日々、在りしことども



鳥来月二十八日
『ふおんコネクト! 2』読了。
こんな嫌な漫画も無い。一ページ読み終えてめくる度に、残りページは確実に減っていくのだ。人生の幸せが少しずつ削れていく様を直視させられ続けて、誰が正気で耐えられよう。
アケル嬢は別格として、「まままま」の話などが良かった。

三巻が出るまで何ヶ月待つか、考えることも出来そうに無い。とりあえず、再読と出版社サイトの読みきり漫画、それから新たに雑誌連載の立ち読みを初めて、その日まで飢えをしのごうと決める。
鳥来月二十六日
今度は有線放送横の藤棚で一昨年拾ってきた種が二つ、発芽。細い葉を広げている。
三年も待てば花をつけるか――と思いきや、『花は基本的に接木で増やします』『種からなら十年』と何処ぞで見かける。
本当に賢い投資とは、まず基本の元手を間違えないことかもと、不安になる花貧乏。

ついでに昨年の朝顔の種を植える。物干しに絡ませて永く楽しんだものだが、洗濯物を扱う家人より本年厳禁と釘を刺される。嗚呼、どうしろというのだ?
鳥来月二十三日
夜、某夫婦の新居にお邪魔する。先輩にはお会いできなかったが、年賀状で紹介頂いた御嬢様に御挨拶。赤ん坊だが、結構宵っ張りらしい。
他、久々な方々とも言の葉を交わす。久しくない野郎の、鳶に三度襲われた話が一番受けたか。
深更に帰宅。寝る。
鳥来月二十二日
苺酒を仕込む。頂き物の残りを使ったが、大分痛んでおり、量も一キロは無かったため、大瓶の底の方に少量という形になった。

夕より出る。古本屋にて長時間立ち読み。耽る。
鳥来月二十一日
恥。生き恥。十一月までかけて十キロほど体重を落とすことにする。
現在、99キロ。


庭奥で咲く芍薬の花が美しい。夕闇の頃が特に良し。こんな良いものだとは長らく気付かなかった。
鳥来月二十日深夜日付越え
水田に 月を映して 追い歩き

そういえば月齢がと、本日満月なるを思い出し、水が張られた田圃に写る景色を想い、よって深更唐突にそぞろ歩き。
やけに肌寒く雲多い中、しばし空に掛かる鈍金の真円と、水面に落ちて歪む光の影を、縦に二つ並べて堪能す。
鳥来月二十日
ピザを焼く。火力に著しく劣るオーブントースターを見限って、レンジ付きの魚焼きを利用。さんざん予熱し、焦げぬよう上にもアルミホイルを被せた結果、全く生のピザ生地を、アルミホイルを敷いたフライパンで加熱し直す羽目になる。
実に屈辱。なまじっか上の具材や、生地の発酵が慣れてきて上手くいったので、不愉快さも倍。改良したつもりがむしろ酷い失敗へと繋がったので、落差で心がささくれ立つ。

結論:一般家庭で、手製のピザは上手に焼くことが出来ない。
畜生。
鳥来月十九日
花桃に小さな実が出来ている。食用には適さぬだろうし、早く切り落としてしまうべきかもしれないが、そのような気になれない。
二つほどだが、鳥か虫の分け前として、このまま見守ってゆくとする。
鳥来月十八日
夜、出歩く。図書館で借りてきた本が面白かったので、下巻を本屋で手に取る。
一時間ほどで読了、帰宅。
いいのかなと、ちょっと悪い気がした。
鳥来月十七日
夕、誘われて『ニッコウ』へ。『Ni.CO』が正式名称のようだが、さておく。
初見の方、有り。紹介して頂くが、私の外見について周囲からフォローや叱咤がしつこく続く。そんなに酷いのか?
久々に食すつけ麺。多分、二年振り。色々変わっていたが、その変革し続ける姿勢は、出来の良し悪しを別としてとても評価出来ることだ。
  月を見つつ、のんびり帰宅。

昼間、藤を鉢に植え替える。朝顔双葉のようなどっしり感はなく、巻き蔓の先のようなものがひょろりと伸びている。とても頼りない。この先が心配で、割り箸でもとりあえず添え木として突き刺しておくべきかとも、思う。
鳥来月十六日
このところの日の出は午前四時台。今こそ本当の夏よと、旧暦の考え方に深く同意するこの頃。

本日にて、歯医者通いようやく終了。
鳥来月十五日
茄子と油は相性が良い。
しかし一つ天麩羅を揚げ鍋から取り出すたびに、目に見え下がっていく油の水位は、ちょっとした恐怖だ。

ここ数日の雨で、蒔いていた藤の種が発芽した。剪定したはずの源平枝垂れも盛んに茂り、ここしばらく放置状態の蓮が幾つも芽を伸ばす。
鳥来月十四日
昨日辺りから宛先不在だとメールが返ってくる。出した覚えの無いメールが。
何処ぞのスパム業者の偽アドレスとして用いられている模様。不快。
鳥来月十一日
きき酒会。本年はゆっくりと楽しむ。
遅刻すると聞いていた某氏が乗り込んだ電車すぐ前に座っており(いや、私が予定より遅くなっただけだが)、また会場では教育実習中だという某嬢に久々にお会いする。――何か頭ひとつ分くらいちっこくなってた。

