日々、在りしことども



七夜月三十一日

七夜月三十日
やはり花火は響きを腹で味わってこそだと思う。
本日、地元の祭りだとか。締めの打ち上げ花火は出来るだけ近くで堪能しようと、足を田圃の方へ運ぶ。打ち上げの筒や、作業している人影が判別できる程度に近づいた御蔭か、結構堪能できた。

後、夜。先日猿王氏に土産として頂いた白ワインを、同日購入した怪しげなコルク抜きで開ける。今一つ、使い勝手が判らなかった。――ふと気付けばコルクが瓶の中へめり込んでいるというのは、やはり何処かやり方が間違っているとは思うのだが。 花火 ワイン コルク抜き
七夜月二十九日

七夜月二十八日
土用というのは立春立夏立秋立冬それぞれの前十八日間を指すのだとか。
――以上、故に鰻。
七夜月二十七日

七夜月二十六日

七夜月二十五日
ここまで胸を高鳴らせ本を買うなど何時以来だろう。
本が、紙に情報を印刷して纏めただけの、感覚的に高かったり安かったり後で売っ払ったりできる 擬似通貨ではなく、『本』という一つの宝物に思えるなんて、ああそんなこと、もう随分と忘れていた。
そして――それがエロ漫画ってのは、ちょっとどうかね自分と思わんでもない。
……カバー下のいやらしさがまた強烈で――


以下、追悼。
亡くなられた杉浦日向子氏に、一読者から心より哀悼の意を表す。
江戸研究家として有名だろうが、私にとって氏は軽快な絵付きエッセイを書く人であり、蕎麦好きの粋人であり、銭湯好きの変な御仁で、そして幾つもの味ある漫画の描き手であった。
残念である。早くに咲き過ぎた花が散り急いだ感さえ覚える。本当に、残念だ。
私の蕎麦の食べ方は多分に氏の影響を受けている。この癖は、恐らくこの先多少変わることはあっても、消えはしないだろう。本棚に氏の作品が並んでいるように、自分の中にも氏から得たものがきちんと収まっている。

――少々早いようですが、お先にどうぞ。自分はもう少し、こちらの蕎麦を食って、酒を飲んで、風呂を浴びて、それからそちらへと参ります。
七夜月二十四日

七夜月二十三日
忘れられていた釣銭をねこばばできなかった件に関して。さて、自分は幾らぐらいからなら転ぶのだろう?

書籍の返却、延長、借り出し。――あちらの図書館も、そう怒ったりはしない模様。
後、近場の酒蔵へ。観光客を集めている割には近所の酒屋に無く、しかし数年前に一度飲んだ夏の冷酒が良かったため、ふと思い立って動く。
以前足を運んだ折には閉まっていたが、本日は中を覗けた。良さげなのを手に、こぼれる笑顔のまま帰宅。
――現在、夜。醸造アルコール入りの原酒を口に含むが、とても甘ったるい。蔵で『辛口がお好みですか?』と問われたときに、何も考えず頷いておけばよかった。うげ。

追記:純米原酒も開けてみた。……フルーティーってのと、酸っぱくて臭いってのは、どこで線を引くべきなんだろう? パイナップル方向の味。日本酒と考えて呑むと不味い。ワインと考えてみるべきか。――いや、でもちと臭いこれ。
七夜月二十二日
本屋巡りを少々。
七夜月二十一日

七夜月二十日
鳥人間コンテストの離陸台には危ないから登ってはいけない。
だから、今日の夕方にはもう板の幾らかは外されており、台頂上先端部はパイプの骨組みだけになっていたなんて、私は知らない。

先日、宣言していた人々の雄姿を見届けに行く。水中から『……俺も』という視線で見送る某氏。日焼けが痛いやと着替えもせずに後を追う私。そして本日の主役、一人、悠々と花道を行くが如くの某氏。 海パンの後姿がまるで格闘家の試合姿を思わせる。
既に薄暗くなりつつある琵琶湖。背後、墓場は向こうの山上より姿を見せつつある白い月。
躊躇一瞬、落下、着水音、浮上。
――勇者は案外、あっさりいってくれました。

下のパイプ骨組みから足場を伝って戻ってきた彼は、奇声と共に再ダイブ。
飛ばないチキン、というか浮かない魚である見るだけの私は、灯台などの高所と比較して 『そう高くも無いか……』とあっさり他人事な感想を抱いていたが、飛び込んだ本人曰く、『いや、 今までの飛び込み人生でも一番の高さだ』。事実、二回とも着水まで意外と時間はあったし、二度目は 浮くまでも結構かかっていた。

