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ラムサール条約 第9回締約国会議
文書25:CEPAプログラム

日本語訳:琵琶湖ラムサール研究会,2005年.  PDF (133 zip

条約事務局原文: 英語   フランス語   スペイン語 


「湿地と水:命を育み,暮らしを支える」
"Wetlands and water: supporting life, sustaining livelihoods"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第9回締約国会議
ウガンダ共和国カンパラ,2005年11月815日

ラムサール条約第9回締約国会議文書25
Ramsar COP9 DOC. 25
情報文書

条約の対話・教育・普及啓発(CEPA)プログラムの2003−2005年における実施

条約事務局による注釈

1.常設委員会第31回会合は,『条約事務局のCEPAプログラム担当者に対して,20032008年のCEPAプログラムの前半期における実施状況についてCOP9に情報文書を準備するように』要請した(同委員会決定SC31-21).

2.これに関連して,常設委員会は条約事務局に対して同委員会決定SC31-20において,条約のCEPAプログラム実施するための戦略的なアプローチを確保し,かつひきつづき優先度の変化に対応できるように監督するパネルを常設委員会に設立するための決議案DR19訳注)を準備するように要請した.

3.CEPA監督パネルが決議案19のもとに設立された際には,その審議において,この報告の所見,特に第2章で特定される暫定的な主要実施分野について検討されるであろう.

.はじめに.

1.条約の現在のCEPAプログラムは20032008年の期間のものとして決議Ⅷ.31によって築かれた.この決議の附属書である指針は湿地CEPA活動の主要な行動者が多数特定されているが,本報告では次のふたつの行動者について特に焦点を当てる.すなわち,締約国と条約事務局である.もちろん,条約の国際団体パートナーや他の各国のNGOや国際的NGOが実施する湿地の賢明な利用を支えるための数多くのCEPA活動が認められるのであるが.

2.条約事務局にはCEPAプログラムに関するふたつの役割がある.ひとつは締約国各国がそれぞれの国内プログラムを実施することを容易にすることであり,いまひとつは自身が直接的なCEPA行動をとることである.本文書ではこれらふたつの役割の両方について,その進捗状況を報告する.締約国の実施状況についての情報は主に,COP9に提出された国別報告書の分析より得られる.所定の期限までに届けられた110か国の報告書のうち,87が完全なものであるが,締約国から報告書以外で直接寄せられた情報によって条約事務局が把握した国内活動についても加えることができる.

3.国別報告書からの統計では概して条約地域間の一貫性が顕著に見られるため,それに続く分析ではたいてい地球規模での数値を引く.が,条約地域間で有意な違いが見られる場合は言及する.比較の目的で,本報告は新熱帯区と北米のふたつの条約地域をひとつにまとめて「南北アメリカ」とする.3か国しかない北米地域の小さな標本サイズによる影響を排除するためである.オセアニア地域からは2か国の国別報告書が提出されたが,そのうち1か国は最近の加盟国である.よってオセアニア地域は条約地域間での比較に供さない.

4.本報告でプラスの反応と扱ったのは,国別報告書で『Yes』,『部分的に』,『更新中』,『進行中』といった記述がされているものである.

5.本報告の主要部[第3章]は,決議.31に築かれたCEPAプログラムの「実施目標」のもとに構成される.

.主要な将来的CEPA実施課題

6.次のような主要課題について,将来の実施において改善が必要あると,分析から特定された:

7.CEPA監督パネルが決議案19のもとに設立された際には,その審議において,条約のCEPA実施の将来の優先事項を築き指導するための焦点として,これらの主要課題が検討されるであろう.

COP9国別報告書におけるCEPAに関する締約国の反応ならびに条約事務局のCEPA活動の分析

実施目標1.1 CEPAのプロセスを、条約の政策立案、計画策定、実施のすべてのレベルに組み入れる。

Ⅲ.1.湿地CEPAを、湿地その他の適切な部門、たとえば、生物多様性保全、水管理、漁業、貧困減少などの部門ごとの政策、戦略、計画及びプログラムに組み入れる(行動1.1.2)

8.地球規模で71%の締約国が,少なくともどれかのレベルで進んでいるというプラスの反応を示した.記述回答部では,生物多様性戦略や国家環境計画・政策といった部門の政策に湿地CEPAが統合されているといった記述が頻出し,また欧州ではEU水枠組指令やナチュラ2000に関連した地域政策に言及される.

