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ナビゲーション1/2 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議
Ramsar Changwon 2008

ラムサール条約 第10回締約国会議
決議.10「条約の科学技術面の将来的な実施」

日本語訳:
『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011年)より了解を得て再録. 

  PDF (407 ,環境省)  ワード (ZIP圧縮 74 )    付属書1    付属書2 

条約事務局原文:
ワード:
PDF:

「健康な湿地、健康な人々」
"Healthy Wetlands, Healthy People"
湿地条約(ラムサール,イラン,1971)
第10回締約国会議
大韓民国 昌原창원),2008年10月28日11月4日

決議.10
条約の科学技術面の将来的な実施

1.締約国が、3年間の科学技術的実施行動に関し、一つにまとめた完全な及び優先順位を示したプログラムを初めて採択した決議Ⅸ.2(2005年)を想起し、またそれが、作業を計画し、実行し、優先順位をさらに決定し、資源を配分する上で、当該行動の全体像を示す効率的、効果的な方法であったことを経験が示していることを確認し

2.今回の締約国会議で採択された決議Ⅹ.9により更新され改善された、科学技術検討委員会(STRP)の改正運用規則に関する決議Ⅸ.11考慮し

3.20062008年の3年間におけるSTRPの優先作業の要素のうち、進展させることができなかったものがあること、及びSTRPのプログラムの全面的な実施が依然として資源に左右されること、特に締約国その他からの任意拠出に左右されることを認識し

4.20062008年の3年間におけるSTRPの作業に対し、資金的、物的な面で貢献した締約国と諸組織に心から感謝し、また、締約国からの任意拠出がSTRPの作業範囲にもたらす大きな恩恵に留意し

締約国会議は、

5.本決議の付属書1に示すSTRPの20092012年の期間の優先度の高い行動を承認しSTRPの作業プログラムのベースとして付属書2に示す課題のリストも同じく承認する

6.条約事務局に対し、今回の締約国会議で採択された他の決議から生じる、STRPに対する追加または修正された科学技術的実施行動を本決議の付属書2に統合するよう指示する

7.本決議が、STRPの作業に関する決議Ⅸ.2及びその付属書のあらゆる側面に優先することを確認する

8.締約国、援助機関、政府間機関、国際団体パートナー、各国のNGOその他に対し、このプログラムを、本決議付属書1に示すSTRPの優先度の高い行動に関するプログラム(算定費用を表示)を含め、ラムサール条約の科学技術的実施への資金的及びその他物的支援の優先順位を決定する際に用いるよう要請し、また締約国に対し、STRPの作業計画、特に優先度が高いことが示された課題を支援するために、任意拠出を行うことを検討するよう、重ねて要請する


決議Ⅹ.10☝ 決議本文付属書1付属書2 ☟

決議Ⅹ.10
付属書1
条約の科学技術検討委員会(STRP)の20092012年における優先度の高い課題及びその達成にかかる費用算定

1.以下の表に算定費用とともに示す30項目は、付属書2に示すSTRPの全課題の中から選ばれ、STRPの20092012年の作業計画における優先度の高い活動として、STRP及びCOP10により勧告された。

2.暫定的算定費用は、各課題について必要な作業を行うために1人(ないし複数)の専門家をSTRPが雇う必要があるという前提に基づいている。これらの算定費用はSTRPとその専門家「作業部会」が提出したものである。より正確な見積りと課題達成手段は(すべての課題で費用をかけて専門家に依頼する必要があるとは限らないが)、20092012年の3年間の初めに、STRPの作業計画策定のために改正運用規則(決議Ⅹ.9により改善された決議Ⅸ.11)の下で確立された仕組みを通じて定められ、常設委員会に報告される。

3.20092012年の「優先度の高い」課題30項目の暫定的算定費用の総額は63万5,000スイスフランである。

4.「優先度の高い」各課題の略称とその期待される成果を、以下に示す。課題番号は付属書2に示す番号である。各課題の完全な記述は、付属書2の対応する課題番号を参照されたい。

優先度の高い課題とその期待される成果、およびその暫定的算定費用
優先度の高い課題と成果 暫定的算定費用
(スイスフラン)
1.STRPのすでに進行中の機能
1.3
各国のSTRP窓口の支援及びネットワークの構築
20,000
1.4
手引き策定にあたってのCEPAに関する助言
10,000
小計: 30,000
2.戦略的な科学技術的実施
2.1
農業と湿地 — ガイドライン
50,000
2.3
湿地と採取産業 — 手引きの検討
20,000
2.4
湿地とエネルギー問題 — スコーピングの検討
10,000
2.6
湿地と貧困削減 — 手引きの範囲の決定
未算定
2.10
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) — 検討の継続
5,000
小計: 85,000
3.湿地の一般的な賢明な利用
3.1
MAの対応選択肢 — さらなる助言
15,000
3.2
賢明な利用の事例研究 — 普及
20,000
小計: 35,000
4.湿地の目録、評価、モニタリング、報告
4.2
全球湿地観測システム(G-WOS) — 開発
20,000
4.3
ラムサール条約が必要とするデータと情報 — 改良
30,000
4.4
生態学的特徴の記述 — 追加手引き
15,000
4.5
ラムサール条約湿地情報票(RIS)の整合化 — 選択肢の検討
20,000
4.6
生態学的特徴の変化の検知、報告、対応 — 追加手引き
未算定
4.8
効果指標 — 初期指標の運用
25,000
(調整のための費用分。個々の指標の運用費用はこれに加算。現在算定段階)
4.9
効果指標 — 追加指標(第2群)の開発
25,000
小計: 135,000
5.湿地と人の健康
5.1
湿地と人の健康 — 助言と手引き
60,000
小計: 60,000
6.湿地と気候変動
6.1
湿地と気候変動 — さらなる検討と手引き更新
35,000
6.2
気候変動と湿地における影響緩和と適応 — 協働の活動
30,000
小計: 65,000
7.湿地と水資源管理
7.3
湿地と水質 — 手引き
20,000
7.4
湿地と貯水との相互作用 — 検討と手引き
25,000
7.5
乾燥地及び半湿潤地における水資源管理 — 手引き
25,000
7.7
ラムサール条約の水と湿地に関する諸決議 — 統合方法の検討
15,000
小計: 85,000
8.国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)
8.4
国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」 — 選定基準、目標、手引きの検討と整合化
25,000
8.6
生物地理区の分類方法 — 利用可能性とさらなる評価
25,000
8.7
ラムサール条約湿地リストに十分に代表されていないことの評価 — 不足部分、目標、データ源及び情報源に関する助言
15,000
8.8
貯水池その他の人工湿地 — 生態学的重要性の検討と指定の手引き
20,000
小計: 85,000
9.湿地管理 — 再生、影響緩和、代償措置
9.1
湿地消失に対する影響緩和と代償措置 — 手引き
25,000
9.2
湿地再生 — 手引きの更新と拡充
15,000
小計: 40,000
10.交流・教育・参加・普及啓発(CEPA
10.3
ラムサール条約の手引き利用に関する締約国の研修と能力育成
15,000
(開発費用分。実施費用はこれに加算)
小計: 15,000