後、開店したばかりの巨大日曜雑貨店を覗き、夕食、風呂屋。たっぷりと湯を堪能し、帰宅する。
なお、今回もさっぱり気が済んだせいか、その後色々とオチ付き人生を見せてくれた某氏の車の運転が、心なし荒かったと思い出して記す。……野郎ばっかだと何時もそうなんだから。
七夜月十九日
予想よりマシではあるが、ふと何かの折に浴びる陽光が肌に染みる。
七夜月十八日
本日、猿王氏帰宅――ということで午前中より琵琶湖。海の日、梅雨明け。そんな言葉に 相応しい良い天気。
浮かばない自分、自由に泳ぎ回る某氏、鳥人間の台のたもとには警備員と思しき者が二名――

一通り楽しんだ後、松吉へ。昼食に饂飩と蕎麦をかっ込み、長浜城をちらりと眺めて、 午後にもう一度一泳ぎ。
……まだ日陰でじっと待機している警備員二名の姿に、その仕事がいかにハードワークなのかを感じ知る。

一人での帰路、彦根は京進近くに怪しげな店を発見し、一目で引き寄せられる。エスニックや日本の古ガラクタが詰め込まれているが、その品数といい趣味といい、笑い出したくなるぐらい素敵であった。
何でも琵琶湖岸に本店があるのだとか。今度、時間をとって是非両方をじっくり覗くかと、心に決める。


帰宅後、夜。『日焼けは、太陽が沈んでからが本番だ』。
と、言う訳で真っ赤な私は濡れタオルと保冷剤を使って現在冷却中。毎年思うのだが、次こそは日焼け止めを使おう。絶対に。
七夜月十七日
昨日より琵琶湖にて鳥人間コンテスト。昼前遅くに見物に赴く。
そうポンポン飛ぶものではないらしく、待てども待てども動かず飛ばず。周囲のベテラン観客達などは、待つのではなく、すっかり緩み切って時間を潰している。
結局、見れたのは時間が遅かったこともあり一機だけ。人力飛行最後の日体大だったか。

飛ぶ瞬間は、それでもぞくっとくるものがあった。紙のように薄く長い翼が、空気の重さにたわみつつも、危なげなく――ブレや音さえなく、静かに宙を滑っていく。

何年も追及し続けられた、これが現在の技術の到達点か。それは遥かな高みに位置しており、そして最早大会開始当時の思惑が色々と台無しになっているようだった。
――静かに遠ざかっていく現実感を欠いた人工蜉蝣の姿。
――白い飛沫を蹴立てそれを追いかけていく何台ものモーターボート。
――爆音をたてる上空のヘリ。大声で解説する会場のアナウンサー。観客達のざわめき。見守る仲間達の姿。

――蜉蝣は飛んでいく。

対岸目指し。その白い姿は、何時しか黒い陰影に。

――蜉蝣は遠ざかっていく。

いつしかてかろうじて判別できる、空に刻まれた異物の影に。

――でも蜉蝣はまだまだ飛んじゃうんです。

ぽつり、ぽつりと報告していたアナウンサーさんも黙りました。とっくに何にも見えません。

――I'm fly. I can fly. だって鳥人間なんだもの。

まだ……飛んでるんだろうなぁ。

最早会場は鳥人間コンテストの本部、或いは発射台に過ぎず、リアルタイムで報告してくれる巨大スクリーンも親切に編集されたテレビもない私達は、置き去りにされた哀れな鶏。

テレビ放送がある意味一番だという結論のもと、着水報告を待たず移動にする。


一路、今度は南へ。寝不足や車酔いの不景気な連中が午後の湖岸を車で走る。
鮎屋の里で、鮎の塩焼きを齧り、閉館間際の琵琶湖博物館を眺め巡る。残念ながら植物園には間に合わなかったものの、その裏手に広がる蓮の一大群生地へ。
――ここ数年で明らかに拡大しており、夏のこの時期、多くの花が膨らんでいた。

子供や大人のザリガニ釣りを見て、帰宅。酒も舐めず、今宵は早々に寝る。
七夜月十六日
近辺にて花火。本年は景気が良かったのか、良く上がる。

猿王氏、来る。地元も地元、当町の倉の酒と、能登川(――もう地名は変わったらしいが)の水のような酒『薄桜』を出す。
久方振りということもあり、酒の入った舌で何やら延々と話す。
だいぶ泥酔したまま、深更に就寝。明らかに呑み過ぎた。
七夜月十五日
暑くなった。夏らしくていいが、何故か汗が止まらない。蛇口はどこだ。