9.国の湿地政策とCEPAについて特に言及した反応に焦点をあてると,11か国(カンボジア,中国,コロンビア,コンゴ,フランス,インドネシア,マリ,ポーランド,スロバキア,タイ,トルコ,ウガンダ)が国家湿地政策にCEPA事項を組み入れていると報告し,さらに4か国が同様の政策案に組み入れていると報告している(アルゼンチン,ロシア,スウェーデン,ウクライナ).加えて17か国が国家湿地政策を策定中であり,10か国は策定を計画している旨の報告であった.この期を逃さず,CEPAを国の湿地政策に効果的に組み入れることが,効力をもったCEPAプログラムを策定するために必須の出発点であると強調できる.これら41%の締約国は適切な国家湿地政策をもって既存の政策を見直し,それらが湿地CEPAを適切に扱うことを確保することが奨励される.

10.重要なことにペルーがつぎのようなコメントを記した:『CEPAを主題として特化した作業グループの活発な働き無しに国レベルでCEPAを政策等に組み入れることはできない』.これは,すべての締約国にとって,適切に訓練されたCEPA担当窓口ならびにCEPA特別部会を任命することの重要性を指摘するものである.

Ⅲ.2.決議.31の付属書で定められた作業計画を実施するために、STRP内にCEPA専門家作業部会を設立する(行動1.1.3)

11.2003年2月の常設委員会第29回会合は次の決定を行なった:

12.STRP第11回会合において,CEPA専門家グループを国際湿地保全連合のもとに設立し,国際湿地保全連合自身とラムサール条約,特にSTRPの両者にとって必要な事項を満たすことが合意された.

13.2003年中に,オーストラリアのNGOのCEPA担当窓口であり国際湿地保全連合評議員でもあるC.プリエット女史を議長として,このCEPA専門家グループが設立された.同グループは定められた期間中の作業計画を策定はしたが,資金不足のためにその実施は限られている.その作業はSTRPの作業領域の一部に現に伴っており,この3年の期間のうちに,STRPの将来の作業にCEPA専門的技術を配備することを正式なものとする必要性が認められる.この点はCOP9決議案12のSTRP運用規則の改定で議論される.

14.加えて,COP9会期中に,決議案1附属書Cⅰの特定の領域を実施するために重要なCEPAツールをさらに開発するために,全員ではないがCEPA専門家グループのメンバーがSTRPメンバーと会合を持つ予定となっている.同専門家グループはまた,STRP第5作業部会の作業計画の下に開発中の「湿地管理者のためのフィールドガイド」のために活発な役割を果たしている.

実施目標1.2 CEPAのプロセスが、世界、国、地方のあらゆるレベルで、湿地の賢明な利用というラムサール条約の目標の達成に有効であることを実証する。

Ⅲ.3.湿地の賢明な利用の推進においてCEPAを実践するための各種アプローチを評価するパイロットプロジェクトを計画し、既存のCEPAに関するプログラムとケーススタディを見直し、これらの経験から有効なアプローチに関して得られた教訓を記録する(行動1.2.1,1.2.2)

15.国別報告書からはこの作業領域に対してたいていの締約国の関心が払われていないことが伺われる.13%の締約国のみがパイロットプロジェクトを記述し,38%の締約国が少なくともどれかのレベルで実施されていると報告し,30%が教訓の記録にいくらかの進展があることを記述している.

16.このような研究が国内の他の機関や他の枠組のもとに効力をもって実施されていることを報告した締約国もあった.また欧州地域の締約国で,EU水枠組指令のもとにこのような研究が記録されていることに注意を引くものもあった.プラスに解釈される記述回答の多くの場合も単にCEPAを含めたプロジェクトを記し,CEPAアプローチを評価するために特に着手されたプロジェクトは少なかった.いくつかの締約国から得られた最も役立つコメントは,個々の湿地レベルでの取り組みであったが,効力をもつアプローチを特定はするもののきちんと記録されることが稀であるということを特筆すべきであろう.

17.この行動の実施はCEPA専門家グループに課された任務のもうひとつのものであるが,資金不足によりこの3年の期間には何も進展はなかった.この作業領域は,国レベルおよび地球規模でのCEPAアプローチについての効果的なフィードバックを提供するためにいっそうの作業を必要としている.

実施目標2.1 湿地の賢明な利用についてCEPAを支援し触媒となるための、国のリーダーシップ、ネットワーク、結合力のある枠組を提供する。

Ⅲ.4.政府とNGOのCEPA担当窓口の任命(行動2.1.1)

18.CEPA担当窓口は,政府のもNGOのも,国レベルでCEPAプログラムを駆動する影響力を発揮し,当該国と条約事務局の間ならびに締約国間のCEPA事項についての主要連絡先となるものである.NGOの担当窓口を任命することは革新的であり他の環境条約からも力強いことと考えられている.すでに任命した国々からは,その人材が国のCEPAプログラムに役立つ技能や専門的技術ならびに熱意をもたらしていると指摘している.

