日々、在りしことども



七夜月三十日
明け方前に仮眠。
七夜月二十九日
夜を徹して人探し。
翌朝、無事発見の報。
こういった地道な捜索の大変さを知る。

もし、この先の人生、山狩りに参加する機会があったなら、私は責任者の耳元で『――火をお放ちなさい、ミスタァ』と囁くことだろう。
少々疲労した日。
七夜月二十六日
昨日は洗濯日和。紫外線もまだ強い模様。
七夜月二十五日
夜明け前、三時四拾五分頃、流れ星。天頂より発して北東へ。はっきりと、大分長く流れる。

『モノケロスの〜 3』読。気になるところで切られているとはいえ、大変楽しめた。
普通なら六冊十冊と話を続けてようやく明かされる物語の謎が、こうもテンポ良く三巻目で暴露されるとは。良くも悪くもこの速さには驚かされる。
七夜月二十四日
家裏で交通事故。幸い、軽症の模様。
しかし鈍っている。何で窓を開けていて、五十メートルと離れていない場所の事故に、救急車が来るまで気付かないものか。車と自転車の接触だったようだが、最近の視力の劣化といい、切実に歳を感じる。
七夜月二十三日
本日大暑? しかしこれが夏の暑さの上限だというのなら、私はもっとこの季節が好きになれるだろう。
本当に、これが上限であってくれさえすれば。
七夜月二十一日
松本は8オンスの現場写真が届く。――曰く、十年前と値段が変わってないとか。
七夜月二十日
朝顔、ぽつぽつと花ほどける。白地に水色の混じっているものが、良い。
最近、花の白に惹かれる。ああ、次の春こそあの源平枝垂れの美しい色を。
七夜月十九日
猫。

本年の家近所の野良どもだが、どいつもこいつも覇気が無い。
生命力に不自由しているとか、バテているとか、そういう感じ。毛並みは川に落ちたまま乾いてませんという雰囲気でぼさぼさ、親らしき奴にしてもいつもの場所で、死んでいるのかどうか不安になる風情でだらしなく伸びている。子猫も同じくそこいら辺で死体風味に丸まって落ちていて、手が届くところまで近づいても、逃げない。もう一歩踏み込むと、ようやく体を起こし、三十センチほど横にずれて寝直す。――オイ、それじゃ、意味が無かろうと。突っ込む前に哀れみがわく。それほどやる気、いや生きる気がない。

……台風のせいか、食糧事情のせいか。知らぬが、強く生きろ。野性を取り戻せ野良猫よ。
七夜月十八日
昼過ぎには夏の空。このところ台所で収穫した布巾を塩素漬けにし、よく茹でて干物にする。

ちと出る。いつもの藤棚には濃緑の緑に埋もれ、まだ紫の花弁が見える。
ふらふら書籍関連を巡り帰宅。しかし注文は図書館とビーケーワン。
夜、抜いた鼻毛の先が枝毛になっていた、しかも見事な三又喇叭型。いや、尾籠な話で申し訳ない。
以上、本日。
七夜月十六日
地震の日。
新潟で揺れる、三重の方の影響で揺れる、体感はしなかったが京都発で北海道の方も揺れたとか。
これだけで収まれば良いが。
七夜月十五日
台風、来ずに去る。やたら心配性な家人の指揮でやらされたアレやコレやといった対策、九分九厘、全て無駄。
数日前、真っ先に倒す羽目になった物干し台と朝顔。赤い花は雨に潰れ、中には根っこから抜けてしまっているものまで。
悲し。やたらに悲し。
七夜月十二日追記
ニ三十年ほど前、多賀でコブラが捕獲されていたと知る。
他には印度四大毒蛇が一つ、ラッセルクサリヘビも。

――地味に、妙な歴史と凄みを孕む土地である。
七夜月十二日
大雨。旧隣町の何処ぞで河川が決壊したとか聞く。
まあ、土嚢積みは明日ということだから、人命に直結するようなものではないようだが。

昨日、物干し下の朝顔に赤い花がついたとか。残念ながら未確認。
露草の藍は先日、白粉花の紅は今朝、目にした。――もう初夏の花の季節か。
七夜月十、十一日
特に生産的なこと無し。
シーツを交換し、さて洗濯して干すのは今日か明日かと天気予報を調べれば、一週間先までびっしりと雨マーク。
七夕といえば例年梅雨時だが、はて、ここまで降っていたものだろうか?

