Swan 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう●第3部●琵琶湖での活用

ラムサール条約の戦略計画に照らした琵琶湖の現状と課題

村上 悟宮林 泰彦須川 恒,琵琶湖ラムサール研究会

ラムサールCOP10のための日本NGOネットワーク(編)2008年.ラムサールCOP10資料集「湿地の生物多様性を守る —湿地政策の検証—」への報告原稿,了解を得て再録.同資料集はラムサール・ネットワーク日本のサイトにPDFファイルで収録されている.

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要約

筆者らは、ラムサール条約が求める湿地の保全と賢明な利用の観点から琵琶湖での取組みの現状を整理し、今後の課題を明らかにするために、同条約の「戦略計画」(COP10で検討される次期「2009−2014年の戦略計画」(決議案.1))に照らして琵琶湖における取組みを分野横断的に評価することを試みた(表1)。
 表1に示すように、琵琶湖における既存の取組みは何れも、同条約がその戦略計画に組み立てる湿地の保全と賢明な利用の枠組みに位置づけることが可能であるが、同条約が包括的な湿地保全の枠組みを持っていることへの認識が多くの関係者の間に未だ広がっておらず、それらの取組みにおいて同条約が効果的に用いられる機会はほとんどない。
 ここで試みたように、同条約の戦略計画と対比させて検討することを通じて立場や分野を超えて包括的な視点から共通の課題認識を形成していくことが既存の取組みの部門横断的な再統合を実現するためには必要不可欠である。また、どのような取組みが欠けているかのギャップ分析が可能となり、同条約が各戦略分野で整備を進めている科学的技術的な手引き等のツールを各取組みに組入れてゆくことが可能となる。

English Summary

Reviewing wetland conservation in the lake Biwa-ko in line with the Ramsar Strategic Plan

Satoru Murakami, Yoshihiko Miyabayashi, and Hisashi Sugawa, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai

Summary

We looked at the current situation in the conservation of wetlands in and around the lake Biwa-ko across relevant sectors, in line with the Strategic Plan of Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971) using the draft plan for next triennium 2009-2014 (Annex to the Draft Resolution X.1), to identify challenges with a view to the conservation and wise use of wetlands under the Convention (Tab. 1).

Existing conservation arrangements and efforts found in the area can generally be placed in the framework of conservation and wise use as developed in the Ramsar Strategic Plan, as shown in Tab. 1. Those arrangements, however, has had little evidences of effective application of provisions of the Convention concerning the conservation and wise use of wetlands, mainly because of poor recognition by most relevant people of the Convention as having such comprehensive framework.

It is suggested that fostering common recognition under the comprehensive framework among relevant people in different positions and sectors through such review, as exemplified here with using Ramsar Strategic Plan, must be essential to integration of existing arrangements and efforts into cross-sectorial achievements. Such review must further make gap analysis possible to realize insufficient arrangements to be sought, as well as bring opportunities to incorporate the tool kit of a series of scientific and technical guidelines and guidance the Convention has developed into those current arrangements and efforts towards the achievement of conservation and wise use of the wetlands in the area.

Submission

This paper was submitted in July 2008 to the Japan NGO Network for Ramsar COP10, for their report to the COP and NGO Conference on the status of wetlands in Japan and challenges to wise use of them.

第1節

 1993年にラムサール条約湿地に指定された琵琶湖は、その面積や流域人口の規模、独特の生態系とそれに根ざした生活文化、湿地の開発と保全の歴史等、さまざまな面において日本の湿地保全を語る上で欠かすことのできない湿地である。

 琵琶湖では、水資源開発に伴うさまざまな負荷、特に19721996年に進められた「琵琶湖総合開発計画」(京阪神等約1,400万人の生活や活動等を支える水資源利用)等によりその生態学的特徴に大きな変化が起こり、1977年の赤潮発生を契機とした住民運動を皮切りとして、官民挙げた環境保全のための施策が進められてきた。