19.国別報告書から,64%の締約国が政府の担当窓口を,56%でNGOの担当窓口を任命しており,COP8への報告の値,それぞれ51%と44%から増加した.条約地域レベルでみると,政府の担当窓口は南北アメリカ地域が76%と最も高く,NGOの担当窓口はアジア地域が72%と最も高い.すべての条約地域で政府の担当窓口のほうがNGOの担当窓口よりも高い割合で任命されており,締約国はその理由を熟考することだろう.担当窓口の全覧は条約事務局のHPに維持されている:http://www.ramsar.org/ key_nfp_cepa.htm

20.政治的理由によりCEPA担当窓口がしばしば変更される締約国があることは理解されるが,そのような頻度の変更はCEPAプログラム作業の継続性を確保する観点からは効率がよくないということを特筆しなければならない.

Ⅲ.5.湿地にかかる特別部会とCEPA行動計画策定(行動2.1.2,2.1.3)

21.COP8のCEPA指針は,湿地CEPAの需要,技能,専門的技術の見直しを実施して優先順位を与え,それに基づいて全国規模,地方,集水域あるいは地元レベルでのCEPA行動計画を策定するために,CEPA特別部会を設立して国内のCEPAプログラムへのより戦略的なアプローチをとることを各国に奨励する.

22.57%の締約国がCEPA特別部会を未設立であると報告し,50%の締約国でCEPAの需要や能力の見直しに手を付けておらず,わずか10%しか国内CEPA行動計画を策定していないというこのCEPAプログラムの主要分野における統計は,懸念材料である.加えて懸念されることに,CEPA特別部会をもつ国の数がCOP8時点から半減してしまったことがある.

23.10か国から国内CEPA行動計画を策定したと報告は述べられているが,計画文書が条約事務局に届けられているのは,オーストラリア,ドイツ,ハンガリー,スペインからだけであり訳注,他の6か国からの提出が求められる.

24.国別報告書には,環境に関するCEPAを効力をもって扱う他の枠組みがあると記述する締約国もある.それは,例えば生物多様性条約(CBD)等の多国間環境協定,国内の環境対話教育戦略,EU鳥類指令,同生息地指令などが挙げられている.それらが国レベルから地元レベルまで主要なCEPA活動を実施することを指し示す役に立っているとしても,湿地に特定されるCEPAの需要や反応を評価することがもちろん欠けている.

25.とはいえ状況が完全にネガティブなわけではない.国別報告書の分析からは,31%の締約国が行動計画策定が進行中か計画中である.国別報告書の記述回答や締約国から直接条約事務局に別途寄せられている情報から,多くの締約国で実際に,この分野における何らかの前進の証拠がある.

26.まとめると:国内CEPA行動計画が4か国から条約事務局に提出されているほかに:

27.条約事務局ならびにCEPA専門家グループが,CEPA行動計画策定のこのように多様なアプローチを追跡して,締約国が検討できるように複数の効果的アプローチの記録文書をつくることも有用であろう.実際COP9会期中に,CEPA専門家グループがサイドイベントを開いて,CEPA行動計画策定の異なるアプローチを集めて示し,国レベルでの計画策定における問題点や解決策を探る議論を始める予定である.

28.本節おわりに,新熱帯区の締約国のいくつかで,ラムサール湿地におけるCEPA計画の策定に際して,未来の湿地イニシアチブから資金援助の恩恵を受けていることを特筆すべきであろう.

Ⅲ.6.関連する政府省庁及び機関相互の意思伝達と情報共有システムの効率と有効性(行動2.1.5)

29.統合的水資源管理ならびに河川流域管理が条約の実施に完全に統合されたことから,分野を横断する効力をもった対話が必須技能となっている.国別報告書から,励みになる78%という高い割合の締約国が,関連する政府省庁及び機関相互の少なくともどれかのレベルで,湿地の課題に関する対話と情報共有の行動が取られたというプラスの反応を示した.指針に指示される行動は,そのような対話の効率と効力に関心を払うことであるが,この点は国別報告書の質問には含まれなかった.締約国が自国の分野横断的な対話の効力を評価することの重要性を認識することが望まれる.

Ⅲ.7.他の国際条約や計画のもとでのCEPAの活動との協働を促進するため、世界的にも国内的にも協力して活動する(行動2.1.6)

30.この設問は条約事務局と締約国の両者に向けられたものであり,今日までその実施は両者に同様に挑戦的である.地球規模で40%の締約国がこの国別報告書の質問にプラスの反応を示した(好んで比較するわけではないが,より一般的な他の多国間協定との協働についての質問には81%の締約国がプラスに反応した).少数の締約国は,政府の同じ部門が複数の環境条約の担当窓口として機能しているためにこの分野では格別の成果を収めていると特筆した.そのほか,特定の湿地におけるプロジェクトを通じて自国の一部の地方で効力をもった協働が進められていると報告する国々もあった.

