日々、在りしことども



雨月二十八日
――法律とは多くの人々が幸せに生きていくために、現実的に必要なものと理想を噛み合わせたものであって、当然あらゆる事例に対して完璧なものではない。だからこそ裁判所の裁量があり、時代に合わせた法律の変更があり、それ以外がある。
『疑わしきは罰せず、されど大量殺人の場合はその限りにあらず』
砒素カレーの一件、今度も死刑だそうだが、あれほど直接物証が全くないのに確実な黒扱いは 珍しいと思う。あの女性が犯人か否かはこの際横に置いておく。それは私が判断するようなものでもない。ただ、単純な法律問題として、かなり危険なものを含んでいるような気がするのは私だけなのだろうか?

さて。このところ『身辺雑記』すら更新が滞りがちなこのサイトだが、実は歴史そのものは結構長い。
初めてもうかれこれ七、八年にはなろうか。一時は毎日雑記を更新していたため、知人しか来ないサイトにも関わらず、やたら妙な単語でグーグルには良くひっかかりなぞしていた模様。
過去雑記は気が向くままに消しているものの、アメリカの電子図書館アーカイヴを 確認するまでもなく、個人情報どころか若かりし時代の恥と大恥と馬鹿な生き様が電子の海に処理もせず垂れ流されている。『密造酒』など、法に触れるような話題もたまにちらほら。
で。
良く足を運ぶ有名サイトさんの雑記リンクから跳んだら、いきなり『紅茶猫』のグーグルキャッシュが出てきて驚いたと、ただまあそれだけの話。――一体どれだけ、まだ生き恥は世界に漂い続けているのだろう……
雨月二十七日
クーラーをもう一つ増設するだとかで、屋根裏の配線もいじって貰う必要があり、物置奥の 屋根裏部屋、別称『開かずの間』を開く。

どのぐらい開かずかといえば、幾ら引いても動かない扉の金具部分に木槌で金属板を打ち込んで 開けたり、埃も見えない空気を吸って喉がすぐ痛くなったり、床の記憶通りの部分に綺麗に形残っている白いネックレスを見て、『ああ、鱗も綺麗に無くなっている。けど頭蓋骨は?』と肋骨も消えた蛇の末路を懐かしんだりする程度。

今回の工事により、たまに鼬など走り回ったりする屋根裏への進入経路を知る。――剥がした壁向こうというのは、意外と多くのものを隠せそうだ。
雨月二十三日
合併計画により隣町の図書館が早くも使えるのだとか。貸し出しカードを作りがてら覗きに行く。
新築されたときに一度訪れたが、意外と本を詰め込んでいる。方針なのかはたまた司書の趣味なのかジュブナイル系やファンタジー、オカルトホラー系のものがややバランスに疑問を感じるほど多い。
私見として蔵書の勢いではこちらが、心にゆとりをもたらす空間としては地元図書館に軍配をあげる。マニアが籠もる地下書庫の穴倉へきがんと、食後の一休みに最適な教会付属の公共スペース、といった雰囲気か。

とりあえず礼儀として数冊、挨拶代わりに借りてみることにする。片っ端から借り帰っても、期限内に読めなければ只の馬鹿である。よって、どうしても読みたいもの。以前から探していたもの。ちと他より強く惹かれるもの。ついでに見つかった鍛冶関係の本に限定。 精々堪えて理性を働かせて――

二十七冊では一つの貸し出し袋に収まらないことが判明。図書館内を巡りながら心の中で叫んでいた『籠か箱持って来い』という要求が正当なものであったと証明される。

運動不足解消も兼ね、今日は隣町の図書館まで自転車で動いた。それが間違いであり図書館には車で赴くものだと本日学ぶ。
雨月二十一日
このところ何も無し。無為不毛にはまだ底があるのかと、ちと感嘆。
雨月十五日
特になし。

周囲溝、やや部分出。南東、植え込みぐらいは他のもの。北東、一部河川敷扱いだとかで 不可解な三角在り。以上覚書。
雨月十四日
地元では蛍が最高潮だとか。しかし余り興が乗らないので出向きはせず。
昼、サイレン。理由不明。
雨月十三日
気紛れにはじめた水遣りの最中、不意に虹が見たくなり、されど陽光と水飛沫と自分の立ち位置の関係が思いつかず、ホースを持ったまま三百六十度回転などしてみる。
次はもっとはっきりとしたものを。

夕、少し出る。無性に日本酒に渇く。
雨月十一日
少雨。

昨夜十二時過ぎ。大きな火の手が上がる。時折何かが破裂するような音も届く。しばらく前にも火事があった方角だ。
どうやら隣町の厩舎が全焼した模様。火は好きだが、家一軒、焼き尽くすのは早いものだとその恐ろしさについても改めて思う。
雨月十日
和菓子の水無月が非常に美味。あの餡子のようなそれでいて餅々した食感が幸せに直結する。
――もっと食いてェ。
雨月八日
夕、出る。麦は枯れているといってもいい風情。日暮れの景色は秋の只中に居るように思える。
車内、暑し。そういえば未だ本年の蛍を見ていないと思い出し、本日以上。
雨月七日
シェリー酒を初めて口にする。それまでにスコッチのモルトを呑んでいたが、癖も量もそう大したことのないものだったため、開封。

白い――で、癖(甘さ、味わい?)無し。紹興酒や数年物の日本酒のようなヒネタ風味がする。
二口目。――何故におが屑臭が?

ここ長らく碌な(真っ当な料理店で出てくるボトル)ワインを飲んだ覚えが無く、精々リットル以上の白のみ。また、そちら方面はもともと疎い上に、『シェリー』の名前に甘い果実酒めいたイメージを抱いていたため、違和感もひとしお。
ちなみに酒名は『アウローラ・マンサニーリャ』良く冷やしてはあるが――

やっぱり夏に飼っていたクワガタ箱だ。
雨月六日

雨月五日
歳月と共に嗜好も移り変わるものであろう。
昨日と本日でメイドガイに目覚める。
メイドさん? 分厚い二の腕も鋼の胸板も、時には『思いやり』の一言で主の退路を塞いでしまう漢気も無いような軟弱な壊れもののどこに憧れろと?

――いいなァ、メイドガイ。
雨月四日
天気不調。夕立並みの大気の乱れ具合。雷は雲間に走らず落ちる落ちる。
図書館書店などをちと回る。
雨月一日
シェリー酒を見つける。オートミールと同じ、名は知っているのに口にしたことの無かったもの。
まあ、この極東の地ではそんなものかと思うも、その異郷でグラッパやカルバドスを瓶で口に出来るのも また凄き事。さあ、次はアブサンだ。

視力、落ちる。古い眼鏡は擦り硝子状態。ずぼんといい、やれやれ。

追記:
旨ェ。久しぶりに飲む酒がッ、染みるッ!
醸造アルコール含みの日本酒が口に合わない純米――特に生酒、原酒――派だが、『菊水』のふなぐちは どうしてこうも旨いのかッ。新潟万歳!
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