日々、在りしことども



祝月三十一日
エビ。チェリーレッドシュリンプ。他、到着。

外部濾過器:吸い込み防止のスポンジで吸入管を覆う。邪魔な延長管は外す。排出管を水槽上部に。
ヒーター:こちらは平行に水槽下部へ設置。そんな気はなかったんだが、小型水槽用のが安かったんだ。外で空焚きすると一度で駄目になるらしいが、常時二十三度という設定は、低いどころかエビの最適温度で――

結果:それぞれ小さいのだが、部屋の水槽もとても小さい。よって、奥が良く解らない器具で埋まっているという見苦しい水槽に。 また、水流が少々きつい。エビには好評のようなのだが、これで発生する黒髭苔が怖い。そして、翻弄されるミジンコとメダカ稚魚が痛々し過ぎて、嗚呼……

エビの水合わせだけのはずだったのに、水槽の外付け保温壁(発泡スチロールのカッター切りともいう)や外部濾過器台(空ダンボール、サランラップの芯仕込みと表現されることも)を作ったりで時間を食った、風の強い日。
祝月三十日
昼、出る。給油、水温計入手、植木鉢購入。
――紅八重枝垂桜の苗があった。やっちまいそうな気がする。

苔退治に、まろやかな生協の純米酢を使ったのがまずかった。ここは百均の市販合成酢を一つ、と考えて、為した。余り効果が出たように感じない。こちらの白いのは黒髭苔ではないのだろうか?

ミナミヌマエビだが、琵琶湖で採れるのをいいことに、屋内にも屋外にもバケツから水槽からプラカップ焼酎の空き容器にまで適当に放り込んである。
が、抱卵させたことは無く、エビびっしりの水槽とか繁殖の舞いとかエビ団子とか見てみたいなー裏の小屋にプラスチックの飼育容器が空いてたなーそういや水槽購入時に簡単な濾過器がついてきたなー。
で、そうなった。

カラーボックスの上に、現在そんなものがある。本来なら暴挙でしかないが、十リットルも入らないプラケースなら大丈夫かと判断した。これで地震でも起きようものなら――下の段には気に入りの本がぎっしり――お察し下さい。
目立つところからかき集めてきた大中小が十数匹ほど。これ以外にも室内にはエビの入った容器が三つほどあり、これを書いた時点で自分でも何かおかしいような気がしてきた。水槽は底砂も無く、草も少なく。また雌がほとんどいないよう見受けられる。
また、昨日の鉢底ネットの輪が水面まで浮いて、それに掴まるエビの姿が面白く、二つほど(モス無しも)作り、投下。縦のドラム缶型、横倒しになったハムスターの踏み車型、どちらもエビの鑑賞に優しい。
以上雑多、本日のエビ模様。


――昨年、京の平安神宮と、海津大崎の売店前で見た紅八重枝垂桜の影が忘れられない。
ネットの写真を見返して思うのは、こんな白い色じゃなかった。
両方とも、まだ蕾が緩んだ時分だったのだろうか。
音も無く空中に止まる紅の雨を、今でも思い返すことが出来る。
あとで買える物などいくらでもあるが、花の季節だけは待つしかない。
その一年で、若木は大きく育ていく。
やっちまいそうだ。やっちまうんだろうな。
祝月二十九日
つらつらと。

昼のぬくさは最早、春。
近所で建設中の家電量販店の名をようやく知る。――どうでもいいが。

水槽。敷石を足す。水、白濁。
先日角に立てかけた流木だが、CO2の泡が溜まるのか、飛び乗って遊んでいるエビ達が蹴倒すのか、時々倒れている。吸盤をネジ釘で付けるべきか。
園芸用の鉢底ネットを封筒状にして石を詰め、ウィローモスを巻きつけてモスネットの基(素?)を製作。他にも丸めて筒状にしたものを、流木の片端の台にする。無論、こちらもモス付き。

先だって刈り込んだせいで、未だウィローモスの美しい光景が見れない。黒ヒゲ苔も完全駆除とはいかず、実に不愉快。しかも水槽が薄く白濁してきた。
ああ、リセットすれば微生物も全滅し、水槽の立ち上げからやり直すことになるかと、納得。
で。半日ほど前に格安になっていた小型外部濾過器を通販で買ったばかり。それはいい。
ついでに、定番的な評価を確立している『いぶき』のエアストーンも買い物籠に。地方じゃ売ってないし、安くて場所もとらぬならと。これもいい。
そのままフラフラと誘われて気が付いたときにはチェリーレッドシュリンプをぽちりと。繁殖させるならまず頭数だよな格安になるしと、二桁。