31.最近に完成したスペインの国内CEPA行動計画が,その策定過程においてCBDのCEPAに関する決定/19を考慮に入れたことは特筆できるだろう.

32.条約事務局の側では,CBDとの第3次共同作業計画(20022006年)にいくつかのCEPA行動が含まれており,それらの一部は実施されている.すなわち,ラムサール条約のCEPAプログラム担当者とCBDの上級プログラム担当者とがそれぞれのプログラムについて議論を交わし,その後の進展状況を互いに報告しあっている.CBDのCEPAプログラムについてやCBDウェブサイトへのCEPA資料の掲載についてラムサールCEPAメーリングリストに流している.まだまだやるべき作業が残っているが,主に時間が制限要因となっている.

実施目標2.2 湿地の賢明な利用を推進し、結果として湿地の賢明な利用を実現する、CEPAに関する情報と専門知識を移転、交換、共有する。

Ⅲ.8.ラムサール条約のウェブサイトと、CEPAミニサイトを通じて情報を共有する(行動2.2.1)

33.条約のウェブサイト[www.ramsar.org]およびCEPAミニウェブサイト[http://www.ramsar.org/ outreach_index.htm]が定期的に更新されていることはお気づきであろう.条約のメインのページは条約のコミニュケーション担当者が,CEPAページはCEPAプログラム担当者が維持している.

34.メインのページは条約の公式文書すべての貯蔵庫として機能し,条約の公式言語である英語,フランス語,スペイン語の3か国語で提供されている.それ以外にも,条約の最新の活動についての情報が常に更新され,また条約の作業に関する広範な情報資源が得られる.

35.条約のウェブサイトの閲覧率は上昇し続けており,この3年の期間にも1日あたり平均2000ユーザーから平均35004000ユーザーに増加している.それらユーザーには締約国や湿地に関係する機関ならびにNGO,そして一般の人々が含まれる.

36.CEPAページも英語,フランス語,スペイン語で準備され,CEPAプログラムの実施に役立つ情報資源をすべての関係者が利用できることをめざすものである.これらのページをつくり上げる努力は続けられているが,時間的制約のためにまずまずの水準で準備できているのは英語のページのみである.フランス語ならびにスペイン語のページを効果的に維持するにあたってはかなりの問題を抱えている.条約事務局では現在スペイン語について,パナマにあるラムサール西半球地域センター(CREHO)の支援の可能性を調べているところであるが,フランス語については同様の支援の特定がまだできていない.

37.この3年の期間に,アテネにある地中海湿地フォーラムMedWet)調整部は,同フォーラムのウェブサイトを再企画し再構築した.

Ⅲ.9.湿地CEPAの活動を支援するための参考資料の作成、配布、共有を継続する(行動2.2.3)

38.驚くべくもなく,湿地CEPAを支える資料を作成し配布したかというこの質問への反応はかなり良いものであり,72%の締約国がプラスの反応を示した.ネガティブに反応したのは15の締約国しかなく,そのうち10はアフリカ地域の国々で,資金不足を反映してのことと疑う余地もない.

39.作成された資料は広範で,ポスターや冊子,展示,パンフレット,カレンダー,掲示,ビデオ,ニュースレター,ラジオ番組,CD,ビデオCDなどがあった.

40.このような資料を共有する点については,すばらしいが電子的に提供されていない資料が多く共有する可能性を減じている.例えば,未来の湿地イニシアチブによって開発されたすばらしいCEPA資料も電子的に提供されていない.

41.COP8以降に条約事務局では,世界湿地の日(WWD)の資料に加えていくつかの出版物を作成した.つぎのものを含む:

42.つぎのようなものも計画段階にある:

Ⅲ.10.ラムサール条約の世界規模のメーリングリスト(ML)と締約国内のMLを通じた対話(行動2.2.4)

43.条約事務局は,条約の実施のための対話と情報共有を高めるために以下のようにいくつものMLを維持管理している:

44.MLに提供するために適度に多様なCEPA情報資源を見つけ出すことに,特に3か国語で行なうには,時間がかかる.スペイン語ならびにフランス語のおよそ2倍から3倍のメッセージが英語のMLに条約事務局から配信されており,これは時間と言語の制約による.長期的に見れば,資金が許せば,スペイン語に関して再びパナマのCREHOが役立つCEPA資料をMLを通じて収集し広報する役割を積極的に担ってもらえるようにすることが望まれる.

