日々、在りしことども



鳥来月三十一日 読後感想
『Q.E.D.』32巻。たまたま読み損ねたマジックの話が目当てで、単行本を手に取った。読後、悔いが一つだけ。どんな話だったか知りたくてネットを覗いて回ったため、オチの一部を漠然と知っていた。明らかに、人生損した。
推理ものなら、暴露や断罪、どうしようもない真実の開示。自然、そういったものが多くなる。しかし、だからこそ、このマジック話のような、読後『やられた』と爽やかに笑える物語は胸に響く。しかも、最後の最後でこれほどにも綺麗にまとめて見せたのだから、なおさらである。
本当に、良い話だった。
あと、やはり水原嬢は魅力的な女性であり過ぎる。コマだけ抜き見てもそう感じるものはないのだが、話の流れに入り込んでいる最中、そこで動き回っている彼女は、何気ない行為や、ここ一番での振る舞いで、問答無用に輝く。

あんな力のある笑顔、めったに見ないと、改めて惚れ直した日。
鳥来月三十一日
暑い中、色々出て回る。図書館など、存分に襲撃。精神的に昨日のがまだ残っていたらしく、そこそこかなり動き回る。
一方、肉体的には限界が近付いていたようで、両肩の筋肉痛に、プロテインを就寝前に一匙飲んで癒す。

鳥来月三十日
東氏の結婚式を祝いに、京へ。清水寺の裏の、山の頂上近くへ行く。
遅刻せぬよう、早目の電車に乗ったところ、受付係のN氏に遭遇。これ幸いとタクシーに便乗させて貰い、一足先に着いて、仕事も無き気楽な身の上、ぶらぶらと時間を潰す。――後に聞くところによると私の姿が送迎バスに無かったため、旧友らには『やりやがった』と判断されたらしい。遅刻魔は私ではない。と、思う。

初めての仏式。式の前に小雨がぱらつきそうということで、野外会場に蒲鉾型のエアテントで屋根が張られ、そのトンネル下で進行。正面には阿弥陀如来の絵姿、数珠や供花や焼香。とはいえ、別に奇妙だったり派手だったりするわけでもなく、むしろキリスト教的な式に比べ、穏やかだったように思う。新郎は、袈裟下の墨染めが、全て真っ白なものとなっており、なかなかに格好良かった。維持は大変だろうが、むしろ普段からあれでいいのではないかと思う。

式後、披露宴。新郎新婦の人柄か、無駄な挨拶や酔っ払い親類・カラオケの類もなく、終始落ち着いた雰囲気で進む。また、これは会場のスタイリストが良かったのか、御二人とも、なかなか様になった素敵な服装を披露する。
ここで、特に印象に残っているのが、新郎新婦友人によって編集されたビデオスライド。音楽と相まって、結構感動的であった。

まだ日の高い中、京都駅前へと戻って、パソ屋本屋で時間を潰し、二次会。
開始早々、麦酒では我慢がならず、奥へ行って用意されていたグラスを呷り、それでも足りずにピッチャーを用意させ、テーブルへ持って戻る。――烏龍茶だが。
夏は、一年で一番酒が飲み辛い季節である。暑いと、脱水症状を招くアルコールなど口を通らない。それよりまず、差し当って取り急ぎ切実に、生命活動に直結した水である。
閑話休題。
ぶっちゃけ、暑さと強烈な日差し、水分不足で少々限界に来ていた。酒より水風呂と布団が切実に欲しくてたまらなくなる。
和やかに新郎新婦を囲んでクイズゲームなどが続けられる会場。ここでもやはり泥酔者など出たりはしなかったが、一角で茶を空け続ける者が、一人。

最後に胴上げにだけ紛れ込み、ヤツのシャツの襟首を伸ばすのに手を貸す。いや、むしろ実行犯の一人に。
三次会代わりに高校関係の人間で喫茶店に居座って雑談。珍しく数年振りという御仁も幾人かいたが、その頃には半分ぐらい寝ていた。多少空気を悪くしても、二時間ほど前に一人辞去して帰るべきだったとも思う。


まあ、めでたい日ではあったが、ここでまで殊更祝う必要は無いかと思う。彼も立派になった。危うげもないし、ならばこの先、特に問題もないだろう。――ずぼらなあれやこれやを発揮して、奥さんに繰り返し謝る破目になる以外には。

