日々、在りしことども
月見月二十九日
『シフト U』読了。
これならハードカバーで出すのも頷ける。十冊以上続いている人気シリーズが止まったままなのも気にならない。生物の真っ白い骨格標本のように、シンプルでがっしりとしていながらも極めて自然な、無駄を削いだ物語だと思う。
前作は、壮大な物語の描かれた巨大なタペストリーの一部を、独特な才ある人がトリミングしてみせたような話だった。見せ方に工夫があり、面白さも独自性もあったが、どちらかといえば奇手、映画公開の前に作った一時間の特別テレビ番組。或いは細部の隅まで設定を詰めながら決してそれを公開するつもりのない架空歴史絵巻の一場面だけを、わざと酔狂極めて表現、発表してみせたような雰囲気を覚えた。そして今作。歯車がカチリと一つ、前へ動くのを
頭の奥の方で感じた。
このシリーズが後何冊ほど出て、どのように決着が付くのか、まだまだそれは解らない。
ぱっと見、取っ付きが地味なせいか、そう話題になっているような気配も知らない。
それでも自分は、今後将来、この作者氏の代表作と必ず呼ばれるであろう作品の一つに、同時代に触れて読んでいるのだなと、肌に感じる喜びがある。
良いものを読んだ。本日以上。
月見月二十六日
不毛。
月見月二十五日
無。
月見月二十四日
図書館、オイル、食材他。そろそろ地酒も冷やおろしの季節。
麻婆豆腐用に以前から欲しかった花山椒を案外あっけなく入手。しかも安い。
同店で粉末胡椒も詰め替え用を購入。最近、近場では何処も彼処も『味付け』塩胡椒しか
置いてなかったため、実に嬉しい。
豆板醤だけは別店で改めてもう一つ購入。約百グラム二百数十円と、キロ六百数十円
では、色々間違っている気がしても後者に手を伸ばさざるを得ない。何考えての値段設定であろうか。
久々にラーメンを食べに『にっこう』へ赴く。塩、大盛り。
バイトを二人入れたせいか、以前にあった注文からの待ち時間もほとんどなく、出来上がる。
相変わらず味は良く、一口啜ったスープから乾物魚類の風味を感じてからは一心不乱に箸を動かす。『美味しいことは幸福だ』『噛み締めた食材の風味がまた』と、全自動でにやけ笑いを浮かべる程には満たされた。
店を出る直前、レジにて店主氏より『新しい麺はどうでしたか?』との問い。
『これまで余り通ってなかったんで――形が変わったんですか?』
『(客を傷付けまいとする優しい微笑み)』
『……ああ、粉ですか』
『ええ、粉が』
鈍い人間は、以前頼んだのが付け麺だったせいか、『前ほどつるつるしてないなー』ぐらいの感想でした。どっちも美味しいからいいやって鈍さは、日々精進している料理人には失礼だからバレナイようにすべし。
以上、本日の教訓。
月見月二十日
『オオカミさんと七人の仲間たち』読了。かなりの当たり作品。
小説には一人称だの三人称だのがあり、これは三人称になるのだろうが、むしろ連想するのは弁士。無声映画にテンポ良く面白愉快な語りを添える、あれである。
ただでさえ無茶にすっ飛んだ学園ものが、更に語りによって加速。実に楽しい物語が出来上がっている。
続刊も出そうで期待溢れるところだが、ただ惜しむらくと言うべきなのか、一点。
――少女と少年の物語としては綺麗に一巻で完成してしまっている。
無駄に引っ張るものも多い昨今、この『これで打ち切られようとも我が生涯に悔い無し!』と言わんばかりの見事な纏め具合は、感心と共にとめどない不安を抱かせる。
どーか続刊が出ますよーにと、心の神社に絵馬を奉納する某月某夜。本日以上。
月見月十九日
夕食後、ポットのお湯が減っているのに気付いたので水を足す。
やってから、これでは今すぐ食後のお茶が飲めないのに気付き、苦笑。
仕方ないなと、マグカップにインスタント珈琲の粉を落として湯を注ぐ。
ここでようやく違和感を覚えた、そんな何も無い秋の夜。
月見月十八日
エンジンオイルの交換に行って門前払い。秋は日が落ちるのが早い。
月見月十七日
本日もパソ不調。ハードウェア アクセラレータとやらを切ればそこそこ動くのだが。
多分、熱でビデオボートか電源かマザーボードの何処かが劣化したのだと思う。
結局、原因不明と大差なく、泣く泣く騙して本日も使う。
『れでぃ×ばと!』読了。
筆者氏の前シリーズを読み終えたばかりなので、何となく手にとって見た。
どこかで見たような設定。表紙絵にしたところで、この頃時折見る下着をはいていない媚びた絵。
