日々、在りしことども



燕去月後期
在りしことどもを、思い出す順にぶつぶつと。


某日、とある小説が欲しくなるも、同人誌だったため割高単価にぐずぐずと迷っていたところ、通販分が売り切れてしまい、気がつけば朝一で店に店頭在庫の取り置きを依頼し、県境を越えて電車に揺られる私の姿がありました。
――あれだ。費やした労力と報酬は反比例したほうが楽しめるという、心理学的にも証明されている生き方を忘れていた。自分が間違っていたのだよ。

同人誌を扱っている店に入るのは初めてではなく、同人専門店にも何処かで足を踏み入れた記憶はあるものの、明確な目的を持って、というのが今回が初だったためか、そこそこ胸は鳴る。
感想だが、意外なほど店舗は小さかった。確かに品はそれなりにぎっしりと揃っていたが、こんな 狭くて本当に品物を一通り展示販売できているものか? 普通の書店に慣れている身としては、ネット通販の方がまだまだマシなようにも感じた。

後、ぶらりと街をうろつく。茶葉は現在余っているが、割引されていたので買い溜めとばかりに 手を出した。趣味的な煙草屋があったので、細い葉巻と紅茶風味の煙草を入手。後者は、箱を開けた時の香りが良かった。これは他の煙草にも言えることで、自分は吸うよりそのひと時が楽しい。
味は――ここいらの感想は後日のものだが――もともと私は吸わないので良く判らないが、判らないぐらいに薄いな、と。たまに口に挟むのがショートピースなためか、余計にそう思った。軽い煙草とフィルターというのは、確かにいらぬ後味も口に残らず、或る意味便利で手軽なものだが、では何故煙草を吸っているのかそれが判らぬ。あの甘い芳香を殺して、本末転倒以前ではないかと思う。
ちなみに前者の細葉巻だが――葉が甘く味付けられていた。吸い口付近を噛み千切って捨てても、まだ甘い。これ、作った人間出て来い。残り九本、その鼻の穴に残らず突っ込んでやる。
甘い芳香と甘味料は多分間違いなく違う。



おがきちか氏の諸作品を読む。
ミネラルウォーターに似た名の連載を立ち読みした時には、それなりに楽しめて、白い ものを描く作家だという印象を持った。
そのまま、そして今日まで、これほど良いものを作る作家だとは知らなかった。
ハニワ子も良かったが、短編がまたよろしい。
私自身が短編好きというのもあるだろうが、だからこそ『短編とは単に分量が少ないだけの作品の ことではない』と実感できて、非常に嬉しかった。
そうして『Landreaall』。まだまだ続くようだが、今現在、どうしてこれが大きく話題になっていないのか、理解に苦しむ良作である。

氏の作品は世界に独自のものがある。
異世界ものでオリジナリティを出そうとすれば、興味や連想を誘う伏線風謎言葉のばら撒きや、捻った設定の説明に言葉を費やすことが多い。氏のように、隣に実在する世界をずいっと引っ張ってきたかのような何気ない自然さは、見事なものだ。
氏の描く登場人物たちは実に魅力的だ。
特に女の子。可愛かったり、エロかったり、食い意地が張った馬鹿だったり、泣いたり、鼻血を垂らしながらサンタと殴り合ったり。実に生き生きとしている。というか、野郎どもも勿論含め、多くが一癖二癖人間としてスプリングが効いている。
後、特に印象に残っている点として格闘場面の巧みさ。こういうのは解説をつけて細かく描写しても、『作者の脳内ルールにおける自称(自分信仰)合理的な最強やり取り』という実に下らないものになってしまう。
で、ズバッ、シュゴッなどと残像ばかりを描けば、当り前だがリアリティなど何処にもなくなる。
そして氏の場合、人間同士の格闘場面が実に具体的で説得力に溢れている。いや、そうとばかりも言えないか。時には一コマ、二人の間に応酬されたと思しき残像だけが複数、描かれているものもあった。なのに、こちらには達人同士のやり取りを目にした直後のような感心が、自然な説得力を持って胸に湧き上がっているのだ。
……どうして、などと聞かないで欲しい。私だって知らんし、分析する気もない。
ともかく、氏の格闘描写はそこいら辺のとは一味違うのである。

以上、たぎるがままに褒め上げ、置く。
燕去月二十九日
煙草、箱空けた瞬間の風味、吸って味なし、毒なし、ショートピースとの違い
燕去月二十八日
同人
思い立ったが
通りすがりの寺社
紅茶風味のタバコ
燕去月二十三日
おがきちか
燕去月十九日
ふらふらと出かけ、夕立にあう。
燕去月十六日
工芸茶なるものがある。 茶葉を球状に加工し、湯を注げば花の様に開く、目でも楽しむ中国茶の一種。
凝ったものになれば乾燥させた花びらを幾重にも使い、水中にてまさしく観賞用の花の如く咲くものもあるが、まあ形がまん丸くて面白いジャスミンティーぐらいに思っておけばいい代物だ。
先日、その特売を見掛けた。十種総計約三十数個、それで二千円。普段飲みはしないが、まあ相場の半額からもう一回半額にしたぐらいだと思う。迷わず入手。

