無痛分娩について
無痛分娩とは
多くの妊婦さん、とくに初めての方は、お産は怖いものと考えていると思います。また、陣痛は我慢することがあたりまえで、我慢することが美徳のように考えられているかのようです。自然分娩が当然という日本社会の常識に反して無痛分娩のメリットが広く行き渡るにはまだまだ時を必要とするようです。しかしながら、欧米では、半数以上の人がいわゆる無痛分娩で出産をしています。
無痛分娩と聞けば、意識がなくなってしまうのではないかとか、危険なことだとかいう意識がありますが、そのようなことはありません。医事紛争の多いアメリカでも半数以上の人が無痛分娩で出産をしています。
当院では、最も主流の硬膜外麻酔による無痛分娩を行っています。硬膜外麻酔は効果発現までは緩やかですが、カテーテルの留置により長時間の持続が可能であり、血圧が下降するといったことも少なくコントロールしやすい麻酔です。また、手足も自由に動かせて意識もあり、子宮収縮もいたくない程度に自覚ができ、かつ赤ちゃんへの麻酔薬の影響も軽微であり、この方法なら赤ちゃんの産声も聞くことができ、出産時の痛みもできますので、生命誕生の喜びも当然味わえます。
麻酔がよく効いていると陣痛が弱くなることがあります。この場合は、常時付けている分娩監視装置で確認しながら、丁度良い陣痛になるよう陣痛促進剤を使用します。
無痛分娩をすることにより帝王切開が増えることはありませんが、帝王切開になってしまうときは、その硬膜外麻酔を手術の麻酔としますので、素早く行えるメリットがあります。

ご予約の方・ご興味のあるかたには下記の本を貸し出ししております。ご活用ください。
@無痛分娩マルわかりBOOK(メディアート出版)
A麻酔分娩がよ〜くわかる本(メディカ出版)
B無痛分娩のすすめ(毎日新聞出版)
C順天堂式無痛分娩Q&A50 (わかる! なっとく!!)
安全のため麻酔薬の皮内反応テストを行っております。
無痛分娩の実際
具体例: 2回目の出産。予定日が近づいてきておしるしがあり、軽いおなかの張りもあるのでまずは病院に電話をして入院した。
診察の結果、子宮口はまだ3cmぐらいで陣痛も機械上で10分間隔程度の比較的弱いものなので浣腸をして病室で様子をみていた。
時間の経過とともに少しずつ陣痛も強くなり、助産師さんの診察では、子宮口は6cmで赤ちゃんの頭もだいぶ下がってきたとのこと。
陣痛は5分ごとで,かなり耐えがたくなってきたので麻酔をお願いし、院長に硬膜外麻酔のチューブを入れてもらい、麻酔が始まった。同時にブドウ糖の点滴も始まった。10分ぐらいしたら痛みは大部分なくなってきた。
陣痛はあるが痛みのあまりない状態が1時間ぐらい経過してまた痛みが出てきたので2回目の麻酔を入れてもらった。
そうこうしているうちに子宮口は全開大になり、ここで3回目の麻酔を入れてもらう。赤ちゃんの髪の毛が少し見えてきたので分娩台の上で出産体勢となり、怒責(いきみ)を始めた。
痛みはないが陣痛にあわせていきむことは可能で5,6回ぐらいいきんだら赤ちゃんが出てきて元気な産声を上げた。
経産婦さんの場合は、このようなパターンが平均的なところです。初産の方はもうすこしかかります。麻酔の開始時期がもう少し早いときもあるし、遅いときもあります。できるだけ自然陣痛で我慢していますとスムーズにいくことが多いようです。
硬膜外麻酔について
無痛分娩といっても、局所麻酔、鎮痛剤、ガス麻酔、腰椎麻酔等いろいろありますが、最近は硬膜外麻酔という方法がとられることがほとんどになりました。
この方法は背中から硬膜外腔というところにチューブを留置し、そこへ麻酔薬を適時入れていくという方法です。無痛といっても完全に痛みがなくなるかどうかは、麻酔薬の濃度や量によって変わってきます。つまり痛みを半分ぐらいにするとか10分の1ぐらいにするとかいった調節が可能なわけで、そういう意味では無痛分娩という表現より減痛分娩あるいは除痛分娩といった方が日本人には受け入れられやすいかもしれません。
麻酔が効いてくると少し陣痛が弱くなることがあります。その場合は、分娩監視装置でモニターしながら、ちょうどよい陣痛になるように陣痛促進剤を使用します。もちろん意識がなくなるようなことはありません。
この無痛分娩を行うことによって、産道の緊張が解け、弛緩するので多くの場合、結果的に分娩時間が短くなります。ということはすなわち母児ともに安全であるということです。もちろん、出産時のいきみもできますので、赤ちゃんの誕生の喜びも当然味わえます。また、会陰切開縫合時の痛みもなくなります。
ほとんどの妊婦さんにこの麻酔は可能ですが、中には行ってはいけないケースもあります。たとえば、以前の出産が帝王切開で今回は経膣分娩を試みようとする方には無理があります。逆に、心臓に問題がある人や妊娠中毒症の人など母体にとって過度のストレスがよくない人には必要不可欠の方法といえます。
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