夕、顔が赤くなる。日焼けのようだが、心当たりが無い。
本日は洗濯物を干した程度、昨日は夜行、一昨日のにしてもそう大した時間ではなく、大体今頃になってか?
全身的に光合成が足りてないのかも知れぬ。
七夜月十四日
夜、電話あり。曰く、『鳥人間コンテストの台から琵琶湖にアイ・キャン・フラアァァァィッ!!』
水着を手に、迎えの車の助手席に乗る。
夜ということもあり、また週末の大会に向け、既に会場セッティングの人々や飛行機組み立て組み などもいるため、『じゃ、大会後の昼間だ』と元気な方々は判断。湖岸で線香花火などをし、 野郎ばかりで夏の風情を味わう。
――早々に帰宅。嗚呼、人に会うのも久し振りだ。

昨日辺りから、どこぞで夏が始まったのを感じる。稀に来るだけだった迷惑メールが、一気に一日七倍ほどに。気合が入ったのか、犯罪者にも夏休みがあるのかは知らぬが、ネット用の殺虫剤など無いものか。

気の向くままに、昨年の梅酒を瓶詰め。香りが飛んでしまっているのは、残念ながら気のせいではない。飲む気もわかないので、残念ながらそのまま物置奥へと戻す。
七夜月十三日
野菜とUSBメモリの不足を感じ、思い立つままに出掛ける。足を運んだ店が休みだったため、 それぞれ別所にて購入。DVDメディアやカイワレ、焼き蕎麦など、安く良い買い物をする。

フラッシュメモリだが、以前より憧れてはいた。細目に文章を保存したい自分としては、この手軽さは まさに感動ものだ。早速、使用してみたが――嗚呼、技術革新万歳。
もう、パソコンに差しっ放しにしておきたいぐらいにこの小さな部品が頼もしくも可愛くて仕様が無い。そのうち名前を付け、『もう一匹ぐらい飼おうかな』と言い出しかねない自分を感じる、夏の夕。
七夜月十二日
期限指定のある連絡は、何故かしらその指定時間後に発見される。

今週末土日に鳥人間コンテストが行われるとか。――天候は恵まれてない気もするが、大丈夫だろうか。
七夜月十一日
本日までのスーパーの福引券があるのだとか。行ってガラガラを廻して来いと言われる。
手渡される分厚い封筒。合計七十一回分。
それに一枚足して、結果、夏季設置お化け屋敷の入場券一枚+ポケットティッシュ七十一個。

あれだな。ハングリースピリットが足りなかったんだきっと。
七夜月八日
出て、少し動き回る。本年の暑さは極端さが足りない。
七夜月六日
蝉の声らしきものを聞いたような気がする――では、数日前のアレも蝉虫の声であったのだろうか? どちらも死に掛けた最期の呻きが如く、切れの悪い覇気無きものであったが。

今年は余り季節を感じない。
七夜月五日
今年は蝉の声が遅いような気がする。それとも、老いた自分が気付いていないだけか?
ここ数日の雨で、乾いたはずの洗濯物すら重く湿気っている。
七夜月三日

七夜月二日
借りていた都々逸のCDを聴く。――自分はどうも聴くより読む方が良い。

小旅行より戻りし両親の土産として、黍焼酎とハムを頂く。後者に合わせ、皿にクラッカーだのカマンベールチーズだの胡瓜の薄切りを盛り合わせるが、そこで『カマンベールには黒麦酒』という個人的物理法則が発動。食後、買いに出たついでに辛口白ワインも安いのを一瓶入手。
黍焼酎は丁寧な仕事のようで、香りもよろしく、美味。本命の方も悪くはなく、ついでに生ハムなども追加し、楽しむ。
余り量は召さずに摘みをさらえ、早々横になる。本日以上。
七夜月一日
頭を刈る。自分で適当にはさみを入れているが、何故かやる度に雑になってゆく。
本日の投げ遣り加減はまた素晴らしく、涼しくなった反面、大胆かついい加減な仕事の結果として、見ようによっては十円禿げが一つ二つ。
――むしろ日陰者の頭皮には日光浴の良い機会かもしれぬ。いっそ、剃刀で一度全て丸めてみるか? 以前、在りしことども 端月/ 如月/ 梅香月/ 桜月/ 夏初月/ 雨月/
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