以上、鳥来月、初夏の末日。記す。
鳥来月二十九日
結婚式の祝い袋を求め、出る。紅白の水引きが上向いているのだったなと文具屋へ足を運ぶが、 そのデザインのものは変に安っぽいか、反面、無駄に大きくごてごてしたものしか無い。 時代が変わったか、単純にメーカーの都合かと悩むが、適当にめでたそうなものを選んで良しとする。
続いて、散髪。格安理容店には碌な思い出が無いので、いっそ十分千円カットとやらの店に行く。
五分ぐらいで処理される。
直前の洒落た若い短髪ニーちゃんにはかなり気合と時間を入れていたことを思うと、釣りよこせと言いたくなる。
確かに尻尾は短くなり頭は軽くなったが、満足など別にせず。

他、初めて銀行で新札の両替をし、行内のすき具合と手数料無しの迅速さに、これから好きな二千円札を両替に通おうかと楽しみに思ったとか。重宝しているハンドクリーナーの純正パックが高くて悩んでいたら、大型量販店で色々対応する格安パックがあって迷わず手に取ったとか。車の中がやけに暑いとか。久々に通った道沿いの景色、多目の田圃が金の麦畑となっており、ああ秋かとボケの進んだ頭で考えて。雪柳を増やすかとぶつ切って鉢に挿してみたり。

雑然とそんなことども。あと、ちょっと調子が悪いのだが、やはり他の花粉症も持っているのだろうか?
鳥来月二十八日
先日、つい二十日ほど前に入手した抱卵レッドチェリーが本日孵化。卵に黒い点目が浮かんですぐである。
嬉しい。が、その倍サイズとなって未だ抱卵の気配も無く数ヶ月間水槽に居座る連中を横目にすると、なんというかそろそろ諦めの気分が浮かぶ。

『鳥辺野にて』
加門七海氏の著。時にみせる、匠としての作品集。
「鉢の木」が特に印象深かった。

『密室の如き籠もるもの』
短編三つに中篇一つ。読みやすく、楽しくもあったが、きちんと纏まった作りで推理・ミステリ色が強く、この筆者氏のまた別の味であるおぞましさが些か足りなかったように思う。
それは、主観による怪奇体験の描写だけでなく、全てが解体され、謎も事実も偶然も、人のバケモノ的な部分まで晒された上で残る、理屈で消しきれない異物。綺麗に整理し終えた部屋の片隅に蟠る、黒い靄のような見えるはずの無い何か。そう、これまでに突きつけられてきたものだ。
もっとも、最後の表題ともなっている『密室の〜』を読み終えて後、問答部分を読み返して、それなりに、その気分には浸れた。舌足らずな幼児語尾ぐらいにとらえていた『くう』の辺りを字義通りに解釈し直し、考えを弄り回しなどして、余計に。
鳥来月二十五日
睡蓮の白い花が開く。
芍薬は赤を一株、鉢に仕立てたのもまた良しと知る。
鳥来月二十二日
ふと擦れ違った女性の纏っていた香りに心奪われる。カメ虫臭強化版。
そういえば先程、別の場所でも嗅いだ気がする。
何時の間にやら世間ではカメ虫系の香水が流行となっていたのか。
そこまで時代が変わったならば、最早関わることもなしと、あえて調べず。

雨で芍薬の花が崩れてゆく。近頃になってようやく解る、花の儚さ。
鳥来月二十一日
大概のものは順調に生育している。刈り込んだら枯れやがった流木モスも、他はそこそこ順調。
唯一不変はレッドチェリーシュリンプ。こいつらもう、諦めた方がいいのだろうか。
鳥来月十四日
六畳の部屋で三畳に暮らすような人間だが、残り三畳奥の埃絨毯が目に付いたので、物をどけ、久々の清掃。綺麗にはなったが、細かな塵が舞い上がったのだろう、少々口内に異物感を覚える。