45.国別報告書から,51%の締約国が自国内のCEPAメーリングリストがあるといったプラスの反応を示した.記述回答に,湿地CEPA専用メーリングリストを立ち上げたことを記したのはガーナ,スロバキア,南アフリカの3か国に過ぎず,他国は湿地一般のものや環境全般のもののなかでCEPA課題も扱うときがあるといったものであった.条約地域間でも反応に有意差があり,南北アメリカ地域が最も高い65%のプラスの反応,最も低かったのはアフリカ地域で30%であった.

実施目標2.3 湿地資源の価値を認識することによって、湿地の賢明な利用に参加し貢献する、個人・集団の能力と人々の機会を向上させる。

Ⅲ.11.ラムサール条約の国際団体パートナーと協力して、湿地CEPAについての専門家情報と研修の機会の提供元を特定する(行動2.3.2)

46.地球規模で条約事務局はすでに長期にわたってオランダ運輸公共事業水資源管理省の内陸水管理廃水処理研究所(RIZA)が実施する湿地研修コースに関わってきた.同研究所評議会は長年ラムサール条約事務局長が議長を務めている.最近になって条約地域での取り組みの重要性が強調され,同研究所はこのような湿地研修コースの指導者のための研修を補佐している.湿地管理における社会学的側面において湿地管理者を研修させる必要性もいま強調されてきている.それは,利害関係者の特定と彼らとの協働,市民参加,対立の制御といった湿地管理者にとって重要な要素と昨今認められるようになってきた課題について研修しようとするものである.将来的な発展のひとつとして,ラムサール条約事務局長による議長のもとに同研究所評議会が広く地球規模の役割を担うことができるようにするという同研究所の願望がある.

47.最近,あるオーストリアの大学と条約事務局は,保護区域管理についての修士コースの確立について協議を交わし,条約事務局職員ひとりがこの修士コースの管理委員会の委員を務めている.CEPA技能もこのコースに組み込まれている.

48.オンライン対話型の研修も湿地管理についてたやすく利用できるようになりつつある.条約事務局ではそのような機会について他の研修の機会とともに,それら情報をCEPAメーリングリストならびにラムサール湿地フォーラムを通じて締約国に提供している.条約事務局は最近,IUCN教育コミュニケーション委員会(CEC)と協働して,湿地管理者のための研修の必要性を特定するオンラインCEPA研修モジュールを開発する作業を進めている.

49.疑うべくもなく締約国は,最近発足した「WetCap」(湿地能力向上パートナーシップネットワーク)の恩恵を受けるであろう.これはオランダに基盤を置き能力向上のためのさまざまな側面について広い専門的技術を持つ団体が湿地にかかる能力向上を促進するために築いたパートナーシップである.このネットワークへの参加団体はつぎのとおり:国際湿地保全連合,RIZA研究所UNESCOIHE 国際水教育研究所,国際地質情報科学地球観測研究所(ITC),UNDP統合的水資源管理能力向上国際ネットワーク(Cap-Net),ワーゲニンゲン大学,オランダ国際農業研究所(IAC),アルテラ研究所.このネットワークはその事業の一部として,水および湿地の管理や再生についての研修コースの立案と実施ならびに助言サービスの構築に焦点をあてることになっている.

50.国別報告書から,48%の締約国が,湿地CEPAの専門家情報,ならびに大学や研究機関およびNGO等による一連の研修の機会についての情報源を特定したというプラスの反応を示した.条約の国際団体パートナーがそれらの研修の機会の提供者としてしばしば言及されていた.しかし,41%の締約国はネガティブな反応を示し,その多くはこの分野については国内レベルの取り組みにとどまる.

Ⅲ.12.湿地が提供する生態系サービスに関する情報を公式の教育課程に確実に組み込むために、公式の教育課程を見直す(行動2.3.4)

51.締約国の35%が見直しを実施したというプラスの反応を示し,37%は教育課程へ組み込みつつあるというプラスの反応であった.この分野はラムサール条約の担当政府機関にとっては特に困難を伴うものであることが認められる.教育省など他の省庁と強力に連携して作業を進める必要があるからである.このことはまたCEPA特別部会への参加者を拡大することの価値を高める.条約地域間の差も大きく,アジア地域ならびにアフリカ地域で有意に高いプラスの反応が,欧州地域と南北アメリカ地域に比べてあった.

52.国レベルならびに国際レベルでの傑出した成功例が報告されたのは少なかった.記述回答から見ると,地元レベルでラムサール湿地周辺の教員と生徒に焦点をあてた取り組みで,より広範な成功が達成されたようである.特に初等レベルで成功し,また教育課程と教員研修を組み合わせた場合が効果的であった.これらの取り組みは多くの場合,国内のNGOならびに国際的NGOの補佐を得たり,コンサルタントの作業を通じて実施されていた.

