amsterdam



ゴッホやレンブラントなどの美術館の街として有名なアムステルダムですが、この街
にはもうひとつ、ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団という一流オーケストラを抱える
音楽都市としての、別の顔ももっています。コンセルトヘボー管弦楽団もやはり、110
年を越える歴史を誇る由緒あるオーケストラで、世界5大オーケストラのひとつにかぞえ
られています。 1895年から半世紀の長きにわたって君臨したメンゲルベルクによって
徹底的に鍛えられ、薫陶を受けた伝統の音は、戦後ベイヌム、ヨッフム、ハイティンクを
経てリッカルド・シャイーへと引き継がれています。

1888年の楽団創設の時以来ずっと使用されているコンサート・ホールが、このコンセルト・
ヘボーです。フェルメールやレンブラントの絵画で超有名な国立博物館の南側に広がる
美術館広場をまっすぐ4百メートルほど歩くと、路面電車の停留所の向こうに、古代ローマ
神殿風のファサードをもち、全体としては国立博物館やアムステルダム中央駅舎などと
同種の、煉瓦壁のこの街独特の美しい様式で建築されたコンセルト・ヘボーが現れます。
切り妻の大屋根の頂には、大きな黄金の竪琴が誇らしげに、美しく輝いています。
近年、この建物の左側壁一面を覆うように、大きなガラス製のテラスが設置され、内部は
ホールからも回遊できるホワイエとなっています。

大ホールは、形状的にはシューボックスと分類されるでしょうが、ウィーンのムジーク
フェラインザールなどの典型的なそれと比べると横幅にたっぷりとゆとりがあり、天井も
高く、容積的にはどちらかと言うとコンツェルトハウスの大ホールに近いものがあります。
正面のステージ後方に設置された美しい高級家具のような巨大なパイプオルガンを
はさんで二階部分から一階のステージ後方まで階段がV字状に連なり、その両脇を
ステージ上の客席がひな壇状に優雅な曲線のシンメトリーを形成しているのが、最大の
特徴で、こういうユニークなステージデザインのホールは他に見られません。指揮者は
ステージ上の、この長い階段を降りて指揮台に着き、演奏が終わればこれをえんえん
と上らないとバックステージへたどり着けません。老指揮者泣かせでもあるし、演奏が
ショボイと、指揮者が階段を上ってる途中で拍手も途切れてしまって客がパラパラと
帰り始めることとなり、その気配を背中に感じながら、まだ一段、二段と上り続けない
といけない状態というのは、彼にとって誠に残酷な試練であります。

ここでは、午前にヘンヒェン指揮ラジオ・フィルハーモニッシュ・オーケストラの演奏で
ブルックナーの7番と、午後からシャイー指揮コンセルトヘボー・オーケストラでタンホ
イザーのバッカナール序曲とマイスタージンガー序曲、ロベルト・ヘイルのバリトンで
ワルキューレと神々の黄昏からの抜粋など、ワーグナープログラムが聴けた。 まだ
今ほどインターネットが普及していなかった時だったので、日本でオランダ商業観光局
に公演スケジュールを郵送してもらい、チケットエージェンシーを通じて予約しておいた
ので、良い席で素晴らしい演奏が1日に2演目も聴けたのは大変に幸運でありました。

特に午前のブルックナー7番は、日曜の午前にふさわしく、金管の響きひとつとっても
実にふくよかでまろやか、大変に美しい演奏で、うっとりと聴き惚れました。 日本の
オケではこのような演奏に接した事がありません。このホールでの演奏を聴くだけの
ために、はるばるこのアムステルダムまでやって来た甲斐がありました。もちろん、
美術館巡りもしましたが。

ウィーンのムジークフェライン、ベルリンのフィルハーモニー、そしてアムステルダムの
コンセルトヘボーという、ヨーロッパの3大ホールで、いずれも大変素晴らしい演奏に
巡り合うことができ、ミューズにはどれだけ感謝してもし尽くせないのである。

コンセルトヘボーファサードの夜景 大ホール舞台中央の美しいオルガン
指揮者が降りる階段上から客席を観ると... 建物側壁面をすっぽりと包む新ホワイエ

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