色々溜め込み過ぎだろうか。
鳥来月十三日
暑くなったり寒くなったり。
鷺草が大分芽吹いてきたので、昨年一鞘だけ出来た種を蒔く。
蘭菌が必要だとは覚えていたので今まで待ったが、他の蘭類栽培を参考にした ダンボール混ぜ込みあたりはすっかり忘れていた。埃か黄砂のような乾き切ったものを適当に散らす。
運が良ければ何かの間違いで発芽するだろう。適当に待つ。
鳥来月十二日
屋外、日差しはともかく吹き付ける風の暑さが異常だ。まだ五月。
既にこの夏を無事に越える自信は無い。

芍薬の蕾が綻び始める。

屋外容器のグリーンウォーターが見る見る澄んでいっている。先日の雨と低温で 植物プランクトンが死んだかとも思ったが、どうもわらわら増えつつあるミジンコとメダカ稚魚が 貪り尽くしているようだ。
飢え死にせぬよう、新たに腐り水を作るか、肥料でも放り込むべきか。
鳥来月九日
レッドチェリーシュリンプ入手。

いつものビバシティ横アヤハへと赴き、『レ(以下略)』の雄だけ取り寄せは出来ないか 問うてみたところ、それはやっていないが、今届いたばかりのが居るから、そこから選んでくれれば好きなのを売りますよ、と言われる。で、期待せずに水合わせ中の袋を覗いてみたところ、明らかに雄っぽいのから、抱卵個体までもが其処に。

……た、卵持っているのも売ってもらえるのかな?
ええ、構いませんよ。

で、適当に二時間ほど潰した後、雄と卵持ちを一匹ずつ、嬉々として持ち帰る。

水合わせ直後のエビを買うなど、愚かで危険だとは解っているが、人間我慢できないこともある。
現在、雌は別容器に、雄はレ(以下略)水槽に放してから数時間。幸いにして、どちらもまだ落ちていない。
しかしこうして見て解るのだが、雄っぽいのと雄とは結構はっきり違うようだ。雄の方が明らかに髭や手足が長く、丸みや生物らしさのある雌に比べエイリアンっぽい。また、とても小さく見えるがこれでも一センチ以上はあり、すると他の、比較的に巨大で、二センチを越していて未だ抱卵しない先住の十匹がいかにおかしいのか……本当に全部雌だったのか?
とりあえず、明日からが楽しみである。

屋外、直射日光を浴びた車内だと暑い。出ればまだそれほどでもないのだが……
鳥来月四日
室内でミナミの抱卵個体は六ほど。一方、レッドチェリーシュリンプは雄が居ないのか変化無し。
夜、苛立ちが募り、水槽をいじる。
水流が強すぎるのかと外部フィルターを切り、CO2の添加も中止。底砂も全部浚って、伸びすぎ剥がれかけてきたモスはカット。それで鉢底ネットを使ってモスマット等を複数製作。ちなみに釣り糸ぐるぐるは面倒くさかったので、ラップをかぶせ、その上から軽く釣り糸を巻いて押さえた。

……いい加減、増えてくれてもよかろうに。
鳥来月三日
花泥棒は泥棒。
鳥来月二日
もうかなり暑い。八日市の方の三叉路で、盛りの藤を見る。昔、大凧ガソリンスタンドのあった、細い方の道向かい。一本だけが、狭くも力強く立っていた。

本年採取の卵より、ようやくメダカが孵化。一冬越して黒は揃っているので、白と緋、そして待望の青を増やしてみたいのだが――

ペット関係を少々回る。色揚げようの金魚の餌、沈降性―― そういえば、今年は源平枝垂れに幾つも実が育ちつつある。確か昨年は二つ、そのうち一つの種とおぼしき梅干の種巨大版のようなものが、鉢の土の上にそのまま落ちている。
花桃ゆえ、食べても美味しくない、熟れるまで育ちそうに無い、種から芽吹きそうに無い。余り良いところ無し。
縁起に一つ二つ残して、栄養をとられぬよう、今のうちにもいでおくべきか?
鳥来月一日
そういえばちょっと前、『初夏の日差しでウィローモスわさわさーっ!』と屋外に三つほど出したのだが、見事に枯れてくれた。
あの水草は日焼けする――苔の仲間だというのをすっかり忘れていた。
金銭的には全く痛くないが、かけてきた時間と期待の方は一発でとんだ。

熱帯睡蓮も、昨年の親株が仮死状態。上手くいっているものもあり、駄目なものもあり。
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