 しかし、その流域人口の大きさや流域面積の広さ、関連分野の多様さ故、これまでの取り組みはまだ、琵琶湖の生態学的特徴の変化を食い止めるに十分と言える状態に至っていない。

 そこで琵琶湖ラムサール研究会では、ラムサール条約が求める湿地の保全と賢明な利用の観点から琵琶湖での取り組みの現状を整理し、今後の課題を明らかにするために、ラムサール条約が定める「戦略計画」に照らして琵琶湖における取り組みを分野横断的に評価することを試みた。

表1.
琵琶湖における取組みの評価。

 その結果が、下の表1である。この表はあくまで、現時点において執筆者が把握している限りの情報によって構成したものであり、今後、多くの方々の目に触れ情報が修正追加される中で内容の充実がはかられるたたき台として、ご覧いただきたい。

 なお、同様の取り組みとしては、安藤(2000)が2000年時点における琵琶湖での取組みを当時の「ラムサール条約戦略計画19972002」に照らして検討している。本稿では、それ以降の新たな取組みを情報に加えると共に、来るCOP10で検討される次期「20092014年の戦略計画」(決議案.1)に照らして検討した。

第2節

 表1に挙げた既存の取組みは、いずれもラムサール条約が提供する湿地の保全と賢明な利用の枠組みに位置づけることが可能な面を多分に含んでいる。しかし、ラムサール条約が包括的な湿地保全の枠組みを持っていることへの認識が多くの関係者の間において広がっておらず、未だに“ラムサール条約水鳥とその生息環境の保全のための条約”という時代遅れの認識が一般的である(例えば2007年滋賀県刊「琵琶湖ハンドブック」におけるラムサール条約の位置づけを参照)。そのため、行政施策の中でのラムサール条約の位置づけが小さく、市町やNGOの取り組みの中でも、ラムサール条約が効果的に用いられる機会がほとんどない。

 ラムサール条約では、目録・評価・モニタリングや河川流域管理、湿地CEPA(対話・教育・参加・啓発)など、さまざまな分野(戦略計画の各戦略項目でもある)にわたって湿地の保全と賢明な利用を達成するためのさまざまなツールが整備されており、これらの枠組みやツールは、決議・勧告や科学的技術的な手引きとして明文化されている。琵琶湖の保全に関わってこられた方々やこれから取り組もうとされる方々が、「戦略計画」を入り口としてこれら各分野の文書に向き合ってくださるきっかけとして、本稿が役立つことを願っている。

 そうした地道な検討を通じ、立場や分野を超えて包括的な視点から共通の課題認識を形成していくことが、『条約に関する認識を湿地生態系管理の唯一の仕組みとしての可能性に焦点を当てて全てのレベルで高める』(戦略計画案の戦略項目1.5)ことの実現や、統合的(湖岸)沿岸域管理、河川流域管理、地下水管理を含む「統合的水資源管理」(同戦略項目1.7)といった部門横断的な視点による既存施策の再統合を実現するために必要不可欠な、足場固めのプロセスではないだろうか。


[編注]
右の表1では,戦略項目ごとに, ⇵  ボタンをクリックすると同決議案の当該項目のテキストが開閉します.
右の表1の記述のなかで外部資料等が参照できるものは「」の記号を置いて、リンクを張っています。