20092012年における暫定的算定費用の総額:63万5,000スイスフラン


決議Ⅹ.10☝ 決議本文付属書1付属書2 ☟

決議Ⅹ.10
付属書2
科学技術検討委員会の課題の完全なリスト

原注:各課題末尾にある括弧内の参照先は、その課題を命じた主たる出所を示す。COP9の科学技術的優先事項に関する決議(決議Ⅸ.2)による任務が引き続き関係している場合、出所は従前のものを示さず、決議.2とのみ記す(ほとんどの場合)。出所が決議.2と記されている場合でも、ここに示す課題の文言が決議.2の文言と一字一句同じとは限らない。

「優先度の高い課題」と特定され、前掲付属書1にまとめられている課題は、資源が許せばSTRPができるかぎり速やかに作業を開始すべき課題である。

本付属書に記載するそれ以外の課題の中にも、STRPの取り組みが不可欠であると認識されているものがあるが(特に「すでに進行中の機能」である課題1.11.21.5)、これについては、資源と能力が許せば、この3年の間に必要性あるいは要求があった場合に対応するものとする。この作業を完全に達成するには追加の資源が必要になるものとみられる。

能力と資源が許せば、STRPはここに列記するその他の課題についても、実施に着手する方法や手段を探る。

本付属書の節(テーマ別)一覧

  1. STRPのすでに進行中の機能
  2. 戦略的な科学技術的実施
  3. 湿地の一般的な賢明な利用
  4. 湿地の目録、評価、モニタリング、報告
  5. 湿地と人の健康
  6. 湿地と気候変動
  7. 湿地と水資源管理
  8. 国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)
  9. 湿地の管理、影響緩和、再生、代償措置
  10. 交流・教育・参加・普及啓発(CEPA

決議Ⅹ.10付属書2☝ 目次節110 ☟

1.STRPのすでに進行中の機能

原注:本節に記載の機能はすべて、「優先度の高い課題」とされているか否かにかかわらず、必要な場合にはSTRPが取り組むべき「不可欠な課題」として取り扱う。

1.1 
戦略的な科学技術的助言COP決議の科学技術面の実施、傾向、新たな問題、その他専門家の見解が求められる優先事項の全般的な進捗状況など、関連する戦略的な科学技術的問題について先行対策的な助言と事後対応的な助言の両方を、条約に提供する(本付属書第2節に示す課題も参照)。
(決議.2課題2及び
1.2 
すでに進行中の助言機能。要請に応じ、以下の機能に基づいた助言を引き続き提供する。
  1. ラムサール条約湿地の指定と湿地管理問題に関し、生態学的特徴の変化にかかる条約第3条2項の報告を含め、要請に応じて助言する。
  2. 生態学的特徴を損なう変化に直面するラムサール条約湿地を記載したモントルーレコードから、記載されている条約湿地を外すという締約国からの要請に関し、条約事務局に助言する。
  3. 様々なラムサール条約地域(条約の地域区分により各締約国が属している地域)の活動への参加を求める締約国からの要請に対し、助言する。
  4. 湿地関連プロジェクトの選別(スクリーニング)、策定、評価において締約国及び二国間開発機関を支援する。
  5. ラムサール条約湿地情報サービス」の経過報告を受け、その将来的必要性と発展性に関して助言する。
  6. 適切な場合には、他の多国間環境協定(MEA)及び関連する地域フォーラムの科学技術的補助機関(及びその関係するプロセス)との間で、「共同作業計画」に定められた行動を通じて、また「科学上の助言機関議長会(CSAB)」のプロセスを通じて、またその他の手段によって、協力、情報交換、湿地の科学に関連する諸活動の調整を確保する。その目的は、特に、原則、手引き、決議の相互の採択及び承認を促進すること、共通分野、不足部分、共同作業の機会を特定するために作業プログラムを共有すること、科学的な協働全般を向上させることである。
決議Ⅷ.28決議Ⅸ.11、決議.2課題4決議Ⅹ.11、決議.1:戦略1.53.1
1.3 
各国のSTRP窓口 — 支援及びネットワークの構築STRPの作業における各国のSTRP窓口(NFP)の役割及び作業への参加を、特に以下により引き続き強化する。
  1. STRPのメンバーと各国のSTRP窓口との定期的な連絡の方法を強化し、その頻度を上げる。
  2. 会期間に各国のSTRP窓口の地域会合または小地域会合を開催するための機会と仕組みを特定する。
  3. 各国のSTRP窓口すべての関心事項及び専門知識に関する情報を拡充しまとめる。
  4. STRPの個々の課題に関し、草案文書を検討することができ、適宜他の面でも意見を提供することのできる各国の適切な専門家の特定に、各国のSTRP窓口を関与させる。
  5. 所定の「担当政府機関」の要請に応じ、当該国内での小規模助成基金(SGF)プロジェクトのモニタリングと評価にその国のSTRP窓口を参加させる。
  6. 将来的に改善する余地のある項目を特定すること、及び各国のSTRP窓口が必要とするさらなる手引きを提供することを目的として、付託事項及び各国のSTRP窓口の運用規則を常に検討する。
決議Ⅷ.28決議Ⅸ.11、決議.2課題4決議Ⅹ.9
優先度の高い課題
1.4 
手引き策定にあたってのCEPAに関する助言STRPの手引き及び助言の資料作成にあたり、資料の起草、企画、目標設定、利用状況を最も効果的なものとするために、交流・教育・参加・普及啓発(CEPA)に関して条約が利用できる専門知識を十分に生かすよう確保する。また、CEPAの専門家が、得られた教訓を文書化するというすでに進行中の作業を含め、それら資料及び条約の科学技術的資料全般の利用の促進と調査に寄与するよう確保する。(第10節CEPAに示す関連課題も参照のこと)
決議Ⅸ.11付属書、決議.2課題152
優先度の高い課題
1.5 
締約国会議決議案の検討。締約国から提出される締約国会議決議案のうち、科学技術的内容を持つものに対して検討と注釈を加え、常設委員会と締約国会議に助言する。
(決議.2課題1