53.このようにふさわしい資料は条約事務局へ提出され,CEPAウェブサイトに掲載したりCEPAメーリングリストで紹介して,できるだけ共有する.

実施目標3.1 湿地が提供する重要な生態系サービスと湿地の社会的、経済的文化的価値を地域社会に啓発するための国レベルの継続的なキャンペーン、計画、プロジェクトを促進する。

Ⅲ.13.認識を高め、地域社会の支援を構築し、「自然の管理人」アプローチ(スチュワードシップ)と湿地と向き合う姿勢を促進するための国レベルのキャンペーン、計画またはプロジェクトを実施する(行動3.1.1)

54.地球規模で75%の締約国がこの質問に対してプラスの反応を示し,わずか11%がネガティブに反応した.

55.多くの国々が多様なキャンペーンを全国規模から地元レベルまで,特定の聴衆に目標を絞ったものもあり,湿地の特定の課題にねらいを絞ったものが一般的に報告された.予想されるように条約担当政府機関が直接実施したものもあれば,NGOと協同したもの,他の省庁と協同したものもあった.

Ⅲ.14.湿地の価値と機能についての認識を高めるため、国と地方のレベルで世界湿地の日、世界湿地週間を祝う(行動3.1.2)

56.条約が1971年に作成署名された日を認めた2月2日の世界湿地の日(WWD)は,1997年に初めて祝われて以来多くの国々で,さまざまな分野を目標に定めて全国規模から地元レベルまで,湿地とその価値を祝うための1年のうちで最も決定的な機会としての重要性が計り知れないほど高まってきた.条約事務局では常設委員会の是認を得て毎年テーマを設定し,ポスターやステッカー,リーフレットなどWWD用啓発素材を準備してすべての締約国ならびに要請があればそれ以外の国々にも提供してきた.第1回のWWD以来ダノン/エビアン・グループより資金援助を受けてこれらの素材を作成することができたことは幸運である.これ無くしてはWWDはこのような成功を収めていないであろう.

57.WWDの活動を条約事務局に報告することを強く奨励してきたが,2003年には85か国から 250を上回る活動が報告されて条約のウェブサイトに掲載された.2004年の報告はまだ届くものがある.明らかに,条約担当政府機関が主催する活動に,他の湿地関係者の多くの活動が追加される.国内ならびに国際的なNGO,学校や社会グループ,ならびに湿地管理者の活動である.

58.条約事務局は2003年よりポスターとステッカーのデザイン作業用ファイルを複数のフォーマットで提供し,各国がそれぞれの国内的ならびに地方的状況により直結するようなイメージやテキストを組み入れたり自国語や地方語に翻訳したものを作成できるように図ってきた.またそうすることによって各国は条約事務局が提供可能な部数以上に素材を作成する機会も提供する.この分野の成功は毎年高まり,2005年は13か国で自国専用のポスターが作成された(それらはつぎのページに見ることができる:http://www.ramsar.org/outreach_ materials_translations4.htm).中国では3年続けて自国用に加工したポスターを多数部印刷して配布したが,そのようにできた唯一の国である.

59.条約事務局からWWD素材を発送するための作業量を軽減するために2004年から,素材を希望する個人や団体に条約事務局から直送するのではなく,各国の担当政府機関へ一括して送付し,そこから各国内の希望者に配布してもらうように変更した.このことによって,各国の担当政府機関は自国内の主要な湿地保全の活動者と連絡を取り合う機会が増え,ひいては国内でいっそう調整されたWWDアプローチを発展させる状況を生み出すという利点がある.2006年のWWDでも同様の手順を用いる予定であり,これまでに唯二国がこの手順への参加を辞退した.

60.国別報告書の設問の中で,このWWD活動の実施についてのものが最も肯定的な反応を得て89%がプラスに返答した.7%の締約国のみがネガティブに反応し,南北アメリカ地域は 100%プラスであった.

61.2004年12月に開かれた欧州地域会合では,国別報告書と同様に,北半球の北部に位置する国々からWWDの時期について雪と氷に閉ざされた冬の真っ最中であることが参加に水を差しているという失望の念が表明されたことも特筆された.

Ⅲ.15.政策決定者及び広く社会の人々に湿地の価値と利益を知らせるために、メディアと協力する(行動3.1.3)

62.メディアは湿地の価値を目立たせたり,特定の湿地への脅威への注意を引いたりする大きな機会を提供する.条約事務局では,湿地にかかるカレンダーの重要なイベントや進行中の湿地保全の課題について国際的報道機関の意識を高めようと努力は続けているが,現実のところ国レベルや地元レベルの湿地の課題についての報道機関との相互作用が最も効力をもつ.

