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ラムサール条約 情報集

湿地の文化遺産

[英語]

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湿地の文化遺産

はじめに

考古学によれば人々と湿地のあいだには古来より密接な関係があったことがわかる.世界中で浸水土壌に見つかる文化遺物は,人々が湿地を広範に利用し,限りなく豊かな湿地の天然資源が何千年ものあいだ人類を支えてきたことを証明している.今日も全ての国において,このような密接な関係を保ち,湿地における循環のリズムに従って人々の日々の暮らしが行なわれている社会がある.

 もちろん,このような湿地と人々との関係は,その天然資源の価値や必須の生態系サービスに限られない.たとえば時代とともに発達してきた豊かな文化遺産も含まれる.それは湿地の保全と賢明な利用に関係する広範な湿地社会がいっそう大きな関心を払うにに値する遺産である.

 このような遺産の範囲や多様性は過小評価されるべきではない.ラムサール条約登録湿地の最近の分析によれば,それらのほぼ半数に莫大な量の多様な文化遺産が記録されているのだから.形態も次のようにさまざまである:人工的構築物や工芸品から,堆積物や泥炭の古生物学的記録,特別な信仰的意義を持つ場所,人々のくらしを支えて独得の湿地景観を形成してきた伝統的な水利用や土地利用の管理方法まで.

Ramsar WWD Sticker: spear fishing
マミラウア保護区(ブラジル)の投げ槍漁.ここでは伝統的知識が保全管理プロセスの重要な役割を担う.

Ramsar WWD Sticker: salt collection
セネガルの強塩性の潟湖での製塩.ラムサール条約世界湿地の日ステッカー(2枚とも).「World Wetlands Day 2002」 () より.

 製塩や米作,マングローブ利用,漁業,ヨシ刈り等に利用するために人々が発達させてきた伝統的な湿地管理技術の多くは,人々を支えかつ湿地も保全する技術として時の試練を耐えてきたものである.これらの成功した技術を可能な限り維持することが,湿地と結びついた文化遺産と湿地自体を守ることにつながる.実際,これらの技術を,その背景にある伝統的知識とともに維持することが,生物多様性保全の重要な鍵となるツールであると,広く認識されている.

 多くの都会人には湿地との直接的な関係は失われている.しかし,湿地の文化遺産は過去からのつながりを象徴し,また湿地の文化的景観は世界中の都会人を惹きつける漠然とした感覚を,同様に芸術家や作家には着想を提供している.

 湿地の破壊や伝統的な管理方法の喪失は,洪水調節や地下水補給,栄養塩類の循環など目に見える湿地の価値だけでなく,湿地の文化遺産をも喪失することを意味している.

 2002年のラムサール条約の世界湿地の日は,湿地の文化遺産に焦点を当て,湿地の自然の価値と機能と同様に,これら遺産を守るための管理戦略の必要性に焦点を当てる.本ファクトシートでは,私達の湿地における文化遺産のさまざまな側面を見てゆき,文化的な課題を湿地の賢明な利用とそのための管理方法に統合するための手引きのいくつかを紹介する.その手引きは「湿地:水,生命及び文化」をテーマに開催される第8回締約国会議(2002年11月スペイン・パレンシア)で検討されるものである.

 2002年の世界湿地の日のために本ファクトシートを準備するにあたり,条約事務局では,考古学や民族生物学,湿地生態学の研究者,世界の信仰的リーダーとともに保全に取り組む人々,世界遺産条約のアドバイザーなどからの専門的知識や,湿地と結びついた文化遺産の多面的な性質についての本質的な証言を求めた.

世界湿地の日を祝って,ご自分の湿地にある文化遺産に近づいてみよう.その結果を条約事務局まで知らせてください.そうすれば将来の情報集に盛り込むことができます.

私達がいま湿地を利用する方法が将来にはその文化遺産になるということを考えよう.あなたなら将来の世代にどんな遺産を残しますか?



表紙

もくじ

  1. もくじとはじめに
  2. 湿地と人々の歴史
  3. 太古より食物や原材料の供給源だった湿地
  4. 湿地で働く−仕事の手段
  5. 文化遺産−その管理への挑戦
  6. 湿地−文化的景観
  7. 世界遺産条約と文化的景観,そして湿地
  8. 湿地−学習と余暇のための文化的景観
  9. 湿地と精神生活
  10. 湿地−芸術や文学,民俗的着想
  11. 湿地の文化遺産とラムサール条約

裏表紙

謝辞

 世界湿地の日のために本シートを準備するにあたり,条約事務局では,考古学や民族生物学,湿地生態学の研究者,世界の信仰的リーダーとともに保全に取り組む人々,世界遺産条約のアドバイザーなどからの専門的知識や,湿地に関連する文化遺産の多面的な性質についての本質的な証言を求めた.

条約事務局は特につぎの個人ならびに団体に対して,この情報集の準備に惜しみない援助をいただいたことを感謝したい:

Bryony Coles 教授,英国エクセター大学考古学部,
Jorge Cruz 博士,バレンシア民族学博物館,スペイン,
Mohammed El Ayadi 博士,バレンシア大学地中海湿地研究本部(SEHUMED),スペイン,
Rolf Hogan 氏, IUCN
Maryland Morant 女史,SEHUMED,スペイン,
Richard Prime 氏,英国信仰保全同盟(ARC),
Maria José Viñals 博士,SEHUMED,スペイン,および,
スペイン環境省.

条約事務局はまたさまざまな方法で援助いただいた次の方々や機関に謝意を表わす:

Maria Anagnostopoulou 博士,ギリシャビオトープ湿地センター,
Oscar Andreu 氏,SEHUMED,スペイン
Jim Corven 氏,西半球シギチドリ類保護区ネットワーク(WHSRN),米国,
Tim Dodman 氏,国際湿地保全連合アフリカプログラム,セネガル,
Asuncion Garcia 女史,バレンシア民族学博物館,スペイン,
Hans Joosten 博士,グライフスヴァルト大学,ドイツ,
Denis Landenbergue 氏,WWFインターナショナル,スイス,
Julia Langer 女史,WWFカナダ,
Adrian Olivier 博士,欧州考古学評議会,ベルギー,
Martin Palmer 氏,ARC
Raymond Pouget 氏,旧北区西部渡り鳥協会(OMPO),フランス,
Maria Sanchez 女史,SEHUMED,スペイン,
Steve Szabo 氏,オーストラリア環境省,
高橋 妙子 女史, 財団法人 地球環境戦略研究機関,
Harri Vasander 博士,ヘルシンキ大学泥炭地生態学研究グループ,フィンランド,および,
WWFブラジル.

世界湿地の日のためのこのすばらしい資料は,ダノン・グループのエビアン・プロジェクトの資金提供を受けて作成された.


琵琶湖ラムサール研究会 [英語原文:Ramsar Bureau. 2001. The cultural heritage of wetlands. Ramsar Information Pack for World Wetlands Day 2002, 11 sheets. [on-line] http://ramsar.org/wwd/2/wwd2002_infopack_pdfmenu.htm.
[和訳と編集:琵琶湖ラムサール研究会,2005年.条約事務局のHPでは,各シートは個別のPDFファイルでのみ掲載されており,上記のページにインデックスされているが,この和訳では各シートのHTMLページと全頁を一括したPDFの形で掲載する.]

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