そして三ヶ月かけての水槽立ち上げどころか、初期化されたばかりの白濁水槽が、ここに。

……どうなるやら。
祝月二十六日
蕎麦を食す。頂き物の出雲蕎麦。いつも食べているものよりは太くしっかりしている。
蒲鉾、葱、とろろを掛ける。芋の種類か、出汁で伸ばす必要が無く、卸しただけで食べられた。
ただその分、山芋特有の粘りやコクは弱いように思う。一長一短。

朝より晴れ、しかし洗濯物乾かず。早朝、メダカ池の上は氷が張っていた。透明に覆うその下で、小さな魚影が元気に泳ぎ回っていた。連中、存外に強い。
祝月二十五日
というか二十四日深夜。酒などとうに抜けており、あれだけ肉を摂ったお陰か筋肉痛の気配も薄く、何をとちくるったか再び水槽をいじりだす。
どうも黒ヒゲ苔は食用酢でも駆除できそうなので、いそいそと実施、今回は水をぬぐって、新聞紙を巻いてそれに薄めた酢を染み込ますなど、工夫してみる。酢は、そんなに水で割らずとも良かったかも知れない。
水槽に沈めている流木のうち、棒状のものを角に立てかけて見たところ、一気に立体感が出た。 これが水草水槽の奥深さであり、面白さなのか。

背中に黒い粒々の透けて見えるエビがいるが、これは抱卵の前兆だろうか、とか。CO2添加ボトルの発酵が寒さで上手くいってないが断熱材を巻くべきか、とか。平和、平和。
祝月二十四日
新年会。駅まで送って貰おうかと家人の携帯に連絡を入れるも『お客様の御都合か電波』といわれ――後に聞くと、何時も通り家に置いていったが、とのこと――久々に自転車全力疾走。足より寒気が喉を痛めた。

草津にて下車。駅構内に充ちるワッフルの甘い香りに誘われる。
久々に皆さんとお会いしたが、確かに少々変わった様子こそあれ、若々しいというかアグレッシブな感じで、むしろ男性陣が大人しかったよう思う。
店は、『モクモクファーム』とやらの直営店。事前の話では『地ビールとソーセージが』という話だったが、日本酒のあてにと謂わんばかりに半ばを占める和風の肴。バイキングということもあり、皆遠慮なく健啖振りを発揮す。
あまり酒もやらず、話に花を咲かせる方々。最近の体調か、酒が少量で妙に利いたので、ひたすら食す自分。足りてない栄養素でもあったのか、最後まで箸は止まらなかった。

寒い中、再び自転車で帰宅。靴先で確かめたメダカ池には氷が張っていた。
祝月二十二日
大寒を過ぎたというのに、温く雨の降る日々。電車が止まるぐらいの雪が良い。

夜、切れる。水槽の苔が気になって気になって、結局伸びていたウィローモスを坊主頭にまで刈り込んでやる。――これでかえってもじゃもじゃになる、ハズ。常識だと。
また、黒ヒゲ苔の巣になっていたウィンドロブを流木より剥がし(……定着してなかったが)、根っこから新芽まで汚染部分を切り刻む。ついでに生育の悪い南米ウィローモスを貼り直すが、焼酎小容器やエビ瓶に放り込んで放置していた連中の、ひょろっとした伸び具合に、なんというか呆れる。中には陸上苔の芽(胞子嚢だったか受精用だったか)のようなものをひょろりと伸ばしているものもあり。

木酸酢は先日の『強烈だが手に残る』ということもあり、今回は食用純米酢を少々使ってみた。が、現在手に何やら薄っすらと匂いが残り、少々腫れぼったい。
先日の木酸酢が流木付近に残っていた可能性も高い。
普段からの清掃・水換えを増やすべきなのだろうが、どうしよう? 濾過器は、CO2添加を無駄にするらしいし、さて。
祝月十七日
昼、水槽の掃除。地味な汚れぐらいに考えていた黒ヒゲ苔が、エビも食わぬ枯れもせぬ 大敵だと今頃に知ったため、四倍に薄めた木酸酢を筆で塗って抹殺。それなりに効果はあったようで、これからのこまめな清掃と、噴射用の霧吹きを買ってくるか否か、つらつら考えながらついでにCO2発酵式添加ボトルも中身を交換。
なお、木酸酢(正確には竹酸酢を使用)は人体に有害であり、次からは手袋を着用しようと強く 心に決める。指が臭いし。洗っても落ちないし。調理で出来るだけ左手を使わぬよう、えらく難儀した。


夜、誘われて長浜までラーメンを食いに出る。何度か、足を運ぶだけ運んで入れなかった『梅花亭』三度目の正直。店の雰囲気良く、店員はやたら腰が低く、出てくる茶はジャスミン茶。(ただしテーブル上に置かれた御代わり用の小さなやかんは、注意しないとこぼれやすかった)。
塩大盛りを頼んだところ、とても大きな器(気に入った)で出てきた。美味。トッピングに何かもう少し野菜が欲しかった気もするが、満足。もう一人は軟骨煮込みの醤油を頼んだが、一口分けてもらったそれはほんのり柚子の風味が利いて私好みで、塩よりさらに美味しく感じた。