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

2.戦略的な科学技術的実施

原注:本節の課題は、STRPの作業のうち、新たな戦略的問題、ならびに特定の部門に関わる問題を扱う。可能な場合、STRPはこれらの課題に関する作業を支えるため、様々なラムサール条約地域の成功経験を活用する。

2.1 
農業と湿地 — ガイドライン決議Ⅷ.34に基づき、「農業における水管理に関する包括的評価プロジェクト(CA)」、「食糧と生態系のための水」イニシアティブ、手引きのための「農業と湿地の相互作用に関するガイドライン(GAWI)」の枠組みの成果に照らして、湿地と農業に関する現行の手引きの検証かつ/あるいはさらなる手引きの策定に寄与する。
(決議.2課題149及び150STRP14
優先度の高い課題
2.2 
農業と湿地 — 評価に関する助言。相互に関係のある「農業における水管理に関する包括的評価プロジェクト」(IWMICGIARイニシアティブ)とUNEPの「地球環境概況4(GEO-4)」について、締約国へのさらなる助言を準備する。
STRP14決議Ⅹ.18
2.3 
湿地と採取産業 — 手引きの検討UNEP、IUCNなど関連する組織と協力して以下を行う。
  1. 採取産業が探鉱、開発、操業、閉坑、閉坑後の各段階において湿地に与える直接的及び間接的な影響の評価、回避、最小化、緩和に関する利用可能な技術的手引きを検討する。その際には、新しい採取技術の採用の可能性を考慮し、再生のための選択肢に特に注意を払う。
  2. その検討結果を踏まえ、利用可能な技術的手引きの適合性に関し、及び新たな技術的手引きの策定が必要であればその必要性に関し、勧告を行う。
STRP14決議Ⅹ.26
優先度の高い課題
2.4 
湿地とエネルギー問題 — 検討。エネルギーの生成と移送の活動が湿地に与える影響についてスコーピングの検討を行う。その際には従来型のエネルギー部門、再生可能エネルギー部門の両方を対象に含め、気候変動と湿地に関する問題を考慮し、すでに本付属書で定めた採取産業についての課題に関してなされる作業と適宜関連づけるとともに、これらの部門における、及びエネルギー安全保障全般の問題に関する、変化する最新の政策見通しを考慮する。
STRP14
優先度の高い課題
2.5 
湿地に関する経済部門の問題 — 検討。投資及び保険のリスク分析、トレードオフ、奨励措置、逆効果をもたらす奨励措置、モデリング、予測、水及び湿地関連商品の価格設定、湿地における狩猟と収穫、湿地産物の取引、洪水リスク管理、氾濫原計画規制、健康に関する費用と便益などの面に対する経済学に基づいたアプローチが湿地関連の政策と政策決定に及ぼす影響を深く理解するために、金融業、銀行業、投資業、保険業など経済部門におけるラムサール条約に関連する技術的側面について、スコーピングの検討を行う。その際には、湿地の生態系サービスの価値評価に関する見通しの変化を考慮し、金融部門における湿地問題への意識向上の機会も考慮する。
(決議.2課題167STRP14
2.6 
湿地と貧困の根絶 — 手引きの範囲。国際団体パートナー(IOP)など関連組織やネットワークと協力して、決議Ⅸ.14及び決議Ⅹ.28に示された行動の枠組みを検討し、その結果を踏まえて、これらの決議の実施を支えるため、湿地と貧困の根絶に関する締約国のための科学技術的手引きについて、その最適な形式と範囲に関する提案を策定する。これには特に以下が含まれる。
  1. 各タイプの貧困根絶行動をとるのに最適な規模の特定を含め、湿地の保全及び賢明な利用と貧困根絶とを結びつけるための統合的な枠組みの策定。これには、湿地における狩猟と収穫が及ぼしうる影響を考慮する。
  2. 湿地の賢明な利用を暮らし及び貧困根絶と関連づける指標の特定と開発。
  3. 湿地との関連の中で貧困根絶に取り組むための実用的で体系的な「利用可能なガイドラインとツールの手引き」の策定。
  4. 締約国、国際団体パートナーなどが提供した事例研究文書中の地域社会による湿地資源の賢明な利用が貧困根絶に大きく寄与することを示す例をはじめ、湿地の劣化が人々の暮らしに及ぼす影響の例、湿地の生態学的特徴の維持あるいは再生が貧困削減に寄与する例の整理と検討。
決議Ⅸ.14、決議.2課題19決議Ⅹ.28
優先度の高い課題
2.7 
都市部及び都市周辺部の湿地に関する計画策定と管理 — 手引き。科学技術的な追加手引きがあれば恩恵を受けると思われる都市部及び都市周辺部の湿地に関する問題について、各国のSTRP窓口を通じて締約国から得た助言に照らし、生態系アプローチに従い、気候変動、生態系サービス、食糧生産、人の健康と暮らしなどの問題を考慮しつつ、都市部及び都市周辺部の湿地の管理に関する締約国のための手引きの準備を検討するとともに、締約国に対して情報を普及する方法を検討する。
STRP14決議Ⅹ.27
2.8 
湿地と漁業 — 手引きの必要性の検討。これまでに決議.2の課題17及び18への対応として作成された資料を考慮し、湿地と漁業に関する手引きについて、残っている必要性と不足部分を検討する。さらなる科学技術的手引きが必要であるならば、どのようなものが必要であるかについて、手引き完成に向けた作業計画案を添えて助言を準備する。
STRP14
2.9 
湿地と観光 — スコーピングの検討。観光、持続可能な観光、エコツーリズム、その他湿地でのレクリエーション活動の科学技術面に関する助言策定の必要性、選択肢、機会について、湿地での観光関連の狩猟と収穫の影響も考慮しつつ、大まかなスコーピングの検討を行う。
