日々、在りしことども



梅香月二十九日

梅香月二十八日
切手切手ほか。
梅香月二十六日
本麺水。

壁本という言葉を知る。同人誌サークル大手を指す『壁』という意味ではなく、読後、思わず壁に投げつけたくなる本のことだという。値段や重量に比例して投擲速度が上がるのだとも聞く。
主にミステリ関連に多いのだとか。まあ、色々その理由は解らぬでもない。

そして、個人的に結構好きなバカミス作品が日本中で飛び交っていることを知る。
……あれはB級を越えたDかFレベルのくだらなさが、脱力しきった生暖かい微笑で『あ〜』と死人の如く呻くしかないところが良いんじゃないかと。そう、擁護したい。君ら、わかってないよ、と。

しかし思い返せば私はあれを立ち読んだ。定価で購入するとしたら――ああ、うんとりあえず古本屋目掛けて投擲したくはなるやも知れぬ。
梅香月二十五日
珍しく花粉やや多目。

そういや買ったまま使っていなかったなと埃を被っていた硯に墨を取り出し、カスカスとおろす。
同じく新品の筆も用意し、まずは手紙の下書き。

道具の安物らしさを味わい、崩れた筆文字に自然必要となる大量の用紙。幾枚か埋めた所で唐突に飽きる。 新しい紙にへのへのもへじ。天狗らしき落書きにゑびす麦酒の文字。――私は今、時空を越えて寺子屋の子供達と繋がっている!

結局、パソコン書籍を始めとした活字印字の素晴らしさを再確認して本日終わる。省資源化は時代の流れである。
梅香月二十三日

梅香月二十二日
夜、久々に書店。

近所のコンビニが今月一杯で潰れるとか。多分、新しく近場に出来た別コンビニの煽りをくらったのだろう。
置いてある酒の趣味が微妙に良くて気に入っていたというのに。残念だ。
半額の爪楊枝や手巾などを入手。見慣れた店員の彼もこれが見納めとなるのだろうか。
梅香月十九ぐらい日
デンマークの檸檬ウヲッカは美味しゅうございました。
麒麟の麦酒も結構な御味でございました。

遠方の某氏より手紙を頂く。ホテル備え付けの便箋で送ってくるのなら、内容は犯罪の告白かアリバイ工作、或いは『自分が死んだなら、それは自殺じゃない。犯人は○○……』それが定型様式美ではなかろうか。
そんな私は多分物凄く古い世代だ。
梅香月十八日
ただ酒が届く。新発売のキリン・ザ・ゴールドが三缶。
酒造会社というものは年中なにがしかのキャンペーンやモニターを複数募集しているものだ。宣伝という意味合いもあるのだろうが、今回の総数三十万缶プレゼントのように、ばら撒きとしか思えないものも多い。
これまでも、たまにウイスキーなどを頂戴してきた。
先日、ふと久々にそのことを思い出し、ネットで日本の大手どころを検索、麦酒・ウイスキーを狙って片っ端から応募してみた。
とりあえず、命中。
感想はまた後日、感謝しつつ新酒を楽しむとする。
梅香月十七日
稲荷寿司をひっくり返してみる。かます稲荷というらしい。
これまでも油揚げを裏表でひっくり返して、見た目と食感の違う稲荷は作ったことがあったが、今回は上下を逆に、閉じない口の上に刻んだ具を盛る、イメージ的には稲荷の軍艦巻きのようなもの。
沢庵、桜漬け、野沢菜といった漬物。錦糸玉子、胡瓜にサヤエンドウ。それらを細切りにする。
思ったより土台が大きく出来たので半々に盛ってみた。桜、黄、緑。色的な対比が随分鮮やかで美しく、見た目、映えるものが出来上がる。
構造上普通の稲荷よりボリュームがあり、一口、二口と齧り分けて食す。栄養の面でも、多少は幅が広がったかと思う。

まあ、芸が一つ増えた。
本日、他些少で以上。
梅香月十六日
寒い。
梅香月十五日

梅香月十四日
薄味で炊いた飛竜頭がとても美味しくて幸せ。残った煮汁でさっと付け合せにした小松菜もよし。
がんもどき→でかくてぼそぼそしたヤツ
ひろうす→一口大で美味しいもの

以上、個人限定で厳密に存在する脳内定義。
梅香月十三日
さくらんぼのだが、早くも桜の花が綻んでいる。
書店珈琲麺薬特売麦酒にパン。
梅香月十二日
朝方、雪。幸せ。
梅香月九日
夕六時を過ぎても空に青みが残る。
髪後退密度疎。手拭徒然肌触。
梅香月八日
遠くに見える、オオあの黄色は菜の花か。
眠い眠い眠い。
梅香月某日
ベルト買った。
五百円だった。
安いなと思った。
腹に足りなかった。
梅香月七日
寝過ぎなのか寝足りないのか、良く解らぬ。
梅香月六日
やや雪、舞う。すでに白梅目立つ頃合いで、梅と雪の組み合わせも古くからあるものだと、思い出す。
他、茸、文章など。体調、少し悪く、酒が呑み足りないのか麺を食い過ぎたのか他のものをもっと喰えということなのか、ちと不明。
梅香月五日
花粉は蜂などの小生物に媒介されるべきであって、風に撒くなど生物兵器となんら変わらぬ。
梅香月三日
夜、夕食もこなれてきた頃に電話を貰う。
『酔ってないな? 寝てたわけじゃないな? ――よし、じゃこれから洞窟行くぞ!』
――いや。まあ、一度潜ってしまえば昼も夜も関係ないものではあるが。

そういう訳で夜の権現谷へ。子狸だか穴熊だかを車で追いかけ、満月の下、灯火をあえて消し道を行き、一年振りのあの穴へ。二度目ということも幸いし、難なく奥へとたどり着く。
そうして、全ての灯りを落とした洞窟の冷えた奥闇の中、背負っていた荷物からウクレレを取り出し歌唄い始める同行者。狭い空間に声が響き、じんわりと染み込む様な一時を過ごす。

他二名、持ち芸も無く、演奏の終了と共に帰宅。


なお、道中の雑談にてみちあきは趣味の無い人間だということが発覚。(酒を飲んだり酒を仕込んだり読書はネタとなる趣味にアラズ。――まあ、もう料理は日常だし読書は業の領域のものではあろうが)。

さあ、全て無くなった。なら、この軽さで何処へ行こう?
梅香月一日
さて、何があったか何もなかったか。
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