日々、在りしことども



雪待月三十日
力が出ない。ひょっとして、朝食を消化するまでは寝酒のカロリーで自分は動いていたんじゃなかろうか?

『小さな骨の動物園』読了。薄くもあるが、豊富なカラー写真といい内容はかなり良い。
コバンザメは頭蓋骨も小判型(エイリアン的で実に不気味)だとか、魚の中には青緑っぽい骨を持つものもいるのだとか、陰茎骨とかいうチンポ骨が結構一般的に存在するのだとか、動物を分解して骨だの皮だのを取り出す趣味の人々が子供含みで結構存在するのだとか、色々楽しかった。
こういった博物館の展示に合わせ作られるようなテーマ本は、図説も多く、内容も纏まっており、初心者さんから専門家までに通用する種々の話題が巧みに散りばめられている。たまに読むが、あまり外れた覚えがない。こういうものこそ意義ある出版なのだと言えるのだろう。
自分で骨を煮出す気はない。が、蛇や小鳥の骨格標本には惹かれるものがある。以上本日。
雪待月二十九日
急激に冷え込んだかと思えば、ここ二三日はぬくしぬくし。
夜、出る。本ほか少し。
日本で新しいウイスキーメーカーが増え、黒いウイスキーを売っていると知る。仕込む樽の内側をこんがり焼くそうだが、やはり風味は黒麦酒のように甘香ばしいものなのだろうか。


二十六日の戯言だが、若干蛇足をつけておきたい。趣旨そのものを変える気はないが、あそこを社会だの左だの呼ぶのは間違っているのではないかと、少々疑念を覚えた。
ありゃ、南米名産いつもの独裁者でしかない。
『カリスマ』とか『信念』と『我儘』は似て非なるものだと思うのだが……自分の好き嫌いで国交を左右してどうするのやら。
いや、ここのところの韓国やアメリカでも時に似た言動があることからして、個人にそこまで強力な権力を与え、感情のまま国の舵を切ることすら許す可能性がある政治体制が、大統領制というものなのだろうか。
あまり真面目に学校の勉強をしてこなかった自分の無知をちと悔やむ。
まあチャの付く人は、この先大統領としての任期が切れた時、或いは国民からNoを突き付けられてからの振る舞いで、その真価が解ることだろう。他人事の観察実験は楽しいが、血が流れぬに越したことはないと、偽善的に思う。

――やはり政治系のネタは書き易いが、意味が薄く、独りよがりで切り上げ所も見つけ難い。
これからは初心に戻り、酒だ本だ季節が変わったと、取り留めなき無意味なことを綴りたいと思う。
遥か未来の研究者にとってここに日々記された文章が、二十一世紀環太平洋人の食風習について、とか当時の気候変動に対する一般人の日常的把握その補足、なんて訳のわからぬ研究の助けにでもなれば良いなと、思いつつ。
雪待月二十七日
ニルギリ、という茶葉がある。ダージリンやアッサムのようにインドの一地方名であり、そこで採れる 紅茶のことである。一年か一年半ほど前に出会い、甘い芳香と良き味わいに、久々の大当たりだと喜んだ。
この度、チャムラジと銘された旬のものだというそれを手に入れる。
……特に美味しく無し。
はて、たまたま口に合わぬ外れを引いたか、それとも湯か葉の温度・量を間違えでもしたか。
そういえば、同じ時、同じ所から取り寄せたインドネシアはスマトラの紅茶が――
同上。

悲しみのあまり首吊り健康法を試しそうだ。
どれだけ不審者めいても、やはり茶葉屋まで足を運び、片っ端から嗅いでは首を傾げて時間を掛けて選ぶべきだった。
これでとどめの夏摘み烏龍茶まで不味かったなら――多分、この歳で泣く。
雪待月二十六日
ベネズエラ、という国家がある。興味深い、二十一世紀の実験をやっている所だ。


自分のとりとめなく弄んでいる論の一つに、『社会主義・共産主義国家は土台となる民族性、歴史や文化に大きく結果を左右されるのではないか?』というものがある。
ロシアや中国の汚職まみれ格安人権という現実と、一方左方向なのに上手く回っている北欧を比べてみたとき、歴史的に官僚の暴虐や低人権が常識であった前両国と、王を据えたことはあっても、やれ君主様だ革命だという流れにならず、「われわれ」という気質が人々の間に古くからあったとされる後者の違いを、そこに求めてみたのだ。

――まあ、国家がそれまでの歴史や文化、民族性に影響を受けるのは当り前のことであるのだが、それがとても大きく表れているのではないかと――自由な議論や上層部批判を許さない社会で上手く周囲と折り合いをつける必要がそれを助長するのだろうか――思った訳だ。
で、ベネズエラである。
実に独裁者ちっくに振る舞い、世の中が悪いのはやつらのせいだと敵を設定し、言論や報道の自由を制限し、協力する連中に権力を与え、と分かり易い駄目社会主義国家がまた一つ勢いつけて完成しつつあるが、最近の報道で、大統領信任選挙の名簿が流出し、不信任に投じた人々やその家族が迫害され、職を失うという話を聞いた。ますます、順調に加速しているようだ。
そんなベネズエラだが、さてどんな民族性か、上の仮説の実証になるやならずやと、調べてみた。