63.国別報告書におけるこの点に関する設問への反応はまったく励みになるもので84%の締約国がプラスの返答であった.多くは,このような機会は定期的にあり,またNGOも重要な役割を果たしていることが特筆されている.チリ,コロンビア,コスタリカ,セネガルの4か国は特に,報道関係者向けに湿地の価値と脅威について理解を深めてもらうためのワークショップを開催したことが報告されていた.

実施目標3.2 CEPAプロセスを、さまざまな関係者が関わる参加型の湿地管理に組み入れることを確保するメカニズムを支援し、開発する。

Ⅲ.16.参加型管理とCEPA

64.参加型管理の手引きが決議Ⅶ.8および決議Ⅷ.36を通じて開発され,すくなくともどれかのレベルで地元の利害関係者の参加を得ることが湿地の保全管理計画の策定や実施に不可欠であると考えられていることが多くの締約国との対話からも明らかである.効力をもったパートナーシップを築き,対立を解消するなどの取り組みにはCEPA技能が必要であり,CEPAと参加型管理の指針の明確な結合が強調される.

65.最近策定されたスペインの国内CEPA行動計画では,これらふたつの切り離せない結合を認めて「CEPA」を『Communication(対話), Education(教育), Participation(参加) and Awareness(意識啓発)』と独自の定義を与えた.

66.湿地の管理計画策定やその実施においてどれかのレベルで地元社会等の利害関係者の参加を得るというアプローチが条約において発展しつつあるということは,締約国において格別なCEPA技能を開発することの重要性を意味している.第3章 第11節の議論は,湿地管理者の研修においてこの分野に進展が見られることを示している.国別報告書では,87%の締約国が湿地に関する意思決定に住民参加が促進されているというプラスの報告をしており,67%はより広範な水資源管理ならびに河川流域レベルでの課題について地元利害関係者の参加を得ていると報告している.どちらの場合も,南北アメリカ地域が他の条約地域よりも高いプラスの反応であった.CEPAメーリングリストやウェブサイトには,役立つ参加型の資料が含まれており,これはさらに発展させる分野である.

67.参加型管理とその基礎となるCEPA技能については,2003年に出版されたネパールの国家湿地政策における総合的最終目標が,締約国によっては,最良の例とできるかもしれない.それはつぎのように記している:『第一の最終目標は,地元住民の参加を得て湿地資源を賢明に,そして持続可能な方法で保全管理することである』.

Ⅲ.17.集水域・河川流域と地方の湿地に関する計画策定と管理の方向と性格を決定付けるものとして複数の利害関係者を含む機関を設置すること、またこれらの機関がCEPAの適切な専門知識を確実に保有することを確保する(行動3.2.3)

68.国別報告書の設問はCEPA専門的技術を河川流域の計画策定および管理ツールに組み込むことに関してであり,複数の利害関係者を含む機関についてはその情報を求めなかった.この質問に対してはわずか14%の締約国が『Yes』と返答しただけであり,CEPA専門的技術を河川流域の計画策定ならびに管理ツールに完全に組み込むことを確保するように多くの締約国でいっそうの取り組みが必要であることを示している.しかし45%の締約国は,少なくともいくつかの流域ではこのような取り組みが行なわれていると返答し,さらに12%の国はそのような取り組みを計画していると特筆した.欧州地域と南北アメリカ地域が,アジア地域ならびにアフリカ地域よりも,よりプラスの結果を記録した.欧州地域のいくつもの国から,EU水枠組指令ならびに鳥類および生息地指令がこの作業分野を促進する効力をもっていると注釈していた.

69.前述(段落14)したように,決議案1附属書Cⅰに,河川流域管理の作業周期における効果的なCEPAツールの必要性について明確に表現されており,CEPA専門家グループのメンバーはこの重要な作業領域で締約国を補佐することができるようなツールを特定するためにSTRPの専門家と密接に協働することにしている.

実施目標3.3 世界、国、地方のCEPAの取組の担当窓口としての湿地センター及びその他の教育センターの役割を推進し、支援する。

Ⅲ.18.世界、国、地方のCEPAの取組の担当窓口としての湿地教育センター:WLIネットワーク,開発途上国と先進国の間の湿地教育センターの姉妹提携;新たなセンターの設立;センターが提供している情報の見直し(行動2.2.5,2.2.6,3.3.1,3.3.2)

70.CEPA指針は,既存ならびに将来のセンターがWLIのネットワークに参加することを確保するように,さらにWLIプログラムの資金を手当てするように奨励している.英国水禽湿地協会(WWT)のプログラムのひとつとして,WLIが2003年はじめに再スタートを切った.現在は英語のみであるがMLやウェブサイト[www.wli.org.uk],そこには検索可能な登録センターのデータベースを維持している.そして,登録センターが共有し情報交換するために,各センターから寄せられたすべての側面のCEPAプログラムに関係する資料やケーススタディのオンライン情報資源プールを構築中である.