表1.「ラムサール条約20092014年戦略計画」(決議案.1)の戦略分野に照らした、琵琶湖における湿地保全の取組みの評価。

各戦略分野の内容は同決議案を参照のこと。
琵琶湖に直接関係のない分野については、省略した。
安藤(2000)以降の新たな取り組みには下線を引いた。
最終目標1.湿地の賢明な利用   ⇵ 
戦略1.1.湿地の目録と評価   ⇵ 
■既存の措置や取組み
特定の湿地タイプ(内湖、ため池)や特定の分類群(魚類)等に関する研究や現状把握を目的に、さまざまな湿地目録あるいは湿地目録に類する物が作成された。
■課題
さまざまな湿地タイプを含んだ包括的な湿地目録を作成すること。
現状把握と共に湿地保全上の課題を示すこと。
情報を入手しやすくすること(ホームページ等での公開等)。
情報を定期的に更新すること。
■進行中の重要な取り組み
琵琶湖ラムサール条約連絡協議会と琵琶湖ラムサール研究会の連携により、市町単位での湿地目録作成の準備が進められている。
戦略1.3.政策、立法、制度   ⇵ 
■既存の措置や取組み
さまざまな条例を県独自に制定し、施行している。これらの中には、他府県の条例や国の法律のモデルとなったものもある。
滋賀県環境基本条例 (第1次1996年3月公布、第2次2004年3月策定
滋賀県環境学習の推進に関する条例 (2004年3月公布)
水質汚濁防止法に基づく上乗せ条例 (1972年制定)
富栄養化防止条例[滋賀県琵琶湖の富栄養化の防止に関する条例 ](1979年10月公布)
滋賀県公害防止条例 (1972年12月公布)
滋賀県生活排水対策の推進に関する条例 (1996年3月公布)
ヨシ群落保全条例[滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例 ](1992年4月公布、2002年12月改正公布
ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例 (2006年3月公布)とそれに基づく「生息・生育地保護区」の指定(2008年2月:「地蔵川ハリヨ生息地保護区」 0.4 ・「山門湿原ミツガシワ等生育地保護区」 35.3 指定告示・区域図 (PDF 836概要 (PDF 459
琵琶湖森林づくり条例 (2004年3月公布)・風景条例[ふるさと滋賀の風景を守り育てる条例 ](1974年7月公布)
クリーン条例[滋賀県ごみの散乱防止に関する条例 ](1992年3月公布)
滋賀県大気環境への負荷の低減に関する条例 (2000年3月公布)
琵琶湖ルール条例[滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例 ](2002年10月公布)
滋賀県環境影響評価条例 (1998年12月公布)
環境基本条例の制定
制定済みの市町:
大津市 (1995年)、 草津市 (1997年)、 守山市 (2006年)、 栗東市 (2002年)、 野洲市 (2004年)、 甲賀市 (2006年)、 湖南市 (2007年)、 東近江市 (2006年)、 近江八幡市 (2001年)、 竜王町(2001年)、 彦根市 (1999年)、 米原市 (2006年)、 長浜市(1999年)、余呉町(2007年)、 高島市 (2005年)。
策定作業中または未策定/未確認の町:
安土町、日野町、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町、虎姫町、湖北町、高月町、木之本町、西浅井町。
琵琶湖およびその集水域の湿地保全に役立ちうると考えられる市町による条例の制定
大津市の自然環境の保全と増進に関する条例 (1975年、自然保護地区等の指定など)
草津市の良好な環境保全条例 (1978年、自然環境保全計画の策定や自然環境保全地区の指定など)
ほたる条例(守山市 米原市 虎姫町 湖北町
東近江市にぎわい里山づくり条例 (2006年)
東近江市自然環境及び生物多様性の保全に関する条例 (2007年)
高島市未来へ誇れる環境保全条例 (2007年、自然環境の保全、循環型社会、地球環境の保全を含む)。
国の法律に関する指定や国の法律に基づいた各種施策
[鳥獣保護法]県設鳥獣保護区の設置(2001年11月2011年10月:「琵琶湖」鳥獣保護区 72,266 他)[範囲図:狩猟者必携その1 (PDF 10その2 (PDF 10
[自然公園法]琵琶湖国定公園の設置(1950年7月、現在 97,601 (滋賀県内 95,958 +京都府内 1,643 )内特別地域 94,261 範囲図
[湖沼水質保全特別措置法]指定湖沼(1985年12月)
[水質汚濁防止法]特定施設からの汚濁排水規制
■課題
各種枠組みや事業の成果を評価すること。
各種の行政的な枠組みを戦略的に展開する枠組みや体制をつくること。近似した制度や施策が異なる行政分野(環境、農業、河川、教育、市民参画等)で独自に策定・実施されるため、現地での混乱を招いている。
環境影響評価条例制定(1998年)以前に「滋賀県環境影響評価に関する要綱」に基づいて行われた環境影響評価を見直すこと。
戦略的影響評価を導入すること。
■進行中の重要な取り組み