『ベネズエラ刻々』

ベネズエラ、という国家がある。とてもとても興味深い、二十一世紀の実験をやっている所だ。

雪待月二十五日
『煌夜祭』読了。
面白い本には最初の数行で引き込むもの、『一巻で投げ出さず、○巻まで読んで下さい』と振らねば人に薦められぬもの、様々あるが、これは最後の数ページで物語が一気に色付く、 そんな作品であった。
長く暗い夜が開け、清々しい朝焼けの景色が眼前に広がる、まさしく『煌夜祭』の物語り。
続く新シリーズにも期待したい。
雪待月二十四日
パソコンが壊れたので、窓関連を入れなおす。幸いデータに問題は無し。多分。
もう焦りも怒りも感じない。復旧という名の試行錯誤を、淡々と繰り返すのみ。
『あのさ、世界には何年使っても、壊れないハードディスクがあるんだって』
それは海の向こう、遠い遠い異国の噂だよ。追いかけるんじゃない、ボーイ。

健康的な日々、続行中。昼、出る。借りていた本の返却日が明日で、予約が入っていると知る。
まだ、たまに花を結ぶ朝顔の駆除。ありがとう。本当に嬉しかったよ。
手はぱさぱさ。ふと、酒が懐かしくなる布団の上。

本日も、とりとめなく。
雪待月二十三日
寒く、晴れ澄む。 二十日には見えた遠くの山頂を飾る白が、深い紺を背に、さらに厚く鮮やかに映えている。
雪待月二十二日
このところ、老人風に規則正しい生活。
自分の最大の欲は食でも性でも読書金銭名誉入浴ですらなく、やはり睡眠のようだと再確認すること多し。――ただ、何故か四時間ほどで目が覚める。
歳か。下が近くなって自動起床。つい先日まで、酒なら何合干しても大丈夫だったのに。
……いや、むしろ二日酔いの脱水症状に適応し過ぎた肉体から、一時的にアルコールを抜いた結果がこれか?

自分の人生、酒が何割占めているか、真面目には考えたくない。
雪待月二十日
午前、ちと出る。

胃の辺りがどうにも痛い。少々荒れているのか。
雪待月十九日
夕、出る。戻る。
雪待月十八日
ニ三日、唐突に冷え込む。
『守り人』シリーズ、読了。
児童書という形であるせいか、話が早い。細部のやり取りを無駄にぐちぐち続けたり、全部の経過を事細かに書こうとしたり、解りづらい作者脳内ワタクシ様理論の演説が無く、実に読みやすい。
時には、分量の問題かと思えるぐらい、切り落としてある場面もある。

こういう物語り方もそういやあったかと、布団の中、文字に耽ったここしばらく。
雪待月十四〜十七日
図書館の貸し出し返却記録の方が、私の日常を客観的に綴っているかもしれない。

ライスバーガーに挑戦。つなぎの小麦粉が足りなかったか、幾つかの焼いた御飯が少々割れる。
結果として、あれを片手サイズに小さくまとめた店舗に敬意を覚える。一つ一つ分解して食うようなこれは、決してバーガーなんかじゃない。

手荒れの季節。減ってきて解る、肌表面脂質の大切さ。なのに使えぬ体内脂肪。

パソコン画面が良く乱れる。そのたび、湯飲みに用いている肉厚蕎麦猪口の底で縁を叩いて調整するのだが、先日、案の定中身入りでそれをやる。
今のキーボードで初の、紅茶ぶちまけ分解整備。
精神的にとても慣れている自分が不可思議。

以上雑多、徒然にまとめ。
雪待月九〜十三日
面白い本が枕元に山積みというのは、実に幸せですね。
雪待月八日
これといってなし。

先日、ピザをまた焼いた。家庭用オーブンでは底面の加熱が上手くいかず、一度目は失敗。気を配った二度目はまあまあの出来。
醤油をほんの少し垂らしたマヨネーズを生地に塗り、七味を振って、大量の葱微塵切りを緑に敷き詰め、その上を覆うように切ったベーコン、最後にチーズを被せたものが、存外にいけた。以前のジャコ・油揚げ。水菜の組み合わせといい、和風食材の方がトマトベースの濃厚具材乗せより、日本人の口に合うのかもしれないとか、適当に戯言を云々。

これ以上実も花も無く――本日以上。
雪待月七日
昨晩は珍しく麦の雫を多く飲んだ。喉が渇いていたのかもしれない。
起きると声が枯れていた。

読む。読む。八日朝近く、余りの冷え込みに布団の中で震える。
雪待月六日
飯でも食いに行かぬかとお誘い頂き、出る。たまには遠方へにと長浜まで運ばれ、目当ての店へ――見つからない。
すぐさま本屋へ入り、雑誌の立ち読みで確認すという外道客ニ匹。結果、
『やっぱり、ここでいいんだよな』
『うむ、君は間違っていなかった』
『定休日は?』
『月曜』
『今日は?』
『火曜』
という会話を、何故か定休日看板の、しかし人の気配溢れる店外で交わす。
後、そそくさと第二候補の饂飩屋へ。そろそろ美味しい季節だと、鍋焼きを突付く。

食後帰路、車は自然に古本屋へ。『三十分で出るぞ』などと真っ先に言っておきながら、当然のように長時間立ち読み、買い込む。あえて黒字で記すが、俺が悪かった訳じゃない


存外、まだ寒さも感じなかった某日。なお、一年ものを越えた髭は、三国志との感想を頂く。
雪待月五日
柿を喰らう。今秋初、滋味。
雪待月四日
今週末も地元で催し物、子供達のはしゃぐ声が聞こえる。

図書館へ。読書の秋という言葉があるが、それを実践しようとする人々への嫌がらせの如く、大量に人気作品だの新刊だのを借りてゆく。
後、久々に近場の方の図書館へ。御無沙汰して一年ぐらいになろうか。こちらもごっそりと。
当分、読み耽って幸せに浸りたい。
雪待月一日

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