(決議.2課題164STRP14
2.10 
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI) — 検討の継続
  1. 高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の問題、特にサーベイランス、情報交換、対応戦略に関連する問題について、「鳥インフルエンザ・野鳥対策科学委員会」への参加継続によるものも含め、また高病原性鳥インフルエンザH5N1対策の最善事例から得られた教訓が、保護されている湿地及び湿地の賢明な利用のその他の側面に関するラムサール条約の手引きに影響するかどうかの決定と、それに続くそのような手引きの修正に必要な提案の策定も含めて、常に積極的に全体像を把握し、情報を提供する。
  2. 他の関連機関と協働して、湿地内の家畜や野生動物の他の疾病、特に人の健康に影響する疾病の予防と管理に関する実用的な手引きを策定する最良の方法、及び当該手引きをラムサール条約湿地その他湿地の管理計画に組み入れる最良の方法を検討する。
決議Ⅸ.23、決議.2課題62STRP14決議Ⅹ.21
優先度の高い課題
2.11 
水鳥フライウェイ・イニシアティブ — 知識の共有。重要な裏づけデータや情報を利害関係者その他に広く伝えるのに有効な手段を含め、渡り経路(フライウェイ)規模の水鳥保全の政策と実施方法の策定及び実施の最善事例に関する知識と経験を共有する仕組みを確立するため、ラムサール条約事務局、ならびに「移動性野生動物種の保全に関する条約」及び「アフリカ‐ユーラシア渡り性水鳥保全協定」の事務局及び補助機関その他関連機関との共同の取り組みに適宜寄与する。
決議Ⅹ.22、決議.1:戦略3.5
2.12 
侵入種と湿地に関する手引き。世界侵入種計画(GISP)など関連機関と協力して、湿地とその管理に関連する侵入種について、包括的で最新の地球規模の手引きを準備する(課題6.1も参照)。
(決議.1:戦略1.9
2.13 
企業の「ウォーター・フットプリント」評価。「ウォーター・フットプリント・ネットワーク」のガイドラインなど、企業の環境的・社会的責任に関するプログラムの一環として、企業が自社の水の「フットプリント」を評価するのを支援するために策定されたガイドラインを評価する。
決議Ⅹ.12
2.14 
水田の生物多様性と管理。他の関係機関と協力して以下を行う。
  1. 水田の管理方法の違いを考慮し、GAWIパートナーシップの作業も考慮して、湿地の生物多様性保全と湿地の生態系サービスの提供の支援に果たす水田の役割について、技術報告書を作成する。
  2. 湿地の生物多様性と生態系サービスを保護または増進しつつ必要不可欠な食糧生産も支援する水田計画策定、管理方法、持続可能な稲作農業の研修に関して、利用可能な手引きと情報の検討、普及、交換を、特にFAOIWMI、国際稲研究所(IRRI)、アフリカ・ライス・センター(WARDA)、GAWIパートナーシップその他と協働して行う。
決議Ⅹ.31
2.15 
他の部門別問題や新たな問題 — ウォッチング・ブリーフ。以下の問題に関し、関連情報を便宜的にまとめて整理することを含め、「ウォッチング・ブリーフ」を維持する。
  1. 土壌と土地の劣化が湿地に及ぼす影響。国連砂漠化対処条約との協働が可能な範囲も含める。
  2. 人口分布のパターンの変化とそれが湿地に及ぼす影響。特に、気候変動に関する作業の関連側面に結びついた情報の必要性への理解を深めることのできる余地も含める。
  3. 森林問題のうちで、本付属書で定める気候変動とエネルギーに関する課題のなかでは検討対象となっていないもの、すなわち植林、森林伐採、森林再生が湿地に及ぼす影響などの側面、森林部門における森林性湿地及び湿地に依存する森林に関する普及啓発の必要性、これに関連する湿地タイプのラムサール条約の「国際的に重要な湿地のリスト」における代表度に関する知識の必要性(決議.2課題165)。
  4. 湿地に関連する統治の問題。特に決議Ⅹ.18を考慮し、企業の社会的責任、統治の失敗(汚職など)の防止及び失敗への対応に関する政策の選択肢も含める。
  5. 湿地と対立。20062008年の3年間にSTRP内部で交わされた背景情報を考慮し、適宜ラムサール条約第5条も考慮する。
  6. 複数の国にまたがる場合の科学技術的実施の問題に関する手引きの必要性。
  7. 湿地と遺伝子組換え生物(GMO)。適切な場合には生物多様性条約と協働する。
STRP14
2.16 
将来の優先事項 — 評価。上記の「ウォッチング・ブリーフ」の課題から生じた提案があればそれに加えて、特に以下の分野の問題に関する作業や追加作業にどのような優先順位をつける必要があるかを検討する。
  1. 水管理の社会的側面及び社会的影響評価。
  2. 本付属書の他の課題のリストで言及していない産業部門。
  3. 生物多様性保全、保護区、野生生物の個体数管理。
  4. 自給、商業、レクリエーションのいずれの目的であるかを問わず、湿地の生態系内で行われる狩猟と収穫。
  5. 優先順位の設定における「昌原(チャンウォン)宣言」(決議.3人間の福祉と湿地に関する昌原(チャンウォン)宣言)の幅広い利用、及びその利用に関する経験の条約事務局に対するフィードバック。
(決議.2課題167STRP14決議Ⅹ.3