滋賀県持続可能社会研究会により「持続可能社会の実現に向けた滋賀シナリオ 」が策定され、目標設定型の計画が示された(2030年までに「汚濁物質流入負荷量の半減」「ヨシ群群落面積の倍増」「美しい湖辺域の倍増」等)。
戦略1.4.湿地の恩恵サービスの部門横断的認識   ⇵ 
■既存の措置や取組み
滋賀県立琵琶湖博物館 では、自然、歴史、社会の分野横断的に琵琶湖を理解できる展示を行っている。
■進行中の重要な取り組み
国の重要文化財のカテゴリに新たに加えられた「重要文化的景観」として、「近江八幡の水郷 」と「高島市海津・西浜・知内の水辺景観 」が選定された。
戦略1.5.条約の役割の認識   ⇵ 
■既存の措置や取組み
条約の枠組みに基づいて制定された条例はない。制度や施設としては、以下のものが見られる:琵琶湖ラムサール条約連絡協議会 (県と琵琶湖沿岸17市町で構成、2000年2月設立)、琵琶湖水鳥湿地センター・湖北野鳥センター 高島市新旭水鳥観察センター
琵琶湖水鳥湿地センターに条約の文書の日本語訳を HTML で閲覧できるウェブサイト「ラムサール条約を活用しようHPが構築された(琵琶湖ラムサール研究会編集)。
■課題
「ラムサール条約水鳥とその生息環境の保全のための条約」という認識から「ラムサール条約湿地保全の包括的な枠組み」という認識への転換を広げること。
戦略1.6.科学に根ざした湿地管理   ⇵ 
■既存の措置や取組み
大学(滋賀県立大学 滋賀大学 など)、研究所(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター など)、博物館(琵琶湖博物館 多賀町立博物館 能登川町立博物館 など)等がある。
戦略1.7.統合的水資源管理   ⇵ 
■既存の措置や取組み
淀川水系流域委員会 の設置
滋賀県ヨシ群落保全条例(1992年4月公布)に基づく保全区域 滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例(2002年10月公布)によるプレジャーボート航行規制水域
棚田基金事業 (PDF 180
琵琶湖森林づくり県民税 (2006年4月)
■課題
流域社会全体での合意形成と連携のしくみを構築すること住民参加型河川管理のモデルとされた淀川水系流域委員会であったが、2008年7月現在、設置した国土交通省が既存路線と異なる意見を提示した委員会に対して態度を硬化させ、住民と行政との対話が閉ざされた。
琵琶湖と流入河川との関連を見渡した施策の展開をするために、行政の分野横断的施策を策定実施すること。
統合的な(湖岸)沿岸域管理体制を構築すること(条約の指針を満たすゾーニング措置等)。
戦略1.8.湿地再生   ⇵ 
■既存の措置や取組み
琵琶湖研究所(現:滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)によるプロジェクト研究「内湖の生物多様性維持機構の解明」(20012004年)などにより内湖再生の可能性が探られている。
ヨシ群落保全条例(2002年12月改正公布)に基づく「琵琶湖湖北地域ヨシ群落自然再生事業 」が2005年度から進められている。
早崎内湖ビオトープ で再生実験が開始されている。
水辺エコトーンマスタープラン 」の策定。
滋賀県琵琶湖再生課 の新設。
■課題
湿地再生を担う人材の育成、資金調達の仕組み形成、技術の開発。
戦略1.9.外来侵入種   ⇵ 
■既存の措置や取組み
滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例(2002年10月公布)による、外来魚の放流ならびにキャッチ&リリースの禁止
国の外来生物法(2004年6月公布)ならびに滋賀県ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例(2006年3月公布)のもとに、琵琶湖を含む滋賀県内での取組み が進められている。
滋賀県内の生態系に悪影響を及ぼすおそれのある外来種が「滋賀県で大切にすべき野生生物」2000年版 にリストアップされている。
■課題
外来侵入種の問題が、「湿地生態系」や「湿地文化」全体に対する大きな脅威であることの認識を広めること。
戦略1.10.民間部門   ⇵ 
■既存の措置や取組み
WWF「琵琶湖お魚ネットワーク」プロジェクトへの特定企業からの参加・支援
ヨシの利用を促進しようとする取組み。
大企業による市民活動への資金支援。
■課題
既存の事業を改良することによる琵琶湖の保全への貢献(観光業者によるCEPAへの参画、小売り業者による低環境負荷商品の普及参画等)。
事業所が事業の中で蓄積保有している人材、技術、資材、空間、販売ルート等の活用。
社員の環境学習・社会貢献活動としての湿地保全活動への参加(ISO 14001 認証取得を行っている事業所を中心に)。
戦略1.11.奨励措置   ⇵ 
■既存の措置や取組み
自主的な市民活動に対する各種の活動支援や助成制度。
■課題
湿地保全のための課題に対する奨励措置をつくり、湿地に悪影響を与える危険性のある奨励措置を抑制すること。
最終目標2.条約湿地   ⇵ 
戦略2.1.条約湿地の指定   ⇵ 
■既存の措置や取組み