エロゲのような路線で行かずとも、この筆者氏ならもっと面白いものが書けるだろうに、残念。
続編があるなら、こちらの感想こそ見当違いだったと笑われるようなものを、是非書き上げて頂きたい。
月見月十六日
イエス、ダンディー。
食生活が大分荒れているように思う。自分で作っておいて何だが、規則正しく、三食ともにバランスよく、端的に言うとお浸しと肉類摂取量を増やすべきだろう。
特に運動した訳でもないのに、サプリメントの麦酒酵母を飲んで快調になるのは、ちと問題だ。
パソコンは相も変わらずに不調。ライトコンバインとやらを切ってみて、何とか動いている。
本日も特になく。以上。
月見月十五日
夜、ぶらりと出る。
良い和菓子屋の場所を聞いたが、一軒は本日の営業を終え、もう一軒は秋ということで葛饅頭の製作自体を既に止めていた。目に入る兎型の練り切りや串に刺さった団子。――嗚呼、正常な季節感が憎たらしいだなんて、初めてだ。
その後、書店へ。目当ての雑誌は手に入ったが、何故か他の目当ては新刊だけがあって丁度
一巻前が抜けている。
気落ちしたまま、此処まで来たならばと気に入りの酒屋へ日本酒を買いに足を運んで――既に閉店。
自分に良い事を与え盛り上げようと、久々に某ラーメン屋へ赴くも、『あ、すいません。九時までなんですよ』と店主。
最後に訪れた書店では前巻があって新刊がなかった。
季節ものの梨が美味しくなってきたこの頃。まあ、こんなもんなんだろう。
月見月十二日
nv4_dispだのdumpだの妙なメッセージを残し、止まる。ドライバを消そうが入れ直そうが更新しようが、何一つ役には立たない。グラフィックボードを外して付けるのも、何度試したことか。
無駄な時間を山ほど連ね、ふとグラフィックボードに使う電源コードを変えてみる。
ちと、根性見せて動く。
何気なしにメモリを、刺さっていた左のスロットから右へと移動させてみる。
(CPUから遠ざけてみた)
nv4_dispで問題? 何のことですかそれ? と快適に通常稼動。
挙動のおかしいハードディスクの電源コードも、別系統に根拠なく任せる。
あと五年はいけますぜ旦那と、落ち着いた駆動音の返答。
――断言する。パソコンは論理的で合理的な機械などではまだまだない。未だシャーマンやお守りに奇跡が必要な、確率論で動く小人さんの住んでいる箱だ。
古代ドルイドの残したストーンヘンジの正確さを見習えと天に呪いを吐き出し、本日以上。
日時計万歳!
月見月十一日
パソコンのハードディスクを入手。さっそくいじるが、ところが今度は壊れたはずのハードが蘇り、
問題なかったはずの(ちと最近挙動不審ではあったものの)ビデオカードだかグラフィックボードだかが、狂う。
もう、ヤだ。
地元同級生の結婚話と、夕なぎの続編雑誌連載開始の喜ばしき情報二題を、強調して自分に叩き込んで今日は、寝る。
月見月八日
宙天に白い月。
満月、は昨日だったのか、さてこの目にはどちらでも良いさやかな月。ふらりとコンビニへ赴き、小さな日本酒の冷瓶と発泡酒の黒を入手。適当な場所に座り込んで、月を肴にぼんやりと過ごす。
――ああ、何度でも呟こう。自分は、この地の無意味に開けた、広大な美しい空を愛していると。
ハードディスクの方だが、かなり本格的に御昇天。今年は暑かったかと思い返しつつ、しかしそこまで古くもないはず酷使とてしたかと、若干の疑問。軽く考えた結果、『サムスンだから』の一言に落ち着く。
ふと、もう一つの完全に壊れたハードを手に取る。
『SUMSUNG』
――安物買いの銭失いは自業自得。これを勉強に、日本製品と独逸製品の信者になろうかと思った某月夜。
月見月七日
この夏は暑かった。パソコンの内蔵ハードディスクが一個昇天したが、それとは別に
現在使用中のハードの挙動がこのところ非常におかしい。
異音でも発してくれれば諦めも付くのだが、現在騙し騙し誤魔化している。パソコンではなく、主に自分の決断の方を。
確か今宵は明け近くに月蝕、明日は満月。『――月と共に逝くか』と風流を嘯いても、何の慰めにもなりはせず。
切実に無機物の長寿を願う日。
月見月五日
箱の蓋を開け、鉱物結晶を眺め、ヒヒヒと笑うこの頃。
月見月三日
稲、酒屋。
月見月一日
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