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

3.湿地の一般的な賢明な利用

3.1 
MAの対応選択肢 — さらなる助言。ミレニアム生態系評価(MA)の成果、特に対応選択肢に関するものを、一層進展させて最も有効に利用する方法を引き続き開発する。特に、栄養塩類循環、食料、気候変動など、『ラムサールハンドブック』の『ツールキット』では現在扱っていない幅広い実施テーマを取り上げる対応選択肢に関するラムサール条約手引きを策定することにより、及びサブグローバル(地域)規模の対応に関する助言を含めて、これを行う。
(決議.2課題13STRP14決議Ⅹ.18
優先度の高い課題
3.2 
賢明な利用の事例研究 — 普及。最近作成された湿地の賢明な利用の側面に関する事例研究について、STRPその他に対する有用性を最大化することに関する助言を準備する。これには、こうした事例研究を広く利用できるように支援する適切なウェブ上の情報源の設計に関する提案を含む。
STRP14
優先度の高い課題

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

4.湿地の目録、評価、モニタリング、報告

4.1 
湿地目録の現状。地球規模及び地域規模の湿地目録の現状に関する最新の概要報告書を準備し、そこでは特に『地球全体の湿地資源と湿地目録の対象となる優先事項に関する評価』の更新版(GroWI-2)、FAOGTOSとのWSSDタイプパートナーシップ、ウェブ上での地域目録の普及、その他関連する協働(特に地球観測機関との協働など)に言及するとともに、方法、対象範囲の不足部分、整合化、普及啓発、知識交換に関して適切な勧告を行う。
(決議.2課題51STRP14、決議.1:戦略1.1
4.2 
全球湿地観測システム(G-WOS) — 開発。以下のような地球規模の湿地観測システム(G-WOS)の仕様を設計する。
  1. 関連する地球観測のプログラムや機関、FAOGTOSとのWSSDタイプパートナーシップ、ミレニアム生態系評価など関連する情報源から提供される協力、データ、分析を活用する。
  2. ウェブ上の湿地目録メタデータベースの要素を含む。
  3. 関連するラムサール条約の効果指標(主に生態系の規模の現状と傾向に関する指標A(ⅰ)の支援、及び決議Ⅹ(COP10 DR 14「湿地管理のためのデータと情報の必要性」)に示すその他の必要性、たとえば目録の必要性や農業、気候変動、人の健康に関連する湿地の状況に関連する必要性などの支援に役立つ。
(決議.2課題50STRP14決議Ⅹ.14、決議.1:戦略1.2
優先度の高い課題
4.3 
ラムサール条約が必要とするデータと情報 — 改良。「ラムサール条約が必要とするデータと情報のための枠組み」に関する決議Ⅹ.14との関連で、以下を行う。
  1. 特にラムサール条約湿地の選定と指定のために必要なデータと情報に関連して、実施経験、エンドユーザーの視点、COP10の決議に明記されたさらなる必要性の分析を活用しつつ、本条約の「ラムサール条約が必要とするデータと情報のための枠組み」を更新しさらに発展させる。
  2. 同枠組みに明記した様々な規模での必要性を満たすための行動及び行動の不足を特定する参考文書を作成する。
  3. 同枠組みを用いて、特に、他の多国間環境協定との整合化及び相互運用性に関する活動、ラムサール条約が策定または支援する関連プロジェクト案の構築及び優先順位付け、「ラムサール条約湿地情報サービス」の将来の拡充を充実させる。
  4. ラムサール条約事務局とともに、生物多様性条約(CBD)とラムサール条約のための内陸水に関する実施についての整合化された報告の枠組み策定の面で、CBD事務局、UNEPUNEP−WCMCと引き続き協力する。
(決議.2課題5252、STRP14決議Ⅹ.11決議Ⅹ.14
優先度の高い課題
4.4 
生態学的特徴の記述 — 手引き。生態学的特徴の記述(決議Ⅹ.15)に関するラムサール条約の手引きを一層拡充し、実施できる範囲で以下を含める。
  1. 実務者が湿地の生態学的特徴記述票に記入するためのさらなる運用手引き。
  2. 関連する概念モデルを用いるための手引きと情報。
  3. 入手可能な場合、関連する各記述票データフィールドと、分析例、事例研究、その他各フィールドに記入するための潜在的、現実的または事実上の標準の適当な情報源とのクロスレファレンス(相互参照表)。
  4. 関連する多国間環境協定の下で、ラムサール条約の情報フィールドを報告の整合化促進と簡素化に用いるための範囲に関する手引き。
  5. 実際の実施経験と得られた教訓の検討。
STRP14決議Ⅹ.15
優先度の高い課題
4.5 
ラムサール条約湿地情報票(RIS)の整合化 — 選択肢の検討決議Ⅹ.15「湿地の生態学的特徴の記述と中核湿地目録に必要なデータとフォーマット:調和された科学的技術的手引き」の勧告、COP10で採択されたその他の関連する決定、各種の要件(多国間にまたがる湿地に関するプロトコルを含む)、本付属書に列記する他の課題のうち、ラムサール条約湿地選定基準、生態学的特徴の記述、ラムサール条約湿地が必要とする情報に関する課題を含め(ただし、これに限定せず)、特にラムサール条約湿地情報票(RIS)に関連する課題の成果を考慮するため、RISとそれに付随する「湿地情報票の注釈及びガイドライン」のフォーマットの再構築かつ/あるいは改訂の選択肢を検討し、必要ならば再構築案かつ/あるいは改訂案を準備する。
(決議.2課題106STRP14決議Ⅹ.15
優先度の高い課題
4.6 
生態学的特徴の変化の検知、報告、対応 — 追加手引き。条約第3条2項及び決議.16「湿地の生態学的特徴の変化の検知、報告、対応のプロセスの枠組み」の付属書に記載された手引きに基づいて、以下の問題に関する手引きをさらに策定する。
  1. 湿地の自然変動範囲の定義を含む「変化の許容限界」。
  2. 条約第3条2項における変化の「おそれ」がある場合の、信頼限界と可能性の度合いの決定。
  3. ラムサール条約の予防的アプローチの適用。
  4. 条約事務局及び締約国が、第三者が作成したラムサール条約湿地の生態学的特徴の変化あるいは変化のおそれに関する報告書を検討するための適切な手順。
STRP14決議Ⅹ.13決議Ⅹ.16
優先度の高い課題
4.7 
モントルーレコード質問票の再設計決議Ⅹ.15「湿地の生態学的特徴の記述と中核湿地目録に必要なデータとフォーマット:調和された科学的技術的手引き」及び決議Ⅹ.16「湿地の生態学的特徴の変化の検知、報告、対応のプロセスの枠組み」の勧告との一貫性を確保するため、及びその他優先事項とみなされるものを考慮するため、モントルーレコード質問票の再設計に関する助言を準備する。
(決議.2課題56STRP14
4.8 
効果指標 — 初期指標の運用。「指標協働協定」の実施、結果と結論の出版・普及、2010年生物多様性目標の諸活動その他関連する評価への寄与、常設委員会及びCOP11への報告を含め、COP9が合意したラムサール条約の実施効果を測る初期指標の運用面で、条約事務局を支援する。
決議Ⅸ.1付属書D、決議.2課題59STRP14、決議.1:戦略2.6
優先度の高い課題
4.9 
効果指標 — 追加指標(第2群)の開発COP9が合意したラムサール条約の実施効果を測る指標第2群を開発し、試験し、適切な場合には締約国その他による利用に向け提出する。
決議Ⅸ.1付属書D、決議.2課題60STRP14、決議.1:戦略2.6
優先度の高い課題
4.10 
ラムサール条約のモニタリングと評価 — 科学技術的側面。本付属書で上述した他の課題に定める効果指標に関する作業を補完し及び補足するような方法で、『ラムサール条約2009−2015年戦略計画』に定める主要成果領域を用いた本条約の実施状況のモニタリングと評価、ならびにCOP国別報告書の情報の評価について、その科学技術的側面に関して条約事務局、常設委員会、締約国を支援する。
STRP14決議Ⅹ.1
4.11 
ラムサール条約湿地をはじめとする湿地の現状と傾向 — 評価。一般的な湿地の現状と傾向に可能な限り基づいて、また適宜「ラムサール条約湿地データベース」、条約実施の効果指標、ミレニアム生態系評価などの評価の取組みの結果を利用して、ラムサール条約湿地リストに記載された湿地の生態学的特徴の現状と傾向の分析を準備する。またそうすることによって、国際的な2010年生物多様性目標に関わる評価プロセスなど、関連する様々な評価プロセスに寄与するよう努める。
(決議.2課題57及び58、決議.1:戦略1.2及び2.6
4.12 
管理効力のツール — 手引き。締約国が、WWF及び世界銀行その他が開発した「管理効力追跡ツール」(METT)を、湿地の生態学的特徴の変化の検知、報告、対応の定期的な評価にどのように適用できるかについて、手引きを準備する。
決議Ⅹ.16