琵琶湖の面積 67,025 のうち、65,602 が条約湿地に指定(1993年6月)されており、これは琵琶湖国定公園の特別地域の範囲内にあり、自然公園法によって条約に対する国の保全義務が法的に担保されることになっている。県設琵琶湖鳥獣保護区もこの範囲をカバーしている。
■進行中の重要な取り組み
2008年西の湖が拡張予定。
戦略2.3.湿地管理計画策定−新たな条約湿地   ⇵ 
■課題
琵琶湖総合保全整備計画「マザーレーク21計画 」を、条約の指針を満たすように再検討し、湿地生態系の保全管理にかかる計画に改訂すること。
戦略2.4.条約湿地の生態学的特徴   ⇵ 
■既存の措置や取組み
水質や生物相の変遷に関する多数の調査および研究。
■課題
生態学的特徴の変化の観点から総合的な現状把握を実施すること。
生態学的特徴を維持するための管理計画を策定すること。
部門横断的な湿地管理委員会を設置し機能させること。
戦略2.5.条約湿地管理の効力   ⇵ 
■課題
条約の「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン 」を県内の重要な湿地の選定や保全に役立てること。
戦略2.6.条約湿地の現状   ⇵ 
■課題
滋賀県内各地の湿地における生態学的特徴の変化を検出する仕組みをつくること。
生態学的特徴の変化を条約に通報し対処する仕組みをつくること。
最終目標3.国際協力   ⇵ 
戦略3.1.多国間環境協定等との相乗作用   ⇵ 
■課題
生物多様性条約、気候変動枠組条約、世界遺産条約(自然遺産)などのもとに位置づけられる取組みと、ラムサール条約に基づく湿地保全の取組みとの連携により、相乗効果を創り出すこと。
戦略3.2.条約の地域イニシアティブ   ⇵ 
■既存の措置や取組み
東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップの水鳥重要生息地ネットワーク(ガンカモ類)に県と3市町(湖北町・高月町・高島市(旧新旭町))が参加している。
■課題
越冬ガンカモ類について質の高い個体数分布情報の把握をすること。全国一斉のガンカモカウントには情報の信頼性に不十分な点があった。
環境省のモニタリング1000ガンカモ類調査を通して、アジア水鳥センサスへの情報発信を行う。
戦略3.3.国際的援助   ⇵ 
■既存の措置や取組み
世界湖沼会議 (第1回 1984年・第9回 2001年)、第3回世界水フォーラム (2003年)、国際湿地再生シンポジウム (2006年)の開催。
(財)国際湖沼環境委員会 ILEC)の設立(草津市、1986年)、国連環境計画(UNEP国際環境技術センター の誘致(草津市、1992年)、生態学琵琶湖賞 の創設(1991年)。
県と姉妹提携する海外の行政組織と交流や研修の機会の提供があり、中国の条約湿地である洞庭湖自然保護区の職員が滋賀県で長期研修したことがある。
最終目標4.制度的能力・効力   ⇵ 
戦略4.1.対話・教育・参加・啓発(CEPA)   ⇵ 
■既存の措置や取組み
湿地センターとしては、琵琶湖水鳥湿地センター・湖北野鳥センター (環境省設置1997年5月開設の前者と町設置1988年11月開設の後者の併設・ともに町管理)と、高島市新旭水鳥観察センター (旧新旭町1998年12月設置、指定管理者制度2006年)の2ヵ所。湿地CEPAに活用しうる施設として、博物館(琵琶湖博物館 多賀町立博物館 能登川町立博物館 など)、大学(滋賀県立大学 滋賀大学 など)、研究所(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター など)がある。
県の学習船「うみのこ (PDF 156」を用いたフローティングスクール(1983年から)。
琵琶湖ラムサール条約連絡協議会主催による水鳥一斉観察会
琵琶湖ラムサール研究会によるラムサール条約の普及活動
KODOMOラムサール」プロジェクトへの参加(伯母川研究こどもエコクラブ『伯母Q五郎 』(草津市志津小学校)、2007年9月89日KODOMOラムサール<琵琶湖>湿地交流 (主催:ラムサールセンター、ハートランド推進財団、東近江水環境自治協議会)。
■課題
琵琶湖およびその集水域でのCEPA計画を策定すること。
湿地保全に関わる各主体がどのような研修を必要としているかを明らかにすること。
■進行中の重要な取り組み
滋賀自然環境学習・保全ネットワークとの連携によるラムサール条約に関する入門教材の開発。
滋賀県主催の「こども環境特派員」派遣事業(韓国でのCOP10参加を契機とした、県内の子どもたち同士のネットワーク形成)
戦略4.4.国際団体パートナー(IOP)等との協働   ⇵ 
■既存の措置や取組み
琵琶湖はWWF「グローバル200」のエコリージョン に選定され、「琵琶湖お魚ネットワーク 」プロジェクトが進められている(2004年)。
琵琶湖はバードライフ・インターナショナルの「重要野鳥生息地(IBA)」のひとつ に選定されている。
最終目標5.加盟国   ⇵ 
戦略5.1.加盟国   ⇵ 
■課題
(財)国際湖沼環境委員会(ILEC)や、国連環境計画(UNEP)国際環境技術センターを、ラムサール条約への貢献に活かすこと。

