日々、在りしことども



夏初月三十一日
酒を飲まないと確かに体重は落ちていく。が、食を控えて頭が回らなくなるのは間違っている。
――生きて死ぬ身だと痛飲を決めた日に、酒屋が定休。さて。
夏初月二十九日
麦秋。ぶらりと出て、暑気を浴びる。
ここしばらくぼそぼそ生きてはいたが、書くほどの内容もなし。まあ、生きている。
夏初月二十二日
焼き蕎麦の安売りを買い逃して、ちと傷心。

それなりに使い込んできた紅茶ポットの取っ手から、ちりちりと音がする。陶磁器の割れ面を掏り合わせるような。
――壊れるまで使い続けるつもりだが、その最後の瞬間に如何なる惨事が起きるか。取っ手下方のひびを 見ながら、迷う初夏の日。
夏初月二十一日
不毛。
夏初月二十日
薄い出汁で煮た筍に木の芽味噌を付けて食す。美味。季節良し。
オリーブ油で揚げた大蒜を一欠け、塩で食せばたちまち肩凝りが飛ぶと聞き、調理。ほか、麻婆豆腐や餃子を並べてみたところ、途端大蒜の臭いがしなくなった。――まあ鼻が馬鹿になっても茶の香りは分かるからいいのだが。
夏初月十九日
不毛。
首回りが痛い。俗に言う肩凝りだが、筋肉痛が数日の潜伏期間を置いて来るようになった以上、原因が判断し辛い。
いい加減な生活によるものか、寝違えたのか、はたまた気紛れな体操のし過ぎか。さて。
夏初月十八日
歩いてすぐの近所に酒のディスカウント店が開店したため、御祝儀に行ってくる。
といってもあまり飲まないので、ウイスキーは後ろ髪を引かれつつも断念。ワイン一リットルとブランデー一瓶、しめて千円ちょいを包んで、開店記念品などを頂いて帰る。

他、近場の書店が新刊をのんびり入れるようになったと嘆きつつ、本日以上。
夏初月十六日
昨日から何もしていない気もするが、一応記録。
筍の土佐煮の味付けが、満足いく出来だった。以上、些細な幸せ。
ここ半年ほどの小説関連データのバックアップが存在していないことに気付く。私は身軽になったのですよ、と一人部屋の中空を見つめ緩く微笑む。
掛け軸が一枚の紙の中心に作品を貼り付けるのではなく、中央の作品に向かって上下左右から次々に部品をくっつけ、何度も裏打ちという大きくべた貼りの紙補強をするのだと知る。生涯、必要なかろう純粋知識。

本日も無為。
夏初月十五日
鬱小説の流行を末法思想まで遡り、シェークスピアや古代ギリシャ悲劇を思い浮かべて、悲劇という言葉そのものが昔からそういうジャンルがあった証拠ではないかと思い至る。

図書館。
夏初月十四日
多くの情報が消えており、サイトの更新も何故かうまくいかず(こちらは十年近く使ってきたツールを新調して解消)、ディスプレイがちらつき不快。

まあ、いい。新しいワープロに馴染むのだからこんなものか。
夏初月十三日
とりあえず新しいパソを据え付ける。昇天したのがノートだったため、データ吸い出し方法の見当も つかず、かなり不便になろうか。まあ、ネット閲覧とワープロ機能さえあれば文句は控えるが――

……ああ、今回。文章も少し欠けてるや。

鼠や鴉の習性並みに書いた文章を保存していたつもりだが、今回、少々欠けていると今更気付く。
ああ……
夏初月十二日
体重がはっきりと減った。体の動きが違うと自覚できる。

問い:何をしましたか?
答え:ここ一週間ほど酒を飲んでいません。

自分が改善すべきだったのは食生活ではなかったのか。
健康になる方法は分かった。ただ、これはアイデンティティに関わる問題なので、慎重に検討していきたいと思う。
夏初月十一日
部屋を掃除する。ここ長らく年末の大掃除など記憶に無く、精々四角を丸く掃く程度。
それでも問題ないと思っていたが、実際に隅々まで行ってみた感想。

――なんで今まで病気にならなかったんだ?

深更、やや体調を崩す。掃除で部屋の汚濁を浴びたせいであろう。
夏初月十日
事故とは、ほんの十数分が明暗を分ける。
外出より戻って夕餉の支度中、今しがた通ったばかりの道で事故と聞く。裏手の信号を夕日方向に数百メートル。田植えが終わったばかりの水田の中。
道のこちら側にちょこんと落ちている、泥遊びで色の変わった軽自動車。あちら側に、鼻っ面だけ田に沈め、道路端に尻を高々とかかげている軽トラック。
いやー怪我人もなさそうで、なんかのどかだ。

大正の流行の一つに、鬱小説なるものがあったと知る。流行なんてものは、少し大きな目で見れば少しも流行廃りなどしていないのかもしれない。
夏初月九日
書店に憎悪。雨、やや肌寒し。
夏初月八日
たこ焼きセット。
夏初月七日
パソ、壊れる。漢字変換が出来なくなる。どうやら、熱にやられた模様。
まあ、仕方ないといえば仕方ない。そもそも、動かなくなって昇天したかと半年ほど放置していた ノートの、電源をたまたま入れたら何故か動いたので使っていたまで。冷静に振り返らずとも、今まで持っていたのがむしろ不可思議。

と、思っていたら完全に昇天なさった。……今回は結構、データを保存していなかった気がするのだが……
夏初月六日
雨、特に無し。
夏初月五日 たっぷり育てと紫外線が降り注ぐ。
朝、ズボンを買いに出る。不精な私のこと、それこそもうそろそろどうしようもなくなってきたので、 買ったその場ではいて帰るぐらいの心持ちで出たのだが、これにしておこうかと店で選んだジーンズの ――腹が入らない。

後少し。しかし店にそれ以上大きなサイズのものは無く、入る他のは別に欲しいものでもない。
結論。人はズボンなどはかずとも生きていける。
夏初月三日
嫌な意味で規則正しい生活のため、全く動けていない。
一年で最も日差しのきつい時期、故に紫外線の食い溜めでもしておくべきなのに。
花粉症、稀にまだ少し有り。まあ、誤差か名残で済む程度。
蛙、けたたまし。マッスルは就寝前の運動と納豆が一番なのか。

このところ何も無く、本日以上。
夏初月二日
青茶関係が切れて久しい。そろそろ注文する頃合か。
家用の茶葉を開封する。定番のアールグレイより、ダージリンのセカンドフラッシュが味わいが良かった。
他に書くようなことも無し、本日以上。
夏初月一日
ここしばらくの暑さが嘘のように冷たい雨。
他、特に無し。
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