本年も日本酒と焼酎のコーナーが会場を半々。
日本酒では、『富鶴』(「天秤櫓」は純米吟醸のラベル違いだとか)、『笑四季』(十年もの――正確には十四年物があったが、ひねておらず呑みやすかった。燗酒は本醸造の方が良いのだとか)、『松の司』は大吟醸の「陶酔」が美味く、『美冨久』はどれもが良し、『菊水』のブースでは特別に作ったという缶菊水の大吟醸生を頂いた。
「今度京都の百貨店の新潟物産展で出品するために作りました、五十個ほど」
一缶二千円だとか。同行の御二人が特に気に入り、何度か御代わりをしていたが、本当に良かったのだろうか?
他、滋賀で甦らせた『渡船』なる酵母を用いたと売りにしている酒が、複数蔵で見えた。二、三年前に初めて飲んだが、増えているようだ。そんなこんなで何時もの定番蔵を回り、新規開拓はほとんどせず。

焼酎も、摘んだ程度だが、幾つか美味しいところに会えた。
古酒が素晴らしかった『くら』、また何時ものイロモノ焼酎メーカー『鍛高譚』では生姜焼酎と山葵焼酎に出会う。一嗅ぎでくる前者の豊潤な香りや、口に含んでこそ真価が解る後者の山葵具合――
お察し下さい。
実に強烈で御座いました。

つまみは『多賀』の地猪・地鹿のジャーキー(多分市販品じゃなくて猟師から買ってきたんだと思う)、煎餅にマヨネーズを付けて出す所、琵琶湖小鮎の甘露煮、『れんと』の黒砂糖、『霧島』の宮崎地鶏炭火焼、柿の種、地物干ぴょうからしあえ(戻した干瓢を出汁で煮、芥子酢味噌であえて、最後にパセリを散らす。自家製。結構よろしかった)等。少ないが、美味良品であった。


なお、本年大当たりは二つ。
焼酎方面で会った『正春』の「柚子」。焼酎で作った柚子リキュールだが、度数が低く、梅酒のようにくどい甘さが無い。すっきりと飲みやすい、とても爽やかな一品。
そしてもう一つ、今回一番の出会いは日本酒コーナー『美濃菊』で頂いた三年物の味醂。
「柳蔭」というものがある。江戸時代の飲み物で、夏に冷やして味わったらしい。味醂を焼酎で割って飲むのだが、今、そんなことを試そうという人間はいない。色んなものが入っている台所調味料の味醂を、口に含んで飲み干そうと、誰が考えを抱こうか。
しかしこちらの、昔ながらの本物の味醂はストレートで頂いたが、実に素晴らしかった。濃い色、柔らかい風味、そして甘み。これで親子丼を作ろうものなら、一体どんな味わいになるだろう。「――これを使った魚の照り焼きが――」とは蔵の御人の言
なお、流石作っている人間だけあって「柳蔭」にも詳しく、伊勢芋を使った山芋焼酎を用い、その場で割ってもらい、正真正銘本物の「柳蔭」を味わう。

――――甘味が今に比べ乏しかった江戸時代の夏の涼として、故杉浦日向子氏の著作で聞き知ったものを実際に口にする。感慨深いものがあった。

梅酒も頂く。酒飲みの自分にはやや甘かったが、なかなか香り良い品であった。
なお、散々褒め、御代わりを貰い、他のお客人にも勧めてブースを去る我々の背に、ぽつりと一言。
「…………うち、日本酒の所なんだけどね」
そーいや味醂ばっかり飲んで、日本酒の方は試飲をお願いすることもしなかった。少々の反省。


例年に比べ、軽い酔いのまま閉会。どうやってか、今回も小さな試飲酒を頂戴してくる某氏。
そのままホテルの広間で、しばらくの間、雑談。知人達の結婚式や赤ん坊の写真、または旅先の景色を拝見する。携帯の写真機能も、描画能力も、随分上がったものだ。
「携帯買え。たまにメール送っても返事が無いぞ、コラ」「あれ、こいつパソコンの方なら……」「あー、最近迷惑メールが多くて一括して捨てていまして」
御免なさい、御免なさい、一応チェックはしてるんですが。

夕暮れの中、琵琶湖沿いを歩き、浜大津の『天下ご麺』にて軽く麺を啜る。 今回は塩だか鶏だか最後に飯を放り込むものを頼んだが、さっぱりしていて、それなりに美味しかった。評価を、前回のマイナスから若干改める。
滝のようなジャスミンを見かけなどしつつ、帰る。
皆、家庭を持ったり持たんとしたり、色々凄いなぁと最後に感嘆し、終わる。
鳥来月九日
鋏で病んでいる葉を切り落とす。ついでに、虫の巣食いだしていた部分も排除。
鳥来月八日
花桃に元気が無い。葉も、でこぼこしたものが増えている。アブラムシの類かと思ったが、縮葉病とかいうものらしく、冬季に石灰硫黄合剤でばしゃばしゃと樹を洗っておくべきだったよう。
そもそも虫が付き易いと聞いていたし、ここ数日、毛虫を発見してはサンダル底で蹴り飛ばしている。明日にでも、農薬を買って来ようかと思う。

そういえば、紅枝垂八重桜だが、ものの見事に枯れている気がする。隣の、母がどんぐりから発芽させて育て上げたとか言っていた樹も、本年とうとう立ち往生を果たしているようだ。植物は枯れる。そういうものだが、理由も知れず、ある日、突然、もう助からぬ姿を見るのは、心の収まりが悪い。

そう言えば、朝顔の用意を急ぐべき時期か。さて、本年は何処にどうして植えてやろう。
鳥来月七日
お茶請けは出汁用昆布。薄くてむしろ食み足り無い。
鳥来月四日
暑い。蒸す。この夏を乗り切る自信など、無い。
鳥来月三日
源平枝垂れ桃がへたっている。水はやっているつもりだが、足りんのだろうか?
根元にわさわさと茂るたぐいのものを植え、土が乾かぬようにするべきか?
この頃は、庭造りという言葉が妙にときめいて聞こえる。
鳥来月二日
歯医者。
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