文献

安藤元一.2000.
ラムサール条約登録湿地として見た琵琶湖.琵琶湖研究所所報 第18号 116-122頁.[on-line] http://www.biwa.ne.jp/˜nio/ramsar/sec1g.htm
琵琶湖ハンドブック編集委員会編.
2007.琵琶湖ハンドブック.滋賀県,大津市,250頁.[on-line] http://www.pref.shiga.jp/biwako/koai/handbook/
琵琶湖ラムサール研究会.
2001-2008.ラムサール条約を活用しよう.[on-line] http://www.biwa.ne.jp/˜nio/ramsar/projovw.html
ラムサール条約
第10回締約国会議(2008年1011月)決議案.1「ラムサール条約20092014年戦略計画」琵琶湖ラムサール研究会訳.[on-line] http://www.biwa.ne.jp/˜nio/ramsar/cop10/cop10_dr01_j.htm

[出典]
村上悟・宮林泰彦・須川恒.2008.ラムサール条約の戦略計画に照らした琵琶湖の現状と課題.In: 花輪伸一開発法子柏木実古南幸弘羽生洋三堀良一浅野正富(編)「湿地の生物多様性を守る —湿地政策の検証—」: 5562頁.COP10のための日本NGOネットワーク,2008年12月25日発行.on-linehttp://www.ramnet-j.org/2009/07/24/081215shichi-seisaku.pdf (同報告書一括, 3.4 , ラムサール・ネットワーク日本 2009年7月24日掲載).

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