国、条約事務局)
戦略4.7(実施目標17.1)
締約国、常設委員会、STRP、および条約事務局が、この戦略計画実施を支援して、極めて効率的、効果的に機能するよう図る。(締約国、条約事務局)
戦略4.8(実施目標18.1)
湿地の保全と賢明な利用を実現するために、締約国の機関内部の能力の向上を図り、締約国内の機関相互の協力を促進する。(締約国)
戦略4.9(実施目標19.1)
条約のIOPやその他の機関との協働による恩恵を最大限活用する。(条約事務局、IOP)
戦略4.10(実施目標20.1)
特に開発途上国や経済移行国などにおいて、湿地の保全と賢明な利用に関わる機関や個人にとって必要な研修の内容を特定し、適切な対応を行う。(締約国、条約事務局、研修センター、IOP)
戦略5(実施目標21.1)
条約への加入:条約の締約国を全世界に確保する。(締約国、条約事務局)
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop9/res_ix_08_j.htm
Last update: 2008/06/01, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).