71.登録センターはすでに 300を超えている.このプログラムの資金が条約に求められていたが,この3年の期間には実現していない.幸運にも香港上海銀行(HSBC)からの資金援助を受けている.

72.WLIは地球規模でのネットワークのもとに,国内ならびに条約地域のネットワークの構築も推奨している.オーストラリア(18センター)と英国(60センター)の国内ネットワークがそれぞれ2002年と2004年に発足している.条約地域ではWLI−アジアがはじめてのものとして2005年6月に発足した.今後の進展状況はCEPAウェブサイトに報告される.

73.条約事務局はこのWLIのネットワークについてCEPAメーリングリストやウェブサイトで幾度か広報したり,WLIウェブサイトの紹介資料をフランス語およびスペイン語に翻訳するなどの支援を実施している.にもかかわらず,締約国の反応は芳しくない.国別報告書からは,たった9%の国が『Yes』と返答しただけであり,WLIに参加しているセンターがひとつでもあると返答したのも15%であった.このことは締約国がこのネットワークに効果的に結びついていないことを確実に示唆している.問題のひとつは言語であろう.すべての対話ならびにWLIウェブサイトの多くのページは英語である.たぶん,各国内のネットワークを構築してそこから地球規模のWLIネットワークへフィードバックすることがこのネットワークの価値を高めるであろう.またより多くの資金を獲得してWLIの言語的能力を拡大すると,各国からの支援も高まるだろう.

74.地球規模で35%の締約国がこの3年の期間に湿地センターを設立したことを記録しており,さらに22%の国でこの分野の進展を報告している.記述回答を加えると,締約国が湿地の価値を普及啓発するための湿地センターの価値に気づいていることが強く示される.しかしながら,新たなセンターを建設する費用の困難も顕著である.国別報告書に記された情報からは残念ながら,この3年の期間にいくつのセンターが新設されたかはわからないが,COP8への報告と同様に,欧州地域で他の地域よりもずっと先行していることは明らかである.

75.湿地教育センターの姉妹提携については,わずか6%の締約国がこれを推進しその資金を探したと報告し,21%の国がプラスの反応を示した.条約に加盟する先進国がこの分野についてまだ大きな熱意をもっていないことが明らかに見て取れる.

一般的結論

76.段落6の主要な将来的CEPA実施課題に加えて,COP9への国別報告書等の情報に基づいて,つぎのような一般的結論を導いて良いだろう:各締約国内ならびに条約全体において,有望なCEPA活動が多数進められている;条約の構成要素とそれらのCEPA作業をより良く戦略的に調整する必要性が引き続き強く認められる.


[訳注]
  1. これまでの環境省の「締約国会議の記録」においては「CEPA」を『広報・教育・普及啓発』と訳しているが,「湿地CEPA活動の見直しと行動計画作りのための追加の手引き」第2版(条約事務局,2004年)のCEPA用語集の定義を考慮し,ここでは『広報』にかわり『対話』と訳した.
  2. 決議案19は締約国会議で決議Ⅸ.18として採択され「ラムサール条約CEPA監督委員会」が常設委員会に設立された(同委員会第34回会合,2006年4月[参照:決議案.8添付文書2」]).
  3. 第3章のCEPAプログラムの実施目標ならびに実施行動の各記載は「第8回締約国会議の記録」(環境省 2004)の和訳からの引用である.
  4. COP9への国別報告書は次の英語ページにインデックスされて条約事務局HPに掲載されている:http://ramsar.org/cop9/ cop9_natlrpts_index.htm
  5. 第3章 第5節(段落23,26)に記される,締約国から条約事務局に提出されたCEPA計画文書は次の英語ページにインデックスされて条約事務局HPに掲載されている:http://ramsar.org/outreach_ nationalactionplans.htm


[英語原文:
ラムサール条約事務局,2005.Ramsar COP9 DOC. 25 "Implementation of the Convention's CEPA Programme for the period 2003-2005", November 2005, Convention on Wetlands (Ramsar, 1971). http://ramsar.org/cop9/cop9_doc25_e.htm.]
[和訳:
琵琶湖ラムサール研究会 琵琶湖ラムサール研究会,2005/10/05.]
[レイアウト:
条約事務局ウェブサイト所載の当該英語ページにおおむね従う.]
[フォロー:
決議.[x](決議案.8「2009−2014年CEPAプログラム(案)」), COP10文書16英語原文), 決議Ⅸ.18決議Ⅷ.31, 【解説2】 .]
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URL: http://www.biwa.ne.jp/%7enio/ramsar/cop9/cop9_doc25_j.htm
Last update: 2008/09/06, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).