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

5.湿地と人の健康

5.1 
湿地と人の健康 — 助言と手引き。湿地と人の健康及び福祉とのつながりを、特に以下によりさらに調査する。
  1. STRPの2008年版報告書など関連する情報源から、健康部門のための人の健康と湿地に関するさらなる成果を引き出す。
  2. 湿地生態系及びそのサービスと、人の健康及び福祉との間の相互作用をさらに評価する。その際には、すでに本付属書で定めた高病原性鳥インフルエンザH5N1に関する課題が持つ人の健康の側面、ならびに湿地生産物と湿地種の違法取引や移動による疾病の蔓延が人の健康と湿地に与えるリスクも考慮する。
  3. 社会経済的側面と生態学的側面の両方に配慮し、湿地生態系に「health(健全性)」を当てはめることの適否、湿地生態系の健全性と生態学的特徴や生態系サービスという概念との関係、条約の下での賢明な利用及び生態学的特徴の目標の実施とモニタリングに対するその意味について、ラムサール条約との関連のなかで解釈と概念的考察を展開する。
  4. 地域ごとに湿地と人の健康に関する知識と情報の不足部分を特定し、当該不足部分を埋める方法と手段を特定する。
  5. 人の健康に大きな意味を持つラムサール条約湿地の重要性を広める機会を特定する。
  6. 湿地と人の健康問題の共同管理に対する適切な対応を明らかにするプロセスに関して、トレードオフ、健康影響評価方法の適用、情報の透明性の向上、軽視されている利害関係者を代表すること、水管理など他の部門の中核事業への関与を含め、湿地管理者及び健康部門のための手引きを準備する。
STRP14決議Ⅹ.23
優先度の高い課題
[編注]
2012年2月にラムサール技術報告書第6巻「健康な湿地、健康な人々:湿地と人類の健康との相互作用の総説」が刊行された:Horwitz, P., Finlayson, M. and Weinstein, P. 2012. Healthy wetlands, healthy people: a review of wetlands and human health interactions. Ramsar Technical Report No. 6. Secretariat of the Ramsar Convention on Wetlands, Gland, Switzerland, and The World Health Organization, Geneva, Switzerland, 106pp., ISBN 2-940073-32-5. [on-line] http://www.ramsar.org/pdf/lib/rtr6-health.pdf (4.1 MB)

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6.湿地と気候変動

6.1 
湿地と気候変動 — さらなる検討と手引きIPCCなどと協力して、湿地に対する気候変動の現在及び将来の影響に関する最新の知識について、及び湿地への影響に対処するための適切な政策及び管理上の対応について、手引きを策定する。これには特に以下が含まれる。
  1. 20062008年の3年間に実施した初期作業に基づく、気候変動が湿地に与える水文生態学的影響の評価方法のさらなる開発(データが不十分な分野の評価方法の検証も含む)。
  2. 気候変動の影響によって湿地が失われた場合に人の健康に及ぶ影響を実証するための、土地利用及び人口分布の傾向との関連における湿地分布の検討。
  3. 湿地の管理と再生が気候変動への適応にどう寄与できるかに関する手引き(適切であれば、本付属書で定める湿地の再生と回復に関する他の課題と結びつける)。
  4. 特に湿地の温度的、化学的な状態や水文学的パターンの変化、人工湖など貯水及び送水用のインフラストラクチャーの増加が、どのようにして非在来種の湿地への侵入経路を変化させ、その蔓延、定着、在来種への生態学的影響を左右しうるのかに関する新たな情報の検討(課題2.12も参照)。
  5. 進行中の「北極圏生物多様性評価」を考慮した、北極評議会との連携による気候変動に対する北極の湿地の脆弱性の評価及び賢明な利用ガイドラインの策定。
STRP14決議Ⅹ.24
優先度の高い課題
6.2 
気候変動と湿地における影響緩和と適応 — 協働の活動。ラムサール条約事務局と共に、UNFCCCCBDUNCCDIPCCUNEPUNDPFAO、世界銀行など、関連する国際的な条約や機関と協働して、多機関による協調的な作業計画の策定に取り組み、湿地生態系が気候変動の影響緩和と適応に対してなしうる寄与、特に気候変動に対する脆弱性の低減及び回復力の強化への寄与を調査し、さらに以下を行う。
  1. 水と食糧の安全保障及び人の健康に関して湿地が果たす重要な役割を認識する、相互支援的な適応及び影響緩和プログラムの手引きを策定するために、UNFCCCなど関連する団体と協働する方法と手段を構築する。
  2. 次回の「生物多様性関連諸条約の科学上の助言機関議長会(CSAB)」で、湿地と気候変動に関する科学的な問題と情報への注意を喚起し、その会合を利用して湿地と気候変動に関連する諸問題に対する科学面での一層の協働を奨励する。
  3. 特に湿地と気候変動に関連する科学的な問題に関してIPCCと協働する方法を構築するとともに、湿地の重要性に対する気候変動問題関係者の意識向上のため、湿地と気候変動に関する適切な科学的報告書の作成と出版などにより、IPCCの将来の作業に寄与する。
STRP14決議Ⅹ.24
優先度の高い課題
6.3 
バイオ燃料と湿地 — 検討と手引き
  1. 湿地への影響との関連で、世界のバイオ燃料生産の分布について検討する。
  2. 既存の最善管理事例の手引き、及び湿地に関連するバイオ燃料原料の栽培に関する社会的、環境的持続可能性基準を検討し、照合し、適切な場合には、このような手引きや基準を策定する。
  3. 湿地に関連する持続可能なバイオ燃料問題への取り組みに関し、締約国間でさらに議論することを検討する。
  4. その結論を常設委員会に助言する。
  5. バイオ燃料を扱う国際団体と協力する。
決議Ⅹ.25