布団脇に未読本の蟻塚。
七夜月九日
異常

:昨日の空腹時の記録により、『最近痩せてきたよな。健康的だな』と調子に乗って夜に麦酒を飲んだ。
黒も飲んだ。焼酎も干した。ちょっと日本酒にも手を出してみて、ついでに発泡檸檬水とかの水分補給も怠らなかった。
で、先程。何気なく惰性で乗ってみた体重計が九十四とか目盛りを出した。

……重度の糖尿と癌はそういうこともあると聞くが、春先の検査でもそのような結果は頂いてない。
酒の飲み過ぎの脂肪肝や高血圧なら身に覚えもあるが――
七夜月八日
喰って出せばニ三キロの増減は範囲内だとしても、久し振りに九十五という体重計の数字を目にする。体重は順調に落ちていっている模様。
ただ、納得ゆかぬのは、別に額に汗してダイエットしている訳ではないのにということだ。

食習慣の改善、というのが一番近いか。夕食の御飯量を減らすか抜くかして、野菜を大量に摂る。あとは就寝時に長袖の厚物を着、汗を少々かくようにと、思いつくまま試してみた。
とはいえ、全く米を喰わぬ訳ではない。麺も食せば揚げ物も摂る、菓子も摘めば、量こそ些少減ったものの酒も飲む。運動はコレといってせず――なのにじわじわと、体重計のグラム数が減ってゆく。

……ああ、一ヶ月間プールに通い詰めたり、断酒したり、筋トレしていた過去の努力は 何だったんだ。無駄か? 無駄だったのか?

ひょっとしたら筋肉の方が落ちていっているのかもしれぬ。明日は納豆でも食おう。
七夜月七日
七夕。本年も明るいながら、曇。
七夜月六日
車にでも轢かれたか、家前で動かない子猫がいると耳にする。
産まれ生き死んでいくは野良も人も同じ。十数年という時間で理解はしているが、憂いは晴れぬままに様子だけ確かめにいく。

確かにアスファルトの上、道路の中央に、ぼろぼろのみずぼらしい黒い子猫が落ちている。

近づくと、目が合った。後一歩で手が届こうかという距離で、しばし異種間交流。
やがて、ぼろぼろの縫いぐるみのような彼は、『栄養ちょっと足りてないんだよ〜』という感じでテケテケと走っていった。追いかけるまま顔を動かすと、脇の小さな木の下では、成猫さまが威風堂々と横たわっていらっしゃる。こちらは逃げるのも面倒よといわんばかりに私に目をくれると、そらそうともしない。――ああ、何時から此処は天国に?

いいよな、猫。
七夜月五日
蝉の声らしきものを聞く。

届くときには便りは重なるもの。久しき知人方より言の葉を頂く。
――生きてます。ここの更新が滞っていたのは、相変わらずの不精がなせるわざ。

本年蒔いた朝顔だが、蔓性のものを混ぜてみた。かなり元気な連中で、『明後日の朝には三メートルに届いてみせやすぜ、旦那!』と緑の全身で思いっきり主張している。勿論、とっくにネットの頂上など通り越している。
……どう絡めろっていうんだ……

一方、放置気味の蓮は未だ蕾の気配なし。小さな葉ばかり林立している。
水連の方が良かったかも知れぬ。

以上本日、ぐだぐだと。
七夜月一日
前日続き。

妙に眠れなかったので、早朝より散歩。まず新神社にて参拝。榊を振って祈る先客有り。
おみくじ矢など。面白いものを見かける。なお、灯籠の中にとぐろを巻く金物の蛇の置物があった。妙に引かれる良さがあり、思わず犯罪者になるべきか否か、真剣に迷う。

後、ぶらぶら適当に。田の中や川沿いを行ったり来たり。芹川に出る。早朝だというのにかなりの釣り客。適当に見物しつつ、気がつけば琵琶湖。そのまま彦根城を眺め、のんびり戻る。
筋肉痛が時間差で来るのも、こういう時には有り難い。

昼前より行動。『とりきた』にて朝昼兼食し、そのまま琵琶湖一周に出る。蓮の名所では、まだ少し早く、蕾が数個、目に付くだけであった。湖北で謎の隠れ里と資料館を見物し、山の高みの展望所で素晴らしい景色と猿の群れに遭遇、また道沿いに見えた金の仏像にひかれ、石マニアっぽい寺を唐突に訪れてみたりと、適当に移動し続ける。

高島にて水鳥観察センターに入る。ちゃちい外見に反し、実にとても楽しめた。
据えつけられた望遠鏡で、ぼけらと琵琶湖の水鳥達を眺め続ける。川釣りで、延々変化し続ける水面を見ていて何時間たとうとも飽きない自分には、意外なほど合った。
珈琲もよろしく、満ち足りた一時。惜しむらくは、此処が近所ではなく琵琶湖の対岸に存在することか。

夕食で良い店が思いつかず、そのまま草津の『風火』まで行ってしまうことになる。
ちなみに、ネットの口コミでは滋賀ラーメンランキングの二位で、三位が昨日の『にっこう』だとか。
塩とろチャーシューと御飯ものを頼む。滅多に行けない店なので注文し過ぎた。後悔は無い。
ただ、他の御仁が頼んだつけ麺が実に美味であった。嗚呼、欲望だけが際限なく膨らんでゆく。

そんなこんなで解散。人間が近くに居た二日間であった。
とりあえず乱雑なまま、在りしこと、記す。
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