そういうわけで本年の台湾春茶も現在手元にあるが、本日の茶は『茉莉茘枝』。
……初めて自分で淹れる工芸茶は上手く開きませんでした。ちぃと無残。
燕去月十三日
昼、少し出掛け、書店や雑貨屋を冷やかす。何故か脇道が混み合っていたりと謎な盆模様。
立って半畳寝て一畳の畳が欲しかったが、手頃なものが無かったため、畳表の上敷き――要するに畳ござか――を購入。嗚呼、あいあむ、じゃぱにーず。
他、大量の乾麺と粉末液体燃料の素ノンアルコールを仕入れ帰宅。本日、記すようなこととてこの程度。
燕去月十二日
本日、夏の定番ペルセウス座流星群。
夕刻より、時折雷付きで雨。
先日の今一、華に欠けるシャトルのお使いなどを思う。

うう、浪漫てぇのはなァ、浪漫てぇのはなァ……
燕去月十一日
どうにもあえて書くような事などなし。夕方と夜だけで構成された世界に行きたい。日中なんて、洗濯時以外に必要は無い。

以下雑感。
麦酒はサッポロに限る。少し高めのクラッシック(まだあろうか?)を始め、真っ当で確か。
麒麟も良い仕事をしている。最近、コンビになんぞで並んでいる小瓶のチルドビールとかいう賞味期限六十日程度のものは、実に良かった。
ヱビスは言うまでも無い。懐かしいところで緑の瓶のハートランド。近頃、余り飲まぬ黒麦酒は 少し舌に強烈だが、クラッカーにカマンベールチーズなどを摘みに飲むと、相変わらず西欧の親爺連中の腹が何故突き出しているのか、恐怖と共に理解が及ぶ。
第三の麦酒とやらに追いやられつつある発泡酒だが、各企業の努力だけは本物だと思う。発売当初のあのすっぱく不味いどうしようもない味を覚えている自分としては、そこだけは認めたい。
で。
銀河高原ビールとかいうものがある。妙におしゃれでやたら高く、周囲の誰も飲んでいる姿を見たことは無いが、何故か何処に行っても結構な数、棚に並んでいる謎の酒だ。そこの『クール&クラッシュ』とかいう見慣れぬ三百五十ml缶六本セットが千円ちょい――その店ではヱビスが同じぐらいで、発泡酒だと六百円ぐらいだったか――であったので、購入。試飲に及んでみる。
スムーズに飲める、というのが率直な感想。売り文句のキレだの華やかな香りは今ひとつ良くわからなかったが、飲みやすく悪酔いもしない。強烈な癖や刺激はないが、良い酒であった。何となく、女性向けではなかろうかと思う。
ついでに同メーカーの白ビールとやらも飲んでみたが、『畜生、白くないぞ黒を見習いやがれあの潔い黒を』と、軽く啖呵を切っておく。

以上、酒飲み雑感。たまには屋外で焚き火を肴にしたいと思いつつ。
燕去月十日
キーボードに烏龍茶をぶちまける。分解して拭いて乾かしたところ、いい加減耐久寿命なのか 一つのキーの土台が砕ける。
『←』なので、流石にちと不便。前向きに交換を検討すべきか。
燕去月六日
久々に飲む紅茶が美味しい。

昼、ちと出る。図書館にて貸し出し延長を頼んだところ、『既に一回やってますね。ちゃっちゃと返却しやがって下さい』と笑顔で断られる。 地元図書館と違ってけちだなと思うものの、多分悪いのはそんな以前から借りていた自覚の無い自分。
さて、夏が終わる頃までには返却できるか。
燕去月五日
体調が今一つだったここ二三日、水分補給を兼ねてジュースをがぶ飲みする。
初めての行為であったが、成程これはそれなりに良い。コーラを常飲するアメリカ人が理解できた。
糖分は疲れを癒し、味覚を刺激する。スポーツドリンク系統を選べば、塩分やミネラルといった 各主成分の補給も可能。何より、幾ら飲んでも気分が悪くなったり意識が朦朧としない。
毎晩、流し込んでいる酒に比べれば、随分知性的な作業に向いた、健康飲料ではないか!

値段も、酒に比べるまでも無く安く、カロリーは瓶ウイスキーとあえて比較する必要もなかろう。
……しかし、簡単な疑問が一つ。そこまで問題を感じつつ、何故自分はこれほど酒を飲み続けているんだ?
燕去月四日
蒸し暑い中、出る。今一つ良きものに巡り合わず、足を運んだ店は商店街ごと休み。
まあ、それでも書店図書館など気の向くまま時間を費やす。
夜、変わらず暑し。おのれ。
燕去月三日
たまには許されるだろうとクーラーの効いた部屋で涼んだのが昨日。
御蔭で一日中体調が崩れ続けたのが本日。
……畜生、何かの皮肉かこれは。
燕去月一日
ひぐらしの声を、数日前より時折耳にする。季節を感じる、というのは素晴らしいことだ。 以前、在りしことども 端月/ 如月/ 梅香月/ 桜月/ 夏初月/ 雨月/ 七夜月/
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