惜しむらくは、とても家から遠いことか。

小雨の中、寄ったブックオフで三百円の割引券を引き当てなどしつつ、帰宅。なお、洞窟前で落石にあったりなんぞしていた彼の車だが、高速のトンネル内で玉突き事故に巻き込まれ廃車になったとか。最近の車は凄いようで、五台誰も死ななかった、軽症でニュースにすらならなかった、と言う。
まあ、それは幸運ではあるのだろう。

本日オチ。
夜雨の中、黙って右折する運転席のワタクシ。
何故、真っ直ぐ帰らないの……と尋ねる助手席の中年男性(期間限定)独身。
『え……だって君の代車があっちの駐車場に』
『…………』
『…………』
『………あ』
『しまったーっ!』
『ああ、そうそう。そうだ』
『何食わぬ顔で家の前まで送っときゃ、大爆笑できたのにぃー!!』
鈍った。逃した。何もかも。折角の極上の酒の肴が、無駄に。
何年経とうとこの借りは必ず返す。絶対にと、本日決意で〆る。
祝月十六日
一味唐辛子をカレー皿の上で振り回す。粗引きチリペッパーだから問題ないはず。
祝月十五日
本年も獅子舞いを迎え、小豆粥を食す。
祝月十四日
体調が良いけどおかしい。何時の間にかUFOにさらわれて、健康な肉体に入れ替えられたかのよう。
酒を欲しない。荒れてはいないが胃の辺りの感覚が常と違う。腹が減っても、食欲が無い。
そんな感じでここ数日、変だ。ネットで調べれば『嗜好が変わるのは妊娠したからです』と。

――――男はどうすればいいんだろう。
祝月十三日

祝月四〜十二日
何故か日が過ぎていた。
寒さは増し、雪は降り、されど日は伸びて、どうにも季節が噛み合わぬ。
祝月三日
初詣に出る。昨年の轍を踏まぬよう電車を使うが、午前早くだったためか、行きしなにはまだ渋滞の影もなかった。
懐かしい硬券切符や『スクリーン』なる新しい工場出勤者用駅を見つつ、多賀大社へ。翁始式などをまず見る。
――正直、声も通らぬ、芸の意味も解らぬ状況ではあまり面白くなかった。面と、福の神役が素顔で先に四方へ跳ねつつ声を発していた(或いはアレは寒い中で体をほぐす伝統的な準備運動の作法か? いやまさかだが)折の表情の良さだけは、覚えている。
……というか巫女神楽が見たくてわざわざ人の多い中、足を運んだのだが……しくじった……
御神籤は、『吉』。総論として「屋外は嵐だが、家の中でじっと籠もっていると良いことアルヨ」と書いてあった。
『嵐』という言葉に、昨今の世界情勢やこの不況を思い浮かべる。『家で籠もると吉』という言葉に今の己が身を顧みる。――御籤は当らぬから引くのだと、即座に思った。

境内では他、焚き火付近の光景を面白くみた。寒がって火に手をかざしているのは、自分とあとは女子供ばかり。回りを囲む野郎に親父は皆、口に白い煙のたなびく紙棒を咥えていた。世代、性別による文化的な違いのわかる、資料的価値を感じる一瞬。
帰路には駅までの途中にあった屋台で、で人生初ケバブ。トルコ料理かと思っていたら、『ペルシャ料理』と看板にはあったので、イランの御仁か。重ねて回し焼く鶏肉に満遍なくカレー粉がまぶしてあったが、あれは御国料理的なものか、はたまた彼の工夫なのか、今頃になって少し気になる。
道脇民家の、二階の古びた手すりの風情などに目を誘われ、また正月だからかやけに多く出ていた糸切り餅屋と素人たこ焼き屋 を見つつ、戻る。


意外と時間をくったため、以降ぶらりと店を巡り帰る頃には日が暮れかけていた。道はどこも混んでいた。
最後に、新年早々(以下、何を書こうとしていたのか忘れた。多分間抜けをかましたのだと思うが……)
祝月二日
年賀状を書く。正確にはここ数年、打つか。
絵も描いた。描いてから、元ネタがマイナーで非一般的だと知る。
昔話か、落語だったと思うのだが。ひょっとして、誰にも通じぬか?

夜は冷え込むが、昼は温いのか、屋根に積もった雪が湿った音を立てて重く落ちる。
――飛び降りの音だ。

そんな新年二日目。
祝月一日
雪。

夜、久々に酒器を取り出す。信楽焼きの片口碗に、似た色合いのぐい飲み。ひょっとしたら、こちらも信楽のものかも知れぬ。
日本酒を満たし、口先を湿らす。
たまにはこういう酒らしい酒も良し。
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