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7.湿地と水資源管理

7.1 
河川流域管理計画の実施 — 検討。環境のための水流(量)に関する国内法の適用経験など入手可能な河川流域管理計画の実施例をできる範囲で検討し、新たに得られた教訓を文書化する。
STRP14
7.2 
水と沿岸域の統合的な管理 — 事例研究。『ラムサールハンドブック』の関連する巻を参照しつつ、河川流域管理、統合的な沿岸域管理、環境のための水流(量)その他水管理問題に関する国内法に関する最善事例を明らかにするため、既存の事例研究集を最大限に活用する方法を調査する。
STRP14、決議.1:戦略1.7
7.3 
湿地と水質 — 手引き。20062008年の3年間にSTRPが整理して草案を作成した資料に基づき、最終的な成果を「ラムサール条約の水関連の手引きの統合的枠組み」に組み入れるため、湿地に関連する水質の問題に関する手引きを策定する。
(決議.2課題91STRP14
優先度の高い課題
7.4 
湿地と貯水との相互作用 — 手引き。湿地と貯水(特にダム及び地下水)との相互作用に関する技術報告書を準備し、特に以下()()を含めるとともに()を考慮し、決議Ⅸ.1付属書Cⅱ「湿地の生態学的特徴を維持するための地下水管理に関するガイドライン」の実施を支えるためのさらなる情報と拡充した手引きを提供する。
  1. 特に気候変動を背景にした水供給、食糧供給、エネルギー供給の安全保障との関連で、貯水に関する新たな見通しについての諸問題。
  2. 上流及び下流の湿地の生態系のために、ダムその他の水管理用インフラストラクチャー(洪水の防止・緩和のシステムなど)の運用を最適化することに関する手引きの選択肢。
  3. 貯水池その他の人工湿地が果たす生態学的役割(課題8.8)。
決議Ⅸ.1付属書Cⅱ、決議.2課題90STRP14
優先度の高い課題
7.5 
乾燥地及び半湿潤地における水資源管理 — 手引き。「ラムサール条約−CBD共同作業計画」により生物多様性条約と協議し、かつ国連砂漠化対処条約とも協議の上で、気候変動と砂漠化に関する側面を含め、乾燥地及び半湿潤地における水資源管理に関する手引きを策定する。
(決議.2課題86STRP14
優先度の高い課題
7.6 
沼沢型湿地の環境のための水需要 — 手引きの選択肢。沼沢型湿地の環境のための水需要の決定に関する手引き策定の必要性とその可能な選択肢を検討する。
STRP20032005年作業計画から繰越し、STRP14
7.7 
ラムサール条約の水と湿地に関する諸決議 — 統合方法の検討。決議.17「締約国会議の決定の再検討」の下で20062008年の3年間に常設委員会を通じて行われた作業に基づき、COP12までに、水と湿地の相互作用に関してラムサール条約締約国が採択したすべての決議を再検討し、最近の展開との関連で、それら決議の各側面の統合、更新、廃止に関する勧告を行い、COP9が採択した決議Ⅸ.1付属書C「ラムサール条約の水関連の手引きの統合的枠組み」に必要な更新を含め、水と湿地の問題に関する新たな決議草案を準備する。
STRP14決議Ⅹ.19
優先度の高い課題

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

8.国際的に重要な湿地(ラムサール条約湿地)

8.1 
ラムサール条約湿地選定基準及びガイドライン — すでに進行中の検討。以下に挙げるラムサール条約湿地選定基準に関する課題のほか、選定基準とガイドライン全体を常に検討して、地球規模の湿地保全と賢明な利用の優先事項を確実に反映するようにする(STRPのすでに進行中の機能)。
(決議.2課題112
8.2 
ラムサール条約湿地選定基準6及び9を適用するための推定個体数 — 更新。条約湿地選定基準6及び(進行中のSTRPの機能)を適用するための関連する推定個体数及び1%基準値のリストの定期的な更新(適切な場合には他のふさわしい機関による)を確保する。
決議Ⅸ.1付属書BSTRP14
8.3 
特定の湿地タイプに関するラムサール条約湿地選定の手引き — 利用者のニーズの検討。20062008年の3年間に行われた条約の科学技術的手引きの利用可能性と有用性の総合的な検討の結果に従って、及びそれに照らして、CEPA専門家からの情報も得つつ、特定の湿地タイプの選定に関するラムサール条約の手引きを利用者が必要としているか、及び手引きがそうしたニーズを満たすのに有効であるかについて、さらに詳細で具体的な検討を行う。
(決議.2課題107STRP14
8.4 
「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」 — 選定基準、目標、手引きの検討と整合化。20062008年の3年間に開始された予備分析に基づいて、「ラムサール条約湿地選定基準とガイドライン」全体を常に検討するという進行中の課題(上記課題8.1)に影響を及ぼすことなく、目標やガイドラインその他、選定基準の実施を支える資料の整合性、完全性、論理、一貫性、明確性に関して、徹底的な検討と提案を行う。これにはラムサール条約の『戦略計画』の各目標、科学的評価のための背景に関するデータ源、修正版の「国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」で示された手引きが含まれる(ただしこれらに限定されない)。
(決議.2課題110及び112STRP14
優先度の高い課題
8.5 
選定基準9の背景情報の必要性 — 検討選定基準9の適用を裏づけることのできる背景情報、または裏づけるはずの背景情報を具体的に検討し、それに関する勧告を行う。
STRP14
8.6 
生物地理区の分類方法 — 利用可能性とさらなる評価。20062008年の3年間で完了したラムサール条約湿地選定基準の適用に関連する生物地理区の分類方法に関する作業に続き、以下を行う。
  1. 界・地方・エコリージョンの分類方法に関するGISを用いた情報をダウンロードできるウェブ上のポータルを開発し、ラムサール条約湿地情報サービスの中で運営するようにする。
  2. 国際的に重要な湿地のリストを将来的に拡充するための戦略的枠組み及びガイドライン」の適用を支援するために、陸域及び内陸に関する生物地理区の既存の分類方法の有用性についてさらに調査を進める。
STRP14決議Ⅹ.20
優先度の高い課題
8.7 
ラムサール条約湿地リストに十分に代表されていないことの評価 — 不足部分、目標、データ源及び情報源に関する助言。各湿地タイプの代表度を評価するためのデータ源と方法に関する助言を含め、かつ条約の効果指標と結びつけつつ、ラムサール条約湿地リストに十分に代表されていないことの特定と対処に関してさらなる助言を策定し、リストの各湿地タイプの代表度について、目標を定める方法を調査する。その際には、湿地ネットワークの接続性と機能の一貫性という側面に全体的な重点を置き、湿地ネットワークという概念に関する地域レベルやその他レベルでの経験も検討する。
(決議.2課題104STRP14決議Ⅹ.20
優先度の高い課題
8.8 
貯水池その他の人工湿地 — 生態学的重要性の検討と指定の手引き。都市部の湿地、ダム、その他水管理用インフラストラクチャーに関して本付属書に定める課題を考慮し、以下を行う。
  1. 水生生物など水に依存する生物相による人工湿地の利用を含め、貯水池その他の人工湿地の生態学的重要性について検討する。
  2. ラムサール条約湿地リストに加えるための当該湿地の選定と指定に関し、すでにそれを実施した締約国が得た経験を考慮し、他の関連団体と協働して、締約国のためのさらなる手引きを準備する。
(決議.2課題108STRP14
優先度の高い課題
8.9 
複数の国にまたがるラムサール条約湿地の管理 — 事例研究の検討。「複数の国にまたがるラムサール条約湿地」の指定と管理に関する既存の柔軟な選択肢を要約するために、「複数の国にまたがるラムサール条約湿地」イニシアティブから選んだ事例研究を評価する。
常設委員会決定38−6COP10全体会合)

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

9.湿地の管理、影響緩和、再生、代償措置

9.1 
湿地消失に対する影響緩和と代償措置決議Ⅹ.16「湿地の生態学的特徴の変化の検知、報告、対応のプロセスの枠組み」に基づいて、また「ノーネットロス」政策の実施に関して入手できた情報から得た教訓、「緊急な国家的利益」の検証、条約第2条5項第4条2項かつ/あるいは決議Ⅶ.24が関連するその他の側面も含め、湿地の面積と価値の喪失に対する影響緩和と代償措置に関する手引きを策定する。
(決議.2課題128及び166STRP14決議Ⅹ.16
優先度の高い課題
9.2 
湿地再生 — 手引きの更新と拡充決議Ⅹ.16「湿地の生態学的特徴の変化の検知、報告、対応のプロセスの枠組み」に基づき、また、優先順位の設定方法及びラムサール条約のその他のツールや手引きとのつながり、特に気候変動に関するものや生態系サービスの経済的価値に関するものを含め、消失した湿地や劣化した湿地の再生と回復に関し、既存のラムサール条約の手引きの更新案、拡充案を準備する。
(決議.2課題127STRP14決議Ⅹ.16、決議.1:戦略1.8
優先度の高い課題

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節1目次10 ☟

10.交流・教育・参加・普及啓発(CEPA

10.1 
ラムサール条約の手引きの最適な提示 — さらなる助言。既存の手引きの利用状況と効果を検討した結果に照らし、COP決定の統合と再検討に関する決議Ⅸ.17に基づく行動と連携して、ラムサール条約の手引きの科学技術的側面の最適な提示に関する提案に一層寄与する。
(決議.2課題3及びSTRP14
10.2 
STRPの主要な手引きに基づく普及啓発資料の準備STRPが準備する主要な手引きの主題となっている事項に対する意識と理解の向上を支援するために、普及啓発目的の資料、特に関連部門の意思決定者その他主要な利害関係者に対するものを準備する機会を探る。
(決議.2課題153
10.3 
ラムサール条約の手引き利用に関する締約国の研修と能力育成。将来のニーズの評価や定義とともに、科学技術的手引きなどSTRPが準備した資料の解釈と実施を支援するために、締約国の関連する利害関係者に対し研修と能力育成を行う効果的な方法を開発する。
STRP14、常設委員会第36回会合でのSTRP議長)
優先度の高い課題

決議Ⅹ.10付属書2☝ 節110目次  ]

決議Ⅹ.10☝ 決議本文付属書1付属書2  ]


[ PDF(407 環境省)] [ Word(ZIP 圧縮 74 ]    [ Top ] [ Back ]    [ Prev ] [ COP10 ] [ Next ]
[英語原文:
ラムサール条約事務局,2008.Ramsar Resolution X.10 "Future implementation of scientific and technical aspects of the Convention", Convention on Wetlands (Ramsar, Iran, 1971). [Word] http://www.ramsar.org/doc/res/key_res_x_10_e.doc, [PDF] http://www.ramsar.org/pdf/res/key_res_x_10_e.pdf.]
[和訳:
表紙『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』 『ラムサール条約第10回締約国会議の記録』(環境省 2011)[この決議のPDFファイル: http://www.env.go.jp/nature/ramsar/conv/ramsa/ketugi10.pdf ]より了解を得て再録,琵琶湖ラムサール研究会,2012年.]
[レイアウト:
条約事務局ウェブサイト所載の標準的な英語ページにおおむね従う.]
[フォロー:
COP11決議案17(英語原文:Word 292 PDF 226 ) .]

ナビゲーション2/2 琵琶湖水鳥・湿地センターラムサール条約ラムサール条約を活用しよう | ●資料集第10回締約国会議
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Last update: 2012-03-27, Biwa-ko Ramsar